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龍神の異名持ち女騎士と呪術師卑弥呼  作者: はたせゆきと
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9−23 ハザン帝国飛行船襲来への備え(3)

 城壁を見廻っている歩哨兵(ほしょうへい)の一人が遠眼鏡(とおめがね)の中に黒い鳥の群のようなものを発見した。

 彼はその黒い点が気になり更に遠眼鏡を拡大してみたが、未だそれが飛行船であることまでは確認できなかったので隣にいた二連発鉄砲を持った兵隊に声をかけた。


「何か黒い鳥のようなものが複数見えるのだが、、、」


 それを聞いた射撃兵は自分の鉄砲の照準器で砂漠を念入りに索敵(さくてき)していたが、すぐにラングスタイン将軍に確認の報告を行った。その連絡を受けた将軍は特別に作られた照準器をのぞき込んでいたが、それが間違いなくハザン帝国の飛行船であると確信した。


 この時、城壁守備兵達は昼食の携帯食をちょうど食べ終わっていた。


 やがて、将軍の照準器ではもう黒い点では無く、ハザン帝国で将軍が見た飛行船の戦隊であることが十分に判別できる程度に大きくなっていた。


 時を同じくして、王城の城壁に取り付けられているプリエモール男爵が考案した索敵システムでもハザン帝国の飛行船が20機、モニター画面に王城目掛けて飛来中であることが確認できた。報告は既にフラウリーデ女王にもたらされていた。

 このシステムでは、既に飛行船の形態やその数も明確に確認できていた。


 それから30分も経つと、肉眼でもその数が判別できるようになり、その総数二十機。トライト・オニール王国公安省大佐からの報告と完全に一致している。

 一機も欠けること無くハザン帝国からトライトロン王国まで飛行してきたことを考慮すると、ハザン帝国の飛行船の完成度はそれなりに高いと考えることができた。


 エーリッヒ・バンドロン将軍は照準器から見える飛行船の時間による大きさの変化から、ハザン帝国の飛行船が城壁付近に接近するのは夕暮れから夜にかけてであろうと判断した。そして、ハザン帝国が夕闇に紛れて王城や王都攻撃を仕掛けてくるであろうこと想定した。

 

 一方、ハザン帝国飛行船の旗艦(きかん)に乗船しているココナ・リスビー上級大将は、遠眼鏡でトライトロン王国の王城を確認していた。

 ココナ上級大将は王城を確認すると不敵に笑いながら、やっと積年の恨みが晴らせると低くつぶやいた。


 彼の遠眼鏡で確認した王城と城壁には特にトライトロン王国の迎撃体制が仕掛けられているところまでは確認できなかったのか、自分の急襲の成功を確信していた。


「全機、十分の二減速。そのまま前進 」

 ココナ・リスビー上級大将の号令が全機に伝えられ、一斉に進行速度が少し低下した。飛行船は雲一つない空で夕日を受けて一際(ひときわ)鮮やかに光り輝き、一糸乱れぬ飛行編隊は正に賞賛に値するものといえよう。


「今夜で、絶対に全てを終わらせる。憎きフラウリーデ、エーリッヒそれにラングスタイン!今こそ積年の怨みを晴らしてやるからな。覚悟して待っておれ 」


 哄笑(こうしょう)するココナ・リスビー上級大将の肉の薄い顔は何かに取り()かれたように妖しく青白く光ってみえた。

 ハザン帝国軍の飛行船は二機の旗艦を先頭に綺麗な台形を形成しながら進んでくる。その陣形の乱れの無さから、操縦訓練は行き届いていることが想像できた。


 ハザン帝国の飛行船の編隊状況を見ながら、ラングスタイン将軍は、洗練された編成だ! ココナも無能な将校では無かったようだな。頭を使うところさえ間違ってさえいなければとつぶやいた。


 今の編成のまま城壁まで飛行してくれると殲滅(せんめつ)するのは簡単だが、恐らくそう上手(うま)くはいかせてくれるはずはなかった。

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