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2−29 四人の剣士(3)

 クロード近衛騎士隊長はラングスタイン大佐との戦いに勝ったものの、しばらくの間その身体は震えていた。それが、不思議な剣法の鋭さにに対してのものなのか、あるいは極めて珍しい剣法を使う相手との命のやり取りで、紙一重でやっと勝利できたからなのかは判然としなかった。


 クロード近衛騎士隊長の相手したラングスタイン大佐の剣法も彼が全く初めての見る剣の(さば)きであった。特に彼の足捌(あしさばき)は王国のものとは全く異なっていた。すり足でジリジリと隙を見せずにいつの間にか(ふところ)に入り込んできていた。気がついた時には大佐の剣が自分の目の前に迫っており、一歩間違えば自分が先に切られていたと感じたことが数回あった。


 これまでに初めて経験した恐怖を思い出すようにクロードは身震いした。

 実際に戦っている時には、王国とかハザン帝国とか敵味方関係なく、久し振りに一人の剣士として勝負をすることができていた。


 途中、自分がラングスタイン大佐に負けるのではないかと焦りを感じたのも確かで、それでいて、勝負が終わった今、未だに彼と戦えたことの喜びの方が優先しており、その喜びに身体が震えていた。

 逆に彼がハザン帝国の兵士でなければ、このように真剣に戦うことも無かっただろうが、それでも二度とこのような命をかけた戦いは経験したくないとも考えていた。


「クロも私と同じ経験をしたようだな。国が違うだけでこれほどまでに剣の使い方が異なってくるとは、この世界には未だまだ我々の知らない剣の道が数多く存在するかもしれないな 」

・・・・・・・!

「『 龍神の騎士姫(りゅうじんのきしひめ) 』などと(おだ)てられ、何となく剣を極めたつもりでいた自分がとても恥ずかしい!」


 やがてハザン帝国の兵隊の帰還準備が終了したようである。各部隊の隊長がエーリッヒ将軍とラングスタイン大佐のところに来て、全員が地面に膝をついた。

 そして口々に

  ” この御恩生涯忘れません ”

(すすり)り泣きしていた。


 二人は皆を立たせ、、、

 ” わし達の力不足でこのようなことになってしまって申し訳ない。本国まで無事に部下達を連れ帰ってくれ ”

と言うエーリッヒ将軍の頬を一筋の涙が流れた。


 そして、二人は遠ざかっていくハザン帝国軍に長い間深く頭を下げていた。

 ハザン帝国の兵隊の姿が小さくなってきた頃、トライトロン王国の突撃隊の班長が捕虜用の(かせ)を二つ持ってきた。

 フラウは、その(かせ)をじっと見ていたが、

 ” その必要はなかろう。この二人は逃げたりはしない1 ”

と言って下がらせ、馬二頭を連れて来るように命じた。


 先程の死闘で、フラウは将軍の為人(ひととなり)を確かに感じていたからだ。クロードもフラウの考えに同調したように微笑み返した。


 フラウ王女を筆頭(ひっとう)とする突撃部隊が城門に近づくと、5,000名の兵が片膝を突きフラウ王女達を出迎えた。

 城門を通り抜けると、そこにはエリザベート女王、スチュワート摂政、妹のジェシカ、第二軍務大臣ジームクント、第三軍務大臣メリエンタリー、総参謀長ジークフリードが並んで出迎えてくれていた。


「ジークフリード総参謀長!王国の被害状況を報告せよ 」

 

「はっー、一部に黒い油で軽い火傷を負ったものがいますが、命に別状ありません。戦闘らしき戦闘になる前に終わってしまいましたので、戦死者などは誰一人と居りません 」


 フラウ王女は馬から飛び降りると女王の前で片膝をつき、

 “ 只今戻りました ”

報告した。


 女王は直ぐにフラウ王女を立ち上がらせた。

 また妹のジェシカ王女が駆け寄り、フラウ王女に抱き付いてきた。

 

「戦いの様子が、城門からではよく見えなくて、とても心配しておりました。お姉様は強いと信じていましたが、やはり敵国の将軍ともなるとやはり相当に強い方ではないかととても不安でした。

 お姉様とクロードお兄様の無事な姿が見られて、ジェシカはとても幸せです 」

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