2−15 フラウ王女の変化
フラウリーデ王女は、父からこれまでの自分が、猪突猛進の単純な戦闘狂といわれたような気がして少し口を膨らませたが、以前の自分を思い出すと確かに自分の戦い方は力まかせであったと自嘲的に笑った。
そして少しづつ戦略思考が芽生えつつある自分を感じ、卑弥呼義姉に感謝しなくてはと考えていた。
「ところで、フラウ!今回のハザン帝国侵攻を撃退する方法について総合的にはどのように見ている 」
脳内の卑弥呼がそう聞いてきた。
フラウ王女は、最終的に勝ち負けを決めるのは、クロード近衛騎士隊長が考えたダナン砦の作戦の成果にかかってくると思っていた。もしクロード・トリトロンが作戦を期待通りに達成してくれれば、トライトロン王国は勝利は一歩も二歩も近づくであろうとフラウ王女はそう期待していた。
もし3万の軍勢を1万足らずの軍勢で撃退することができたのなら、後世に名を残す戦いとなるはずである。当分は周辺諸国もよからぬ考えは起こさないという副次的効果さえも期待できた。
帰りしなエリザベート女王はフラウ王女に
” 卑弥呼殿によく御礼を伝えておいてくれ!そしてこれからも娘を宜しくお願いします ”
と囁いた。
「お母様大丈夫です。卑弥呼殿にはお母様の声は全て聞こえていますよ 」
フラウは笑いながらそう答えた。
女王は、今度はフラウ王女の目をまじまじと見つめながら、クロードのことをどう思っているのかと聞いてきた。もしこの戦争を無事乗り切ることができたら、二人の婚約を発表したらどうかと女王は考えていたからである。
女王はフラウ王女の返事をまたずに、クロードのことは自分達にとってもかけがえの無い息子のように思っているので是非そうしてもらいたいとつぶやいた。
フラウ王女は、顔を真っ赤に染めながら、
” ハザン帝国を撃退したら、それから考えます ”
と咄嗟に答えていた。
「それは、肯定と見做すが! 」
女王は、会心の笑みを浮かべて、フラウ王女の肩を叩き自室へと帰っていった。
「お姉様、ちょっとお部屋に寄ってもいいでしょう?明日からまた忙しくなるんでしょう。ね!お姉様、私、お姉様の頭の中に仮住まいされている卑弥呼女王様とどうしても話がしたいの。だって、卑弥呼女王様は、私にとってもお義姉様なんでしょう 」
フラウ王女は妹の真剣な依頼に、断ることは不可能と考え、また卑弥呼も喜ぶであろうと考えた。
「分かった!侍女アンジェリーナに話してから私の部屋に来なさい。よろしくて?」
「聞いたか?フラウ! 今ジェシカが、わしのことをお義姉様と呼んだぞ 」
と脳内の卑弥呼が歓喜の声を上げていた。とても千年以上を生きたとは思えない無邪気なその喜び様にフラウはそういう卑弥呼に益々惹かれてしまった。




