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3−4 身代金(みのしろきん)

 今回のハザン帝国への賠償金請求の本音は、トライトロン王国としては遮二無二(しゃにむに)金が欲しいわけではなかった。むしろ懲罰(ちょうばつ)的意味合いが強かった。事実、王国としては、今回の(いくさ)においてはほとんど被害も受けていなかった。そのため、シンシュン国との折半でその50%でももらえればそれでも十分と考えていた。


 今回のハザン帝国との戦争で王国が得られた最も大きい成果は、シンシュン国と相互不可侵同盟を締結できたことにあったのかもしれない。

 ハザン帝国とシンシュン国は隣国同士でもあり国同士の交流も存在している。また商習慣や生活習慣も比較的似通っている。そのため、彼らをハザン帝国の見張り役として今後も上手(うま)く利用できないかとクロード近衛騎士隊長は考えていた。


 スチュワート摂政はクロード・トリトロンの考えに賛同しており、

 ” 国民性がハザン帝国と極めて似通ったシンシュン国を賠償金の取り立て屋に仕立て、面倒臭い仕事は全部彼らにに押し付け、加えてその見張り役もやってもらおうか ”

(つぶや)いた。


 フラウ王女は出席者全員の顔を見回し、

 ” クロードの意見で構わ無いな?”

と確認し、摂政にその審議を一旦打ち切ってもらった。


 今回のハザン帝国からの侵略戦争においてトライトロン王国は、ダナン砦の作戦で武器や食料の半分を既に入手できていた。帝国兵3万の兵量米の半分は、実にダナン砦の食料の半年分以上分に匹敵する量であった


 もう一つ、捕虜二人の身代金についてだが、と摂政が切り出した。

 

「もし、わしが敵国の捕虜となった時、身代金はいかが程提示されるおつもりですかな?」

 第二軍務大臣ジームクントが冗談めかして切り出した。


「うーむ!私が即座に返答出来ないいような質問は、出来ればこの場ではして欲しく無いものだな。ジェームクント殿!」

 それを聞いた出席者は全員が苦笑していた。


 通常であれば、双方に捕虜が存在しそれを相互交換する方法がとられるが、幸いなことに王国側で捕虜になった者は皆無だった。


 スチュワート摂政は、捕虜となっている二人が金額はともかくとして戦争賠償金そっちのけで身代金を出してまで早々に彼らを取り返す必要があるほどの重要人物なのかと質問した。

 その目はフラウ王女を直視している。


 フラウ王女は、捕虜の二人から聞いた内容に彼女なりの推測を加えて話し始めた。

 ハザン帝国中枢部は、捕虜の二人を戦争犯罪人に仕立て上げ公開処刑する必要があった。自らの責任をあの二人に転嫁(てんか)しようとしているのはほぼ確実で、決して彼らの能力が欲しいわけではなく、敗戦処理を責任転嫁をするためだけに、あの二人の生贄がどうしても欲しかったと思われた。


「ほう、ハザン帝国は中枢部自らの失敗をあの捕虜の二人だけに負わせるために、あの二人の身代金を用意するということなのだな!」

・・・・・・・!

「そのように重大な役目を彼らが担っているのであれば、5億ビルは余りにも安過ぎると思うが、この際、賠償金を含めた法外な身代金を奴らに請求してやるとするか?」


 フラウ王女は、ハザン帝国はあの二人を生きたまま、それも出来るだけ速やかに本国へ戻し公開処刑を行う必要性に迫られていると考えていた。

 そのこともあって、フラウ王女は後程自分の方から別の提案をさせてもらいたいとスチュワート摂政にその議題を一旦打ち切ってくれるように依頼した。


 スチュワート摂政は、

 ” この件の処理案はフラウ第一軍務大臣に任せるとして、対ハザン帝国に関する議案については、一旦これで打ち切る ”

と宣言し、次の議題に移った。

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