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3−28 人質救出作戦(1)

 今夜のエーリッヒ将軍とラングスタイン大佐の二人は、トライトロン王国の騎士服による正装である。


 フラウリーデ王女は、元ハザン帝国高級士官に自分とクロード近衛騎士隊長は彼らの持つ極めて優れた剣法の師範になってもらっていることから話し始めた。またそのことは邪馬台国(やまたいこく)卑弥呼(ひみこ)女王からの勧めもあったことなどを織り交ぜた。そして現在、完全とはまではいかないまでも、ほぼハザン帝国剣法の真髄をつかみ始めている状態等々も、、、


 そして将軍と大佐がハザン帝国がよこした刺客九人からトライトロン王城内の居室で狙われた事実から考えると、帝国に残っている家族も同様に、帝国の刺客が差し向けられる可能性が極めて高いと思われることも併せ付け加えた。


 状況から考え、もし将軍と大佐だけで家族を迎えに行った場合、万が一家族を人質に取られて迫られると、恐らく彼らは捕まるしかなくなり、結果として戦争の責任を取らされ極刑に甘んじざる得なくなってしまう。


 その様な状況を総合して考えた場合、自分とクロード近衛騎士隊長が一緒にハザン帝国に同行し、彼らの家族を連れ帰ることが最良と考えていると両親を説得した。


 女王も摂政も王国内にいる騎士達の中でも最強の四人が救出に行くのであれば、滅多なことは起きないだろうとは思ったものの、何故フラウとクロードがそこまでするのかについては疑問を感じないわけではなかった。


 スチュワート摂政が皆には聞こえないように、

 ” 万が一、家族を人質に取られた場合、フラウが言うように二人は抵抗することもなく捕まってしまうだろう。そうなると、王国の情報の多くがハザン帝国に流れてしまい、再度戦争を仕掛けてくる可能性も考えられる ”

と女王にささやいた。


 女王は、

 ” 分かった ”

と短くそれだけ答えた。

 

 摂政の本音はともかくとして、彼の後押しもあって、エリザベート女王はフラウとクロード二人が同行することについて渋々許可はしたものの卑弥呼殿とも良く相談の上進めてくれとフラウ王女に念を押した。


 フラウ王女と卑弥呼の関係を全く知らないハザン帝国のエーリッヒ将軍やラングスタイン大佐は、” ヒミコ ” と呼ばれるそういう相談役がいるのだろう位に受け取っていた。


「エーリッヒ将軍、ラングスタイン大佐!女王様と摂政殿の裁可が降りた。急がなければ間に合わないかもしれない。明日にでもハザン帝国に向けて出発する 」


「えっ、もう明日出られるのですか?お姉様 」

「往復の時間を考えると、一週間で王国へ帰って来れるが、それまでジェシカ!両親のことを頼んだぞ 」


 急にフラウから自分に話が振られ、ジェシカ王女は一瞬驚き顔で首をフルフルと振っていたが、姉の真意を悟り、

 ” 分かりました。お姉さんとお義兄さんの分まで、私が甘えますので ”

と笑いながら応えた。

「ジェシカはとても物分かりが良くて助かる 」

 フラウは、絶妙な微笑みで応じた。


 フラウ王女は、人質救出作戦の了解を両親にもらったものの、その時点では、具体的な計画は無かった。それでも良くよく考えるとやはり無謀なことである。いくら凄腕の剣士が4人といえども、相手は暗殺集団を抱えているような軍事大国である。そして、ハザン帝国はトライトロン王国に捕虜となった二人が未だ生存していることをほぼ確信している。


 そう考えると、トライトロン王国が人質となっている家族を救出に来る可能性も恐らく想定ずみだと思う必要があった。


 事実、ハザン帝国のココナ・リスビー上級大将は、トライトロン王国がエーリッヒ将軍とラングスタイン大佐の家族を救出に来る可能性を十分に考慮しており、二人の家の周りには常時見張りがいた。いわば彼らの家族はほぼ軟禁状態となっていた。


 フラウ王女は、自室に戻り具体的な救出作戦あれこれと思案してみたが、感情の(たかぶ)りの方が激しく、具体的な救出作戦を立てられないまま、時間が過ぎていった。幾度となく、軟禁現場を想像し、見張りの状況も想定してみた。しかし、実際にはその現場を見た訳ではないので、全体的にもやがかかったように極めて心もとなかった。


 数回の寝返りの後、少しづつ眠気が襲ってきてやがて眠りについた。

 そして、フラウ王女は夢の中でハザン帝国の見張り部隊と戦い、彼らの家族を助け出していた。


 夢の中で振るう刀がとても重く、思うように刀が振るえない。しかも、見張りの部隊は無限とも思われるように次から次に彼女を襲ってきて、焦り始めたころ、粘り強い寝汗と共に目が覚めた。


 フラウ王女は嫌な夢を振り払うように、冷たい水で顔を洗って、両手で数回自分の顔を叩いた。


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