8−25 王子と王女への土産
帰りがけ、フラウリーデ女王の足が急に止まった。そして、彼女はある物に目が釘付けになっている。そこのコーナーに並べられているのは子供の玩具であった。
ゼンマイ仕掛けの玩具である。ゼンマイを巻き手を離すと薄い金属の上にペンキで着色された兵隊人形が歩き始めた。
そして別の場所を見ると、ジェシカ王女を思わせるような顔形をしている人形があった。その人形は横に抱くと次第にその大きな瞳を閉じ、『 私、眠いわ 』とつぶやき、抱き起こすと瞳を開いで『 おはよう 』 、しばらくして 『 お腹すいたわ 』と声を出した。
ニーナ・バンドロンはその兵隊人形と女児の人形を手に取ると、この人形はリーベント男爵のからくり人形のようですと言いながら、その人形のあちこちを見ていたが、P.R.(リーベント・プリエモール) のイニシャルを見つけ出しフラウ女王に見せた。
「お姉様!バルタニアン王子とヒルデガルド王女の土産に買っていきましょう 」
「喜んでくれるかな?」
「利発な二人です。お姉様が土産に持って帰ればとても喜んでくれるのは間違いありません!」
ジェシカ王女は直ぐに店主を呼ぶと、土産用として包装してくれるように頼んだ。
翌日、プリエモ王国の訪問者4人は宿泊先の食堂でゆっくりと朝食を済ませると再び馬に跨り午後過ぎに王都街に着いた。
前回王国訪問時にジェシカ王女がホッテンボロー王子とフランシカ王女と一緒に入ったという王族や貴族専用の食事処に席をとり、プリエモ王国の宮廷料理に舌鼓をうった。
店の主人はジェシカ王女のことをしっかりと記憶していたとみえ、フラウ女王が料理を注文すると直ちに顔を出し、これは、これはトライトロン王国の王女様!良くおいで下さいましたと挨拶をし始めた。
「もしかしたら、お隣のお方はフラウリーデ女王様では御座いませんか?女王様のお姿はプリエモ王国でも多くの民が存じております。いや間違いありません。その剣を履いた凛としたお姿、疑いようもない『 龍神の騎士姫 』様そのものです 」
「有難うご主人!恥ずかしいからそこまでにしておいてくれ。それに今日はお忍びでのプリエモ王国の王様夫妻への訪問だ。私達の訪問のことについては口外しないでくれないか 」
プリエモ王国王都街での昼食を済ませた一行は、再び馬に跨りプリエモ王城をを目指して急いだ。
「お姉様!もし今回プリエモ王国との間で蒸気機関車が開通できたら、1日で両王国間の行き来が可能となるのですね。夕方機関車に乗ったら翌日の朝にはそれぞれの王国で仕事や観光ができるように、、、」