2−5 血のつながり
フラウ王女は、侍女のシノラインを呼び、ジェシカ王女を自分の部屋で寝かせるから、ジェシカ王女の侍女アンジェリーナが騒ぐことの無いようにと伝達させた。
先般、ジェシカ王女がフラウ王女の部屋で眠った時の大騒ぎを思い出しながら、フラウはクスリと笑った。
フラウは妹の少しウエーブのかかった柔らかい髪を手で掬いながら顔をのぞきき込んだ。ジェシカは蕩けるような微笑みで『 お姉様大好きです!』と返して来た。こんな庇護欲を掻き立てられる顔で近付いて来られたら、ほとんどの男は蕩かされてしまうだろう。
妹ジェシカの運命の一端を間違いなく自分が握っていることを感じ、フラウ王女は改ためてこの戦には必ず勝利して自分がこの王国を守り切るのだという決意を固め、ジェシカ王女を抱きしめた。
「今日は、クロードが帰ってくる日じゃのう。それでフラウは朝からソワソワしているんじゃな 」
ジェシカ王女までも
” 今日はクロが帰ってくるんですよね ”
と話しかけてくる。
クロード近衛騎士隊長のことを意識しないようにと考えれば考えるほど、フラウ王女は自分の頬が紅潮してくるを感じる。
卑弥呼は、自分とフラウ王女が生まれた時代や国、また育った環境などが全く違うのだが、魔法陣がフラウの血で発動したところから、二人には同じ血が流れているはずで、この機会にそのことを証明してみようと考えていた。
不思議とフラウ王女も卑弥呼と同じようななことを考えていた。
自分と卑弥呼には同じ血が流れているのではないかと、、、。
・・・・・・・!
「わしはのう!邪馬台国の姫巫女とフラウも同じ血が流れているのではないかと思っているじゃ。未だ確かなことはわからないがのう、、、」
「そういう意味では、邪馬台国の姫巫女とそなたは義姉妹ということになるのじゃろうな! 」
千年も経てやっと卑弥呼の特殊な血を強く引き継ぐ姫巫女が誕生したことと、またその特殊な血を引く全く別の世界に生きていたトライトロン王国の第一王女が、魔法陣を介して突如として邪馬台国に現れたこと、それらが全くの偶然とは考えにくかった。
卑弥呼には、フラウ王女がその血液の特殊性で邪馬台国へ来れたのは、恐らく単なる偶然ではなく、何か別の意思が強く働いているためではないかと思えてならなかった。
フラウ王女にとっては、にわかには信じられない話であったのだが、むしろそう考えると不思議と理解できるような気がした。
「この際 『東の日出る国 』の神話時代の神様と話ができたという言葉や呪術をいくつかフラウにも覚えてもらおうと思うておる 」
卑弥呼は、これから自分が教える言葉をもしフラウ王女が唱えることができれば、明確な血の繋がりの濃さを証明できるのではと考えていた。
一方で、卑弥呼はフラウ王女が呪術を使えることをトライトロン王国が知るようなことになった場合、フラウ王女は皆から畏怖され、場合によっては王国で最も忌避されている魔女扱いとなってしまうのではないかという心配もしていた。
それでもフラウ王女がトライトロン王国を守り抜くために、あえてその道を選ぶというのであれば、いくつかある選択肢の中からフラウ王女自身が自らの意思で選び取った運命ということになる。もしそうであれば、それはそれで悪くはないように思えた。
「あとはお前次第というところじゃのう、、、」




