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第二話 2−1 フラウ王女と卑弥呼

 いよいよハザン帝国の侵略を迎え撃つべく、邪馬台国の卑弥呼とフラウリーデ王女は立ち上がった。邪馬台国の卑弥呼は、フラウリーデ王女の脳内に住み着き、フラウリーデを導いていく。そしてもう一人クロード近衛騎士隊長は持ち前の戦略性で、数少ない王国兵の効果的な使い方につての戦略を練る。


 そして、この戦をきっかけに人々は石油の存在とその有用性が無限大であることを知ることになる。

 卑弥呼(ひみこ)は、昨日入手できると約束したものはいつ用意できるのかと朝からフラウリーデ王女の頭の中で騒いでいる。

 フラウリーデ王女が邪馬台国(やまたいこく)からトライトロン王国に帰る時に、彼女の頭の中に仮り住まいしている卑弥呼女王の声である。

 

 遥か遠くの時間も場所も異なるところに存在すると思われる邪馬台国の女王卑弥呼が、もうそこまで迫っているハザン帝国侵略軍からトライトロン王国を守る為、義妹となったフラウ王女の脳内に仮り住まいし、戦略対応に必要な思念を送ってくる。


 住んでいる世界も流れている時間さえも全く異なるこの二人の心を結び付けているのは、この二人の中に流れている共通の血液であった。


 二人の中に流れる同じ血液が、異次元世界のどこかで交錯し、結びつけ卑弥呼は今、フラウリーデ王女の頭の中にいた。偶然なのか必然なのかは未だこの時点ではまだ判然としないが、二人で共にハザン帝国からの侵略戦争に対峙(たいじ)しようとしていた。


 フラウリーデ・ハナビー・フォン・ローザスは、トライトロン王国の第一王位継承者で19歳、流れるようなルビー色の赤毛の髪をポニーテールに結び、大きな青い意志の強そうな瞳と、少し日に焼けてはいるが、透き通るような白い肌を持つ若くて美しい王女様である。


 そのお姫様要素満載(ようそまんさい)の彼女であったが、彼女が一たび戦闘用の甲冑(かっちゅう)を身につけると、それだけで百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の騎士を彷彿(ほうふつ)とさせる立ち居振る舞いに変化する。そう、王国内では誰も知らない者は居ない『 龍神の騎士姫(りゅうじんのきしひめ) 』の二つ名持ちの剣神へと変身する。


 一方、邪馬台国の女王卑弥呼は年齢不詳。本人に言わすれば、千歳からは数えるのは止めてしまったと公言している。

 フラウ王女が考えるに、卑弥呼は恐らく千年それ以上に長く生きていると確信していた。それでもフラウから見た卑弥呼の容姿は、フラウより2〜3歳しか年上にしか見えない。

 長い漆黒(しっこく)の黒髪、切れ長の大きな黒曜石(こくようせき)の瞳、意志の強よそうな引き締まった形の良い唇と真白い肌が彼女の美しさを一層きわだたせている。


 卑弥呼は、邪馬台国の女王であるばかりではなく、邪馬台国屈指の呪術(じゅじゅつ)の使い手でもある。過去の多くのデータから、これから起こりうる出来事を予測する、いわゆる未来を見ることなどもしばしば行っていた。

 それは卑弥呼の口から(つむ)がれる不思議な古代神話時代の呪文を(とな)えることにより可能となっているようである。

 しかし、それでもこの時点でフラウ王女の知り得ている卑弥呼は、彼女のほんの一部分の能力にしか過ぎなかったことを後々知ることとなる。

 

 この二人が、偶然なのか必然なのか或いは神の悪戯(いたずら)なのか、たまたま出逢ってしまった。そして、トライトロン王国のフラウリーデ王女は、これからハザン帝国侵略軍3万をたった7,000名の王国軍で迎え討とうとしていた。

 

 フラウリーデは『 龍神の騎士姫 』の呼び名から想像できる様な人物ではない。確かに剣を持たせれば、鬼神(きしん)さえも避けて通るであろうと思えるほどの優れた剣の腕と胆力(たんりょく)加えて瞬時の判断力を持ち併せていた。


 その一方で、通常の生活では両親や妹思いの優しく、むしろ少し頼りないとも思える王女様であった。


 千年以上も生きている卑弥呼にとって、フラウリーデ王女の生きる僅か70〜80年の歳月など、ほんの1時間で終わってしまう程度のわずかな長さにほかならなかった。最初の内は退屈しのぎでたまたま邪馬台国の魔法陣にまぎれ込んで来たフラウ王女に関わり始めた卑弥呼であったが、自分と同じ血が流れているせいか、今ではフラウ王女は卑弥呼にとって義姉妹というよりむしろ本当の家族に近い存在とまでなってしまっていた。


 その卑弥呼はトライトロン王国が今直面しいているハザン帝国からの脅威(きょうい)を全く気にしている風もなく、戦に対する対処法を卑弥呼とともに考えるたびに成長していく義妹を楽しみたいばっかりにフラウ王女に付き合っているようにさえ見受けられた。


 時は、トライトロン王国歴 996年の秋のことである。


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