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1−28 黒い水の秘密

 フラウ王女が石油の持つ功罪を知らなかったくらいであるから、王国の将軍達は石油の持つその力を知るはずもなかった。

 そのため彼らを説得するにはかなり苦労しそうであるが、フラウ王女が言い出せば、無闇(むやみ)な反対があるとも思えなかった。

 それでも、快く納得してもらうにはその使用方法をじっくりと考える必要があった。

  

 フラウは、黒い水をどの様に使えば、圧倒的多数の敵軍に大きく(くさび)を打ち込むことができ、かつ敵軍に回り込まれないようにできるかを、あらゆる自分の経験や知識をかき集めながら考えていた。


 普通、動物は本能的に火を恐れる。それは、兵隊や軍馬であっても決して例外ではない。この時代、火刑(かけい)は最も残酷な刑だとして一般によく知られている。

 もし突然に地面が燃え盛る炎でおおわれてしまえば、人馬は必ずそれを避けるために大きく後退するか、逃げ出してしまうはずである。


 そこまでの思考が行き着いた時、フラウ王女の頭の中には燃え盛る炎の中で、立ち上った業火(ごうか)と熱を避ける為に敵兵が雪崩(なだれ)を打って列を乱しながら後退していく様子が浮かんできた。

 しかし大まかな構想は予想できたものの、今一つその実感が伴わない。


 フラウ王女は、その理由がどこにあるのかを考え始めた。卑弥呼(ひみこ)が洞窟内で黒い水を見た時、もし邪馬台国(やまたいこく)に石油があれば大和国(やまとのくに)全域を統一できたであろうと考えていたことを思い出した。


 あの黒い水で大和国の統一??


 フラウ王女は最初のうち、黒い水が炎を上げて燃えるから敵を恐怖させることができると考えたが、黒い水の持っている本当の力を自分はまだ全く理解出来ていないことに思い至った。

 作戦を決める前にあの黒い水の本当の力をどうしても知る必要があるような気がして、実際に自分で黒い油を燃やして見ることにした。


「お姉様!黒い水をそのように一杯集めて何されているのですか?」

 妹のジェシカ王女が不思議そうに覗き込んできた。

「ああ、ジェシーか?」


「今回のハザン帝国との(いくさ)に黒い水を使いたいと思っているのだが、、、」

「黒い水に火をつけてハザン国兵を燃やしてしまうのですか?」

「ハザン国兵は3万だからな、、、黒い水を()いた程度ではどうにもならないだろうな?」


 ジェシカ王女は、その黒い水を見ながら、この黒い水は石油という物ですよねと(つぶや)いた。フラウ王女は妹のジェシカ王女がその黒い水のことを知っていることに驚いた。確か、卑弥呼があの洞窟内で自分に教えてくれた『 石油 』という言葉を既に知識として持っているようである。


「何んだ!ジェシーは知っているのか?石油のこと!」

「私の読んだ座学の本の中では、この黒い水を入れたものを温めるか火をつけると、音を立てて激しく爆発すると書いてありました 」


「それはどういう意味なんだ?」


「ここからは私の想像ですが、この黒い水からは色々な燃えやすいものが出てきているのではないかと思っているのです。例えば黒い水を温めると燃えやすいものがたくさん発生してくるのではないかと、、、」


「ジェシーは何でも知っているな 」


「お姉様!この二つの桶でちょっと試して見ませんか?」

 

 ジェシカ王女は、二つの(おけ)に黒い水を入れ、その一方の桶にだけ(ふた)をした。

 最初は、蓋をした桶の方を温める方法が無いかを考えたが、自分が学んだ座学の記憶が正しいとすれば、城内で桶を温めるのは可成り危険があると感じていた。


 ジェシカ王女には、確か黒い水は普通に置いていても燃えやすい何かが常に発生していると書いてあった様な記憶があった。そこでジェシカはしばらく放置することにし、姉を誘い侍女のアンジェリーナを呼んでお茶の準備をさせた。二人は紅茶とお菓子で1時間ばかり話し込んだ。

 フラウは、早く黒い水の使い方を考えないとと焦っていながらも妹の話に付き合っていた。


「さあ、そろそろ良い頃かも!」

「何が?」

「あの黒い水 」

「ジェシー!もう忘れていたんじゃ無いのか?黒い水のこと 」

「お姉様!幾ら何でもそれはひどいでは無いですか?お姉様が真剣に考えているにに、私が忘れる訳は無いではありませんか?」


 二人は黒い水を置いた場所に戻り、近くに居た衛兵に火を持って来させた。

「ジェシー!処で、この火をどうするのだ?」

「お姉様!最初に蓋をしていない桶の方に火を近づけてください 」


 妹に言われるがままに、桶に火を近づけた。黒い水はボッと言う音を立てて黒い煙と炎を上げて燃え始めた。


「さあ、お姉様これからが本番です。今度はもう一つの桶の蓋を開けて火を付けてください!」


 フラウは言われるがままに、桶の蓋を取り火を近づけた。今度は凄い音と共に、火柱が5m程上がって燃え始めた。フラウは、一瞬のうちに身の危険を感じてジェシカの身体の上に覆い被(おおいかぶ)さった。


「お姉様!有難う御座います。でも大丈夫です。もう、隣の桶と同じ位の炎になりました 」

「有難う!ジェシー。黒い水がどんなものか少し分かったような気がする 」

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