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龍神の異名持ち女騎士と呪術師卑弥呼  作者: はたせゆきと
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1−8 城中のお騒がせ姫

 その夜、珍しく眠れずにうとうととしているフラウリーデ王女のベッドに、妹のジェシカ王女が滑り込んできた。

 ジェシカ王女が4〜5歳の頃、眠れない時、姉のフラウリーデから寝物語の御伽話(おとぎばなし)を聞きたくてベットの中に滑り込んできたものだった。


 フラウリーデ王女は乳母から語り聞かせてもらった御伽噺の内容に強く興味を持っていたのかというと必ずしもそうではなかったようである。それでも、眠りに落ちにくい時、乳母の包み込むような少し低い声で紡がれる物語にはつい引き込まれてしまい、そしていつの間にか眠ってしまうのだった。


 ジェシカ王女にしても同様に乳母から御伽噺を聞いているはずである。フラウリーデ王女が乳母から読み聞かせてもらった御伽噺はみんな途中までしか聞いていない。そこまで乳母を手こずらせずに眠ってしまっていた。

 いわゆる御伽噺の結論をフラウリーデ王女自身は知らないわけである。そこでその結論は自分で捜索して妹に聞かせていた。その内容が妹にとって惹かれるものがあったのかもしれない。


 特にその話が戦いに関する場面になると、結構真に迫った語り口になってしまう姉の声にも惹かれたものであった。そんな時、フラウリーデ王女は妹ジェシーの黄金の髪を優しくなでながら寝かしつけるつもりが、自分が先に眠りに落ちるのもしばしばであった。


「お姉様!今晩だけ、私のわがままを聞いて下さい 」


 ジェシカ王女は彼女なりにこれから自分達に起こるかもしれないトライトロン王国の未来の不穏な動きの(きざ)しに、第二王女の自分であっても全くの傍観者のままでは居られなくなってしまうであろうという漠とした予感がそうさせているのかもしれなかった。


 フラウリーデ王女は燃えるような赤く長い髪のポニーテイル。太陽の光を浴びると、ルビーの様な綺麗(きれい)な光を発する。少し日に焼けた白い顔に映える夏の青空のような濃いブルーの瞳。少し気の強そうな引き締まった口元の美女であるのに対し、妹のジェシカ王女は天使のような巻き毛のプラチナブロンドの髪、透き通るような白い肌、何者の嘘でも見抜けるような澄んだ薄いブルーの瞳の美少女であった。


 ジェシカ王女が未だ幼い頃フラウリーデ王女は、妹がまるで精巧に創られた人形さんを見ているようだといつも(うらや)ましがっていた。

 潜り込んできたジェシカ王女の柔らかい身体に、妹の身体が思った以上に成長していることに驚きと、少しの嫉妬(しっと)を覚えた。


 『 この子、胸が大きい。妹のくせに私より成長している 』

 と妹からすれば、とても理不尽な言いがかりを投げかけられていた。


 それもこれも、今の幸せな時間に待ったが掛かるまでの間の僅かながらの平穏なひと時なのかもしれなかった。

 フラウリーデ王女は妹ジェシカ王女の絹のような滑らかな髪を指で(すく)いながら、ひと時の安息の時間を満喫しながら深い眠りへと落ちていった。


 翌日、侍女シノラインのけたたましい声にフラウリーデ王女は目を覚ました。


「姫様!アワアワワーとんでもないことです。だ、だ、誰をベッドの中に連れ込んでいるのですか?トトトとんでもないことを。私は、、、きっと責任を問われ、牢屋入れられて、それから打首、いや火炙(ひあぶ)りの刑に処せられ、、、」


 侍女シノラインの訳の分からない(あわ)てぶりに、やっと完全に覚醒したフラウリーデ王女は、自分のベッドの中でもぞもぞと動く何かに気が付いた。シノラインの騒ぎに触発され、自分も盛大な叫び声を上げた。


 二人の叫び声を尻目に大きな欠伸(あくび)をしながら、ジェシカ王女が上布団の中から驚いたように顔を出し、『 そんなに慌てて、何かあったの?』と、とても間延びした声で聞いてきた。


 掛け布団の中から顔を出したのがジェシカ王女だと分かって、シノラインはヘナヘナとその場に崩れ落ちてしまった。


 間をおかず、今度は隣のジェシカ王女の部屋から、再びけたたましい声が響いてきた。

 

「ところで、シノ!今何かとても不謹慎なことを考えていたのじゃないか?私が見知らぬ男をベッドに連れ込んでいるとか?」

「め、め、滅相も無いことを、、、私目(わたくしめ)がそ、そ、そのような不謹慎なことを考えたり言ったりするわけ訳がありません 」

「そうか?それにしては打首やれ、(はりつけ)やれと大騒ぎしていたように聞こえたが、、、」


「た、た、大変です !大変です。ジェシカ王女様が行方不明に、、、」


 ジェシカ王女の侍女アンジェリーナの声である。フラウリーデ王女は、あわててジェシカの部屋に急ぐと、ジェシカ王女のベッドのそばで座り込んでいる侍女に、『 何をそんなに騒いでいるのか?』と少し落ち着かせるように声をかけた。


「ジェ、ジェシカ王女様が、行方不明になられたようです 」

「ジェシカは私の部屋に居るから、そんなに騒がないでくれないか!」


 フラウリーデ王女は、ジェシカ王女の侍女アンジェリーナを落ち着かせるように軽く肩を2〜3度叩いた。


「ベッドにジェシカ王女様がいらっしゃらないので、フラウリーデ王女様に続き、ジェシカ王女様まで行方不明になられたのかと思い、、、」

とアンジェリーナは今にも消え入りそうな声で答えた。


 フラウリーデ王女の失踪が、城の者達に与えた影響は少なくなかったようである。やっと真実を理解して安心したのか、アンジェリーナは涙を流しながら喜んだ。


 自分の失踪が不可抗力であったとしても、城の多くの者達に計り知れない影響を与えてしまったことを王女はとても申し訳なく思った。

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