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龍神の異名持ち女騎士と呪術師卑弥呼  作者: はたせゆきと
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9−18 ハザン帝国迎撃の最終準備

 トライトロン王国の王都街の北側に広がるそうは高くはない山間部には春の花が今が盛りの如く咲き(ほこ)っていた。それにもかかわらず、その水面下ではハザン帝国の持つ攻撃型飛行船の魔の手が着々ととその最終準備が終わりつつあった。


 フラウリーデ女王は、久しぶりに邪馬台国(やまたいこく)卑弥呼(ひみこ)義姉の声を聴きたくなって、卑弥呼からもらった銅鏡(どうきょう)に向かい呪文を唱え始めた。


 銅鏡の中に映り込んできた卑弥呼の顔はいつもと何も変わらなかった。そのことがフラウ女王にとっては嬉しくとても安心できた。

 銅鏡の中の卑弥呼は、知らせのないのは良い知らせだと言うから特に心配はしていなかったと笑った。


 卑弥呼は天翔(てんしょう)女王に二人目の姫巫女(ひめみこ)が誕生したことを告げた。フラウ女王としては卑弥呼にその赤子の世話を優先して欲しいと考えていた。


「確か、二人目の姫巫女様ですよね 」


 今度誕生した姫巫女は生まれた瞬間から強い霊能力を持っていた。この分だと天翔女王は一人の人間として一生を全うする可能性も生じてきた。天翔女王は幼い頃からその能力故にに卑弥呼の代理としての役目の多くを担ってきた。卑弥呼は可能であれば、そのような彼女には普通の人間としての残りの一生を九郎兵衛(くろべえ)と送くらせてやりたいと願っていた。


 しかし、そのことは裏を返せば、今度誕生した二子目の王女が長命という過酷な運命を辿る可能性があるということにもなる。


「処で、フラウは大丈夫か?」

 フラウ女王は、対ハザン帝国迎撃体制がほぼ完成し、いつでも迎え撃つ準備ができていることを報告した。結局、飛行船や防御武器の開発には、ジェシカとニーナ特別顧問の研究者への確実な導きが功を奏し、必要な迎撃用の兵器は既に完備できていた。


「そうなるとハザン帝国の飛行船による攻撃に関してはあまり心配する必要はなさそうじゃな 」


 ただ一つだけの懸念は、ハザン帝国迎撃戦中にシュトクハウゼン・ゼークスト公爵家がそのどさくさに紛れて後背を突いてくる可能性であった。だがその不安に対してはラウマイヤーハウト・リンネ侯爵家に防御武器を提供し牽制する準備が着々と進められていた。


「マリンドルータ・リンネとグレブリー・シュトライト殿との慣例を破っての結婚を認めたフラウの功績と言えるかものう。マリンは勿論のことリンネ侯爵殿と言い、グレブリーもフラウにとって強力な後ろ盾となってくれるのは確かじゃ!」


 これまでのフラウ女王であれば、ここまでの用意周到な戦略思考は持っていなかったはずである。どちらかというと、ぶっつけ本番で土壇場に強いことでこれまで乗り切ってきた。

 最近の用意周到な戦略構想は、卑弥呼の思念がフラウの脳の中に流れ込んできているのがその主な理由であるのは確実であった。


「お主自身がそれだけ成長したということの(あかし)じゃろうて!」

・・・・・・・!

「姫巫女の『 100日(ももか)の祝い 』が終わったらわしもトライトロン王国に飛ぶつもりじゃが、万が一不測な事態が生じたら迷わずわしを呼べ。時間差無しで王国入りするから、、、」


 卑弥呼との話が終わったフラウリーデは、自分の後ろに立っているマリンドルータの方を振り向くと、一両日中にリンネ侯爵とグレブリー侯爵代理に会うための調整をとってくれるようにと頼んだ。


「分かりました。養父もグレブリー殿も王国の役に立てると喜んでくれると思います。可能であれば、明日にでも出仕するように伝えます 」


 フラウリーデ女王は、自分がお膳立てをしたとはいえ、事実マリンドルータがグレブリー大臣と結婚してくれて強力な味方を得ていた。そして彼女は数万の兵隊を得たのと同じ位安心できると呟いた。


「勿体無いお言葉です 」


 翌日の午後、リンネ侯爵とグレブリー侯爵代理は玉座の間に通され、応接の間で、フラウリーデ女王とマリンドルータ近衛騎士隊長が現れるのを待っていた。

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