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12ー11 最終決戦(生き返った死人)

 ここは、トライトロン王国王城の詮議場、フラウリーデ女王は王国の政治、軍事及び王国技術を預かる最高責任者達を召集した。

 そしてしシューベリー・ゼークスト侯爵を旗頭(はたがしら)にして迎合した貴族連合軍の叛乱の(きざ)しへの対応に関する詮議を開始した。


 クロード摂政、バルタニアン第一王位継承者、エーリッヒ・バンドロン第一軍務大臣、メリエンタール・カルマ第二・第三軍務大臣、ラングスタイン将軍、ジークフリード・ザナフィー公安省大臣、トライト・オニール、リモデール・オニールの両公安省中将、サリナス・コーリン王国公安省情報収集室長、サンドラ・スープラン王国科学技術省大臣、ニーナ化学技術庁長官、ドルトスキー・プリエモール科学技術庁長官及びグレブリー・リンネ公爵など王国と貴族家を代表する面々が円卓を取り囲んでいた。


 そして何故か、当然みたいにフラウリーデ女王とクロード摂政の間には邪馬台国(やまたいこく)卑弥呼(ひみこ)が興味津々の顔をして座っている。


 シューベリー・ゼークスト侯爵家を筆頭にし、その北側に接するリンナカインド・ハーバント子爵領、更にその北側に接しているシンギーカム・ランダル男爵領、そしてそのランダル男爵領の東側に接しているハウゼンストク・ナーデル男爵領の四貴族領主が叛乱軍として合従連衡(がっしょれんこう)を組んでいることが、フラウリーデ女王に冒頭発言で確実なものとなった。


「私はゼークスト侯爵を旗頭にして徒党を組んでいる貴族連合を『 叛乱軍 』と命名し、以後王国の記録には叛乱軍の名称で記載することを命じる 」


 フラウリーデ女王の宣言を聞き、詮議場の気温が3° 程低下したように出席者全員が感じていた。


「まず、グレブリー・リンネ公爵とサリナス・コーリン大佐に叛乱軍の動向に関する調査結果を話してもらおうか?」


 最初にグレブリー・リンネ公爵は、ゼークス侯爵領内において歌舞伎者(かぶきもの)を装いながら収集した情報について話し始めた。


 元々、情報収集の動機となったのは、公爵領内にゼークスト侯爵家の精鋭の諜報員が多数潜入しその活動が激しくなったことに端を発していた。


 通常、いつも通り領内に一人二人の諜報員が配置されている限りにおいてはグレブリー公爵の警戒網に引っかかることはなかったが、腕利きらしい諜報員が常時数名配置され、にわかに活発な諜報活動を続けていることが明確になり、通常の動きに大きな変化が生じてきたことで、叛乱の時期が近づいていることが容易に予測された。


 彼は、元々ダナン砦の責任者として常に第一線を渡り歩いた経歴をもち、『 ダナン砦の英雄 』という二つ名の所有者でもある。そして最終的には王国の軍務大臣にまで上り詰めた男である。そんな彼がこの違和感を黙って見逃すはずはなかった。


 彼は、その真相を探るためには自ら乗り出すことが最も相応(ふさわ)しいと考えた。勿論、自ら望んでその役を引き受けたことに関しては口を(つぐ)んでいた。


 そのグレブリー・リンネ公爵が出した結論は、先の叛乱の首謀者であった元ゼークス公爵家の将軍シュタインホフ・ガーナの首実検は替え玉であって、彼が元ゼークスト公爵の長男シュトライト・ゼークストと共謀し、ゼークスト公爵を殺害したことを確信していた。


 それによりシュタイホフ将軍は、御し易いシュトライト・ゼークスに鞍替えしたと予想された。もちろん、二人の間にどのような密約が交わされたのかは、当人達以外では知る由もなかった。


「それでは、グレブリー公爵はシュタインホフ将軍代行がゼークス公爵を殺害し、暗愚(あんぐ)な長男のシュトライト・ゼークストに乗り換え、彼を傀儡化(かいらいか)し、今では侯爵家を実効支配していると見ているのだな!」

・・・・・・・!

「サリナス・コーリン!お主が得ている情報についもて報告してくれ 」


 サリナス・コーリン大佐は、ゼークスト公爵及びシュタインホフ・ガーナの首実検で最初に不自然さを感じていた一人である。


 確かに戦闘時に顔半分に火傷を負って戦線から一時離脱したということは知っていたが、首実検に提供された首は、完全に火傷で爛れており、その首がシュタインホフ将軍実物かどうかまでは(しか)とは確認できなかったためである。


 それでも少なくともゼークスト公爵の首は確実に本人のものであったところから、戦後処理の煩雑さに追われ、それ以上追求することはしていなかった。


 それでも、ここに至ってそのシュタインホフが再び叛乱の首謀者となっている可能性が強いことに自分の落ち度を感じないではいられなかった。


 勿論そのことについては、フラウリーデ女王より、それの真偽より優先する別の使命を受けてために、断念し、今に至っていた。


「サリナスよ!人は誰でも万能の神にはなれないんじゃよ。それよりもこれからどうするつもりなのじゃ?」


「噂の仮面のシュタインホフは、あのシュタインホフ将軍で間違いなさそうです。邸内ではシュタインホフ侯爵代理と呼ばせていま少し 」


 一介の傭兵がどのようにしたら貴族にのし上がれるのかは全く不明であるが、侯爵代理として就任している限りにおいては、少なくともゼークスト侯爵家の重鎮達はその存在を認めていることになる。


「やはりな!ずる賢い奴め。あの時サリナスの話を聞いて、あるいは替え玉かもしれないとも考えないこともなかったが、産業革命の再始動に心が奪われてそのままにしておいたのが悔やまれるな。


 侯爵家の立て直しのために強く罰することはしなかったのだが、今となってはそれが仇となってしまったようだな!」

・・・・・・・!

「トライトロン王国の貴族を余所者のシュタインホフが手玉に取ったなど、ほかの誰にも話せない内容だな。今度こそはきっちりと肩をつけさせてもらわないとな、、、。」


 フラウリーデ女王は、自分の迂闊さを悔やんでいた。自分の中途半端な情けが、今回の叛乱の引き金になってしまっていると考えると、無性に腹が立ってきた。


 それまで一言も発言していなかった邪馬台国の卑弥呼が、『 完全な人間などどこにもいない。全知全能の神でさえ間違いは犯す 』と(つぶや)いた。


 もちろん、フラウリーデ女王は、卑弥呼の言っていることは、よく理解できていた。それでも、あの時、、、、していたらと思うのは人間の常である。


 この時、邪馬台国の卑弥呼が全知全能の神でさえも間違いを犯すとフラウリーデ女王を慰めるように言ったその言葉が、卑弥呼の実際の経験からきていることとは誰もが考えなかった。


 実際に卑弥呼はかつて色々な神ではないかと思われる存在に出会ったことがある。そしてその彼女が経験として、神であっても間違いは起こすと言ったのだが、誰も例え話程度としてしか受け取らなかった。


 だが、この卑弥呼と神々の出会いについては、また別の物語で語られることになるであろう、、、。

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