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12−19 最終決戦(黄金の獅子王)

 フラウリーデ女王への報告が終わると、サリナス・コーリン大佐は早速バルタニアン王子の出陣の準備をするために、いつものように忽然とその姿を消してまった。

 

 さっきまでサリナスのひざまづいていた場所を見ながらフラウリーデ女王はサリナスが何処(どこ)かの時間軸の中で卑弥呼(ひみこ)末裔(まつえい)であることはほぼ間違いないとの確信が持てていた。

 また、義姉卑弥呼とサリナス・コーリンの思念でのやり取りはフラウ女王以上に簡単なことからも,その考えは間違ってはいないように思えた。


 事実、サリナス・コーリン大佐は以前卑弥呼と会った時依頼、二人の間にはお互いの脳内で呼び合うことが可能となっていた。


「卑弥呼殿!機は熟したようです。そろそろバルタニアン王子を連れて、ダナン砦の斥候兵と合流したいのですが、、、」


「分かった。バルタニアン王子を呼んでこよう 」


「馬はこちらで用意します 」



「卑弥呼叔母様!誰かに見張られたりしていませんか?」

「ほう!バルタニアンにもそれがわかるのか?やはりわしの血を濃く引いておるやもしれんな 」

「大丈夫じゃ!確かに見張られてはいるが、彼らには我々の姿は確認できていないはずじゃ 」

 

「卑弥呼お義姉様!迷彩の術を使われているのですか?」


「サリナスには隠しごとはできんのう。お前も使えるんじゃろう?」

「はい、それが私の仕事でした故。しかし、フラウお義姉様に仕えるようになってからは幸いなことに一度も使っておりません 」


 ハザン帝国にいる頃のサリナス・コーリンは、自分の能力について真剣に考えることは全くなかった。ただ、日常の生活の中で時折見せる瞬間移動の能力や、友人や同僚の考えている思考のうち、自分に対して良からぬ感情をある程度読める能力が備わっていた。

 サリナス自身が特に意識することなく自分の脳内に流れ込んでくる。


 そのため、ある者からは誉められ、ある者からは気味悪るがられたりした。


 サリナス・コーリンがハザン帝国の忍びの部隊として諜報活動を行なっていた頃の雇い主は、トライトロン王国との飛行船による決戦の折に、戦死したココナ・リスビー上級大将であった。彼は言葉にこそ出さなかったが、もし彼女が敵側に回った場合、最も危険な人物として位置付けていた。


「サリナスも自分の運命を呪ったことじゃろうな!」


「私に課せられたこれまでの過酷な使命の全ては、お義姉様達に出会うための修行だったと考えています 」

「サリナスがそう言う風に考えてくれていることは、とても嬉しいのう 」


 事実、サリナス・コーリンがフラウリーデ女王や邪馬台国の卑弥呼と出会ってからは、自分のその能力が何のために備わっていたのかを感じるようになっていた。そう、自分に与えられたその能力はフラウリーデ女王に出逢いそして女王の右腕となることでトライトロン王国を勝利につなげるためであったと考えられるようにまでなっていた。



「そろそろ、ダナン砦の斥候兵達と合流する地点のようじゃが、、、」


 卑弥呼がそう(つぶや)くと、200m四方位の砂が次々と持ち上がり斥候兵が現れた。彼らは、砂漠の砂と同じ色をしたマントを羽織っていた。


「忍者でも負けそうな隠れ方ですね 」


「あれが、グレブリーが鍛えた斥候兵達だ。彼らにはハザン帝国との初戦の時に大いに助けられたものじゃ。機動性、隠密性全てに長けた兵隊達だ 」


「その結果として、『 ダナン砦の英雄 』が誕生したわけですね」 」


「バルタニアン王子殿、この度の先鋒にご一緒できて光栄でございます。何なりと御命じください 」

 

 王位第一継承者バルタニアン・ハナビー・フォン・ローザスは身長185cm、中肉中背、色白の顔、(かぶと)からはみ出た黄金色の長い髪が風に優雅に(なび)いている。その黄金の長い髪の向こう側に沈みかけた夕日が透けてみえ、さながら磨き上げられた黄金のように光り輝いていた。


 兵士と正対しているその瞳の色はエメラルドのようなグリーン、細面のその顔は若い頃のフラウリーデ王女を思い起こさせる。引き締まったその唇は彼の気の強さを(あらわ)していた。


 そしてその腰に()いている剣は、母フラウリーデ女王から昨日拝領したばかりの王の象徴となっている『 神剣シングレート 』である。


 いつも王子を見ているサリナス・コーリン大佐も、この王子の凛々(リリ)しい出立(いでたち)に軽く溜息をつき、『 龍神の騎士姫 』 二つ名を持った義姉フラウリーデ女王の初陣もかくやと考えていた。


 そして、サリナス・コーリンはバルタニアン王子のその姿を見ながら 『 黄金の獅子王(おうごんのししおう) 』と(つぶや)いた。


 しかし、この王国内の内乱鎮圧後は数世代にわたって戦争が起こらなかったため、バルタニアン王子の渾名(あだな)が表で囁かれることは無かったし、トライトロン王国の正式な記録にもその二つ名は存在していない。


 それでも(ちまた)の娯楽として催される活劇や、流れ者の吟遊詩人の歌の中には、必ずと言っていいほど、『 黄金の獅子王 』が語られたものである。


 もし、この内乱が長期に渡ったと仮定した場合、バルタニアン王子の二つ名 『 黄金の獅子王 』が後世の歴史家に面白可笑しく伝えられたであろうし、王国の公式の記録の中にそう記載されたかもしれない。


 バルタニアン王子は、自分の秘めている能力の中に母フラウリーデ女王、義母の邪馬台国(やまたいこく)の卑弥呼、それに『 女王の剣 』サリナス・コーリンと同じ能力を所有していることはよく知っていた。だが、これまで人前でその能力を見せることはなかった。


 後にバルタニアン王子が、その能力を一回だけ使用しなければならなくなる事件が発生するが、そのことがバルタニアン王子のその後の一生を変えることになる。

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