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2−20 卑弥呼(ひみこ)の作戦

 この砂漠地帯では、この時期、毎年大きな砂嵐(すなあらし)が砂漠を(おお)い尽くしている。不思議と砂漠地帯であっても王都付近までその砂嵐が押し寄せることや王都付近でその砂嵐が発生することは少なく、かつてそのような大きな被害を受けたという記録も残っていなかった。

 脳内の卑弥呼(ひみこ)は考えごとに没頭しているらしく、何も声をかけてこない。

 

 しばらく経って、卑弥呼はつぶやいた。

「ハザン帝国の主戦力が砂漠の中央付近に来た頃に砂嵐が来てくれると最も効果的なのじゃが、今のハザン帝国軍の進軍速度で予測するに、半日程のずれがあるのう 」


「お義姉様!もしかしたらその砂嵐をハザン帝国軍にぶっつけようと考えておられるのですか?」

「何とか後半日程ハザン帝国の進軍を遅れさせることができないものかな!ダナン砦のクロに一働きしてもらおうかのう 」


 当初は卑弥呼は補給部隊の中央部分を狙って分断しようと考えていた。しかし、砂嵐の進行時間を考慮すると、むしろ補給部隊の先頭部分を分断した方が良いのではないかと思い始めた。


 確かに卑弥呼の考えている通り、本隊にくっついている補給部隊の先端をダナン砦の斥候兵(せっこうへい)が攻撃するとなると、直ちに本隊の知るところとなる。補給物資全部をトライトロン王国に奪われてしまうことを危惧(きぐ)し、兵量米という生命線が断たれることを黙って見過ごす訳にはいかないはずである。

 そうなると必然的に本隊が全軍を挙げて補給部隊の守備に回ると考えられた。


 その場合、補給物資は守れたとしても、行軍の立て直しなどで、嫌でも半日程度は進軍が遅れることになる。


 当初の見込みより、ダナン砦の兵隊に若干多く犠牲が出る可能性と、ハザン帝国軍は補給物資を完全に失うことなく王国内を進軍してくる可能性は否定し切れないが、、、そこはクロードとグレブリー大佐に何か知恵を絞ってくれることをフラウ王女は期待した。


 そして、根拠は無かったが、あの二人であれば大きな被害を(こおむ)ることなく何んとかやってのけれる気がしていた。

 最悪、補給部隊が無傷であったとしても、砂嵐に蹂躙(じゅうりん)されれば、補給物資を減らしてしまうことも十分に考えられた。

 

水鏡(みずかがみ)でハザン帝国の進軍状況を逐一確認しながら、王都から攻撃の最適な場所と時間さえ指示すれば、ダナン砦の斥候兵(せっこうへい)の被害は最小限にくい止めることが可能ではないでしょうか 」


 卑弥呼は当初、ハザン帝国が王国内に進軍してきた時点で補給物資の半分くらいは、あらかじめ()ぎ落としておきたいと考えていた。しかし砂嵐がハザン帝国軍の兵士に与える被害の方が、補給物資を失うことよりもはるかに大きいと考えられる。しかも砂嵐により補給物資もある程度は使用できなくなる可能性もなくはなかった。

 もし、どちらかの選択が必要となると、ハザン帝国軍を砂嵐に遭遇(そうぐう)させることが有利のように感じていた。


 フラウ王女もハザン帝国の進軍を半日程遅らせ、兵士たちを砂嵐の脅威に(さら)させ徹底的に疲弊(ひへい)させることのほうが、その後の王都決戦での確実な勝利を(もたら)してくれるような気がし始めていた。


「卑弥呼義姉様!あまり欲をかき過ぎると良く無いとも言いますし、程々でよろしいのじゃないでしょうか 」


 実際にはダナン砦の二人が後にフラウ王女と卑弥呼の作戦変更内容に更に修正を加え、トライトロン王国に有利で完璧な戦術を立案し、成功させることまではこの時点では卑弥呼でさえも予想できていなかった。

 

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