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龍神の異名持ち女騎士と呪術師卑弥呼  作者: はたせゆきと
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9−17 ラウマイヤーハウト・リンネ侯爵家の決断

 今回のハザン帝国との(いくさ)において、最も警戒すべきはそのどさくさに紛れて、シュトクハウゼン・ゼークスト公爵家を中心とする貴族連合がトライトロン王国の後背を虎視眈々(こしたんたん)と狙っている可能性に関してであった。その牽制の意味め考えるとラウリーデ女王はより強気で押し進めたかった。


 それでも独りよがりのあのゼークスト公爵が、王国の勝利の可能性が高いことを知ったところで王族転覆(てんぷく)の野望をあきらめるとは思えなかったが、それでも事前に適度なジャブを与えることは、援護射撃になることは間違いなかった。


 勿論、ゼークスト公爵家に対する具体的な対応は別に準備が行われていた。

 それはこの後、間をおかずに完成するであろう大筒5門、2連発式鉄砲50丁、加えて爆薬付きの強弓(ごうきゅう)100丁をグレブリー侯爵代理の結婚祝いとしてリンネ侯爵家に無償で提供することについてフラウ女王は既に約束しており、その準備も着々と進んでいた。


 ラウマイヤーハウト・リンネ公爵もこれを機に確実にゼークスト公爵家と半目することは避けることはできないと完全に腹を(くく)っていた。そのため、ハザン帝国との(いくさ)の最中に、仮りにゼークスト公爵家が良からぬ行動を起こしたとしても、それに対抗する覚悟は十分にできていた。


 ゼークスト公爵が王都に素早く攻め入るには、リンネ侯爵領地を経由する必要がある。フラウ女王はハザン帝国との飛行船による(いくさ)は、最長3日だと考えていた。その3日間をリンネ侯爵家が(しの)いでさえくれれば、直ちに大義名分を以ってゼークスト公爵家を中心とする貴族連合を叩き伏せることが十分に可能だとも踏んでいた。


「恐らく、ゼークスト公爵もそこまで愚かではないだろうから、むやみには動かないとは思うが、、、」


 それでも公爵が思い上がりの激しい性格だけに最終的に彼がどう出るかは不明である。そうなると、それなりの事前対応はやはり必要とフラウ女王は考えていた。

 妹のジェシカ王女は、これまでのフラウリーデ女王からは想像もつかない遠大な構想を持って、今回の(いくさ)に挑んでいることを知って、姉の大胆さに驚嘆していた。


 確かに邪馬台国(やまたいこく)卑弥呼(ひみこ)と出会ってからは自分の中に大きな変化が生じ始めたとそう感じていた。発想が目の前のものから一歩引いたところで、第三者的に俯瞰的(ふかんてき)な見方をもできるようになっているようである。


 邪馬台国の卑弥呼は常々フラウ女王に言っていた。国は民のものであって決して一部の王族や貴族のものではない。にも関わらず、いざ戦争となると真っ先に被害を受けるのは国政などには全く野心を抱いていない国民であると、、、


 トライトロン王国では未だ経験はないが、普通、戦争時には国民の多くが徴兵(ちょうへい)されることになる。実際ハザン帝国軍隊の7割は一般市民だという。フラウ女王の目下の目的は、ハザン帝国を完膚なきまでに叩きのめし、そして、王国の貴族連合を統一し、少なくとも自分の孫の代までは戦争のない王国造りをしたいと考えていた。


「ジェシカ!、ニーナ!それから男爵殿!私の夢にしばらく付き合ってはくれないか?」


 フラウ女王のとりあえずの夢はプリエモ王国と手を繋いで自分の将来の夢の実現に当たりたいと考えていた。


 実際、フラウ女王の夢が全くの荒唐無稽(こうとうむけい)ではないことを、ジェシカ王女やニーナ蔵書館長の及び王国科学技術省の長官達を中心とする研究員達が既に証明してくれていた。

 フラウ女王はハザン帝国との大戦争を前に控えていても、その思いは戦争結末の1歩も2歩もその先を見ていた。


「リーベント男爵殿!トライトロンとプリエモ両王国を結ぶ夢の(かけ)け橋、蒸気機関車の開通の実現に何としても力を貸して欲しい 」

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