3−14 ジェシカ第二王女
今回開催される祝勝会に近隣国の王族をかなり招待しており各国の王子・王女も一緒に参加してくると予想された。
家族そろっての食事の時にフラウ王女は、エリザベート女王に祝勝会には各国の王子も招待されているのかと聞いた。
その瞬間、ジェシカ王女は顔を上げてフラウ王女の顔をじっと見つめていた。
ジェシカ王女はフラウ王女と異なりとても感が鋭い。ジェシカはフラウ王女のその一言から次に出てくるであろう話のおおよそが予測できていた。
「ジェシカは、もう少しお姉様達と一緒に居たいと思っております 」
今更ながらではあるが、妹の感の鋭さにはさすがに舌を巻いてしまい、フラウ王女は次に出す言葉に詰まってしまっていた。
ジェシカ王女は姉フラウ王女をじっと見つめ、
” お姉様が私のことを思っておっしゃって下さっているのは十分すぎるほどに分かっております。だけどもう少し、後少し私をこの王国に、お姉様と一緒に居させて下さい ”
と言った。
「そういう意味じゃないんだ。ジェシーはこの城にいつまでも居てくれて良いんだ。そのほうが私はむしろ嬉しい。私とクロの子供もジェシーに抱いてもらいたいと思っている。心から!
只、永久にという訳にはいかないだろう 」
・・・・・・・!
「だから、祝勝会に招待されている近隣国の王子様の中でジェシーが好ましいと思える王子様でもいれば、将来の結婚を考える良い機会じゃないかと思っているだけなんだが、、、。
もし追い出すように聞こえたのなら謝る 」
ジェシカ王女はフラウ王女が自分を邪険にしていないのは一番よく知っていた。その意味では咄嗟に自分が意地悪を言ったことを反省していた。おそらくジェシカ王女自身自分の結婚のことなど正直なところ一回も考えたことはなかった。そのため慌てて咄嗟に反応してしまったようである。
「確かに、王子様の中に私にとっての白馬の王子と思える方がいらっしゃるかも、、、 」
「そうなのだ!仮りに、そういう王子様が見つかったとしても今すぐに結婚するというわけでは無いし 」
二人のやりとりをハラハラしながら聞いていたエリザベート女王は、ジェシカ王女にはいつまでもこの城に居て欲しいと思っている反面、素敵な王子に娘が嫁ぐことも夢に見ていることを娘に話した。
父親のスチュワートはもう泣きそうな顔をして、女王の言葉に頷いていた。
そして、女王はさらに言葉を続けた。少なくとも、トライトロン王国は周辺諸国よりも、色々な面で優位にあり、ジェシカ王女を政略結婚の対象にする必要は全く無く、自分の自由な意思で好きな王子を決めれば良いとジェシカの肩を抱いた。
自分の部屋に閉じこもってばかりいても、白馬の王子様には巡り逢えないから、今回の祝勝会ではそういうことも含んで参列し観察すればよいとも女王は付け加えた。
ジェシカ王女は、家族の話が益々ヒートアップしていくのにバツの悪さを感じたのか、クロードに、
” クロは私の結婚どう思う?”
と話を振った。
話の急な展開にクロードは目を白黒させながら、
” 失礼を承知で申し上げます。私は、ジェシカ王女様のことをづっと自分の妹のように思ってきました。王女様が本当に幸せと思える結婚をして欲しいと願っています。王女様の意に沿わない結婚話であれば、兄として私が断固阻止して見せますから、、、”
と答えた。
クロードの決め台詞で、やっとジェシカ王女の結婚話に終止符が打たれた。
「それじゃー、お姉様、お兄様宜しくお願いしますね。私の騎士様方 」
ジェシカ王女は、自分が家族の皆んなから極めて大切に思われていることを今更ながら感じ、ちょっと意地悪が過ぎたのを心の中で反省していた。
姉のフラウ王女と違い、未来の可能性の幅は自分の方が更に広いことに思い至ったからでもある。
ジェシカ王女の未来は未だまだ定まっていない、子供ではないが、大人にも成り切ってもいない『 揺れる想いを持った十六歳 』であった。
スープが冷えてしまったな。取り替えてくれないか?とのスチュワート摂政の召使いを呼ぶ声に、全員が現実の世界に舞い戻ってきた。
フラウ王女はこのような貴重な一日一日を大切にしようと思い、これからは自分とクロードがその役目を果たすべき時期が近づいてきていることも改めて認識し始めていた。




