第一話 空から降ってくるのは女の子だけでいい
「行ってきまーす。」
「今日は何も起こりませんように・・・」
ここに不安げな顔をしながらも学校に通おうとする大きなアホ毛を持つ少年がいた。
学校に通うことの何が不安なのか。
いじめられているのか、勉強についていけてないのか。
そのどれでもない、少年が不安を抱えている理由はただ一つ
「ん?いや、ちょっ!!」
言っているそばからダンプカーに轢かれた。
そう、彼はひどい不幸体質なのだ。
彼の名前は灯 創真
大きなアホ毛と不幸体質を除けばどこにでもいる普通の高校生である。
「ああ、死ぬかと思った・・・。」
最近は「死ぬかと思った」が口癖になってきている。
毎日死にかけて重傷を負っているのだ、そうなるのも仕方がない。
そうこうしているうちに学校に着いた。
校門には生徒指導の田中先生が立っている。
彼のアホ毛は田中の基準では校則違反だ。
しかし・・・
「おはようございまーす。」
「おう灯 おはよう。」
普通にスルーされた。
それもそのはず、彼は入学初日にアホ毛についての説明を行っており、学校の皆を納得させることに成功している。
「よし、今日はダンプに轢かれただkぎゃあああああ!!!」
油断した隙に今度は後ろから暴走トレーラーが追突してきた。
彼は跳ね飛ばされ、二階の窓を突き破り学校に入った。
ガラスが砕け散る音とともになんともダイナミックな登校をした。
「きゃあああああっ!!!」
「うおおって、なんだ灯 か・・・」
クラスの皆はこの状況に慣れている。
慣れとは恐ろしいものだ。
「あ、みんなおはよ~。」
「灯 、ホームルームまだだから今のうちに保健室行って来いよ。」
「うん、わかった。」
彼の名前は瀬戸 心平、190cm超えの身長にワックスでセットされた逆立った髪型のいかつい見た目だが実際は面倒見のいい心優しい人物だ。
彼に勧められ灯 は保健室へと向かった。
ー数時間後ー
学校も終わり、帰宅途中の彼は一人のギャルに声をかけられた。
「灯 ー!カラオケいこー!」
彼女の名前は神崎 玲那一見黒髪だがインナーを染めており、ついでにピアスも開けている。
「神崎さん、いいの?」
「いいって!いいって!ほらいこ!瀬戸も誘ってるから!」
「~っ、ありがとう!神崎さん!」
彼は不幸体質のせいで友達が少ないのだが、こうして友達として誘われることは素直に嬉しく思う。
こうして灯 創真はカラオケへと誘われた。
道中で瀬戸とも合流し、完全に浮足立った灯 創真。
しかしそこで大惨事が起こった。
「~~♪」
彼は完全に浮かれている。そこに、
「!灯 !後ろ!」
「え?ぐぼぉっ!!」
またダンプカーに追突された。しかしそれだけではなかった。
跳ね飛ばされた先にプロパンガスがあり、彼が突っ込んだことで静電気が起こり、彼を巻き込んだ大爆発が起こった。
「「灯 ーー!!」」
「う、げ、し、死ぬかと思った・・・。」
しかしそれだけでは終わらない。
先ほどの大爆発によって巻き上げられた建物の破片がたまたま真上を飛んでいた戦闘機に当たった。
それは首相官邸を潰そうとする自爆テロリストの戦闘機だった。
破片がエンジンに直撃し、コントロールを失う。そしてそれが彼の真上に落ちてきた!
彼はふと上を見上げる。
そして呟いた。
「どうせ落ちてくるならもっと小さいのあるでしょ。」
生を諦めた彼は自分でも意味不明な言葉を口走っていた。
そして第二の爆発に巻き込まれ、灯 創真は命を落とした。