2−3 古代の呪文(じゅもん)
卑弥呼は勿体ぶっているわけではないといっているものの、神話時代とか神様の言葉とか、しゃべっていることは十分に勿体なさすぎるとフラウリーデ王女は感じたが、卑弥呼の言葉を遮るのも悪いと思いただ黙って聞いていた。
その神話時代には人間の中でも選ばれた特定の者だけが神と話することができたといわれている。その神に選ばれた者は、巫女や神子などと呼ばれてていた。
その代々の巫女や神子に口伝にて伝えられきた言葉が、先ほど卑弥呼がつぶやいていた呪文である。
フラウ王女の世界では魔法使いやシャーマンと呼ばれて畏怖されている存在である。しかしそのほとんどは伝説的に語り継がれている存在で、現在のトライトロン王国では否定的な意見がほとんどである。
フラウリーデ王女は、卑弥呼の肥後国との戦い方やいま現在自分の頭の中に卑弥呼が仮り住まいしている状況を考えると、やはり卑弥呼は名実ともにシャーマン以外とは考えられなかった。
卑弥呼は代々巫女の血筋である。勿論その血筋の巫女の全ての子孫が古代呪文を理解する能力を持って生まれた訳ではなかった。女子の中でも始祖の巫女の血を強く引く存在が誕生するのは千年に一度くらいと考えられているが、普通の人間の50年くらいの齢では、その真実は確かめようがない。
「それで、邪馬台国の姫巫女様はお義姉様と同じように、呪術能力に長けておられるのでしょうか?」
「そうよのう!わしの代理を命じている姫巫女はわしの血を久しぶりに強く引いている先祖返りの巫女のように思われる。 事実、姫巫女は齢10歳にして呪文を解し、15歳で卑弥呼と同じように亀の甲羅による占いや、未来の一部分また邪馬台国から遠く離れている場所で起こっている特異な現象を見通す能力も持っているようじゃ 」
「凄いですね?ではやがて大和の国全土を統一なさるかもしれませんね 」
「その可能性はあるが、もし他国から無用な干渉さえなければ、姫巫女には大和国の統一などという野望は持って欲しくはないと思うておるのじゃがのう、、、」
卑弥呼の話を聞いているうちにフラウ王女は、なぜ昨日卑弥呼が蔵書館に行き、王国や王国周辺地図や歴史や、さらに天災に関する色々な事象を調べていたその理由を理解し始めていた。
「それでは、お義姉様!ハザン帝国からの侵攻に当たって、未来や遠くで引き起こされている現象を見通せるかも知れないとのお考えがおありだったんですね 」
「そうなれば、良いがのう。世界も時代も大きく違う故、一体どこまで出来るかは未だわしにも判らなんが、、、そうなってくれれば嬉しいのう。
そういえば、今日は午後から詮議の予定じゃなかったのか? フラウ!」
午後には対ハザン帝国戦への対応策を練る会議のために主要なメンバーが召集されていた。
卑弥呼は詮議の場においては、呪具や呪術については伏せておいてくれないかとフラウ王女に思念した。
「フラウの世界では恐らく荒唐無稽なものとして、余り相手にされないかとは思うが、場合によっては良からぬ者からの邪魔が入る可能性も考慮しておくほうが懸命かと、、、」
「大丈夫です。お義姉様の考えておられる危惧は私にも理解できています。たいていの人は自分の理解を超えたものに対しては、興味を超えて大きな恐怖感を感じるものです。
王国においては、
” 転ばぬ先の杖 ”
という諺がありますので、、、」
「おう、おう、その言葉なら邪馬台国にも存在しておるぞ!」




