3−8 婚約発表
その日の夕食、夕食に招待されたクロード近衛騎士隊長は、正装の軍服を着て食堂に入ってきた。恐らく、その時点で両親や妹のジェシカ王女は感じ取っていた。
今日ここでフラウ王女から重大な発表がなされることを、、、。
エリザベート女王、スチュワート摂政、フラウ王女及びクロード近衛騎士隊長のグラスにワインが、ジェシカ王女のグラスに果実水が注ぎ終わるのを見計らいながら、フラウ王女は召使いにしばらく外すようにと命じた。
いよいようち明かされるフラウ王女からの言葉を誰もが黙って待っている。
「お父様、お母様、それにジェシー、私は先日、クロードに結婚を申し入れ、クロードも快く承知してくれました。それで、今晩皆さんに報告することにしました。了承して頂けますよね!」
3人が一斉に立ち上がり、フラウとクロードに向かって拍手を送った。
エリザベート女王とスチュワート摂政は、クロードが最初にこの城に来た頃のことを思い出し涙を浮かべていた。
市中の剣術道場でクロード・トリトロンを見つけ、この城に連れてきたのは父スチュワート摂政であるが、両親がクロードを自分の息子のように思うまでにはそんなに時間はかからなかった。
やがてはクロードが娘フラウリーデの婿になってくれたらとの希望を持つまでにもなってきた。また娘のフラウもクロードにはとても懐いていて、彼からの剣術指南に対しては特に熱心だった。それでも両親から見れば、王女と王女付きの剣術指南役の域をなかなか出ない二人をヤキモキしながら見ていたものだった。
中々に進まない二人の時間が突然に進み始めたのを最初に察知したのは妹のジェシカ王女であった。今もジェシカは跳び上がらんばかりに喜んでいる。
「それで、お父さん、お母さん!未だご返事頂いて降りませんけど?」
「聞くまでもないでしょう!私もお父さんもこの日が来るのを今かいまかと待っていたんですから。早速二人の婚約発表披露パーテイを開かなければならないわね、、、スチュワート!」
「そうだな!ハザン帝国との戦後処理の会談が終わり次第、祝勝会をかねて婚約披露をするということで良いよな。フラウ?」
「お父さんとお母さんに任せます。それで良いよなクロード!」
その日の夕食はいつに無く弾んだ晩餐会となった。父のスチュワートは珍しく酔っていて、クロードにもお代わりを勧めている。
フラウ王女がお義姉様にも教えなければと思った瞬間、
” フラウや!歓喜の歌声がダダ漏れしてるから、目が覚めてしまったぞ。フフフフ おめでとう!”
と卑弥呼の心の声が聞こえてきた。相変わらず神出鬼没の義姉であった。
クロード近衛騎士隊長のほうを見ると、父からかなりワインを勧められたようでもうすでに真っ赤な顔をしていた。
義理の父となるスチュワート摂政の
” 今日は朝まで飲むぞクロード!”
と叫ぶ声は聞こえなかったことにして、フラウ王女は母に眼で合図するとクロードを連れて部屋を出た。




