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5−33 王国科学技術省設立(2)

 フラウ王女は、リーベント・プリエモール男爵が発明した男爵邸とプリエモ王城を結ぶ『 遠話器 』や『 喋るカラクリ人形 』さらに『 お茶を運んで来るカラクリ人形 』などに関してもその詳細を出席者に話して聞かせた。

 事実、彼女自身彼の発明品の数々を見ながら、もし彼に不可能なことなら、他の誰にも当分は達成できないだろうと確信していた。それは、同行したニーナ蔵書館長も同様であった。


 ラウラリール・ゴーマント産業大臣私は、フラウリーデ王女に自分は決して彼らを非難しているわけではないと少し額に汗を滲ませながら弁解した。彼の本音はそれらの噂話は現に実在していることを皆にもあらかじめ知って欲しかったため、あえて苦口を発言していた。


 フラウリーデ王女は、自分こそが熱くなりすぎてつい強い口調になってしまったことをゴーマント産業大臣に()びた。しかし現実にそれくらい王国は技術の進化に出遅れていることを皆に具体的に知って欲しかったのが本音であった。


 実際には、フラウ王女が決心したその瞬間から、王国の重鎮達は既に同じ船に乗っていることになる。もうこの頃になると、フラウ王女は単なる『 龍神の騎士姫(りゅうじんのきしひめ) 』 という『 戦神(いくさがみ) 』としてだけではなく、トライトロン王国の産業の発展に絶対に欠くことのできない存在と、誰もが認め始めていた。


「卑小私めもトライトロン王国の産業発展のた最大限の協力させ頂くよう、お願いいたしますフラウリーデ王女様! 」


「有難う。ラウラリール・ゴーマント産業大臣。王国の現状を理解してくれて、、、」


 フラウ王女は、トライトロン王国が食料を始めとして生活物資が豊か過ぎて、これまで産業の発展に大きく頼る必要が無かったことが今となっては仇となって、科学や化学の発展を極端に遅れさせてしまった事実を先ずは皆と共有しておきたかったのが本音であった。


 実際にリーベント・プリエモール男爵の発明品の数々をその目で見たフラウ王女は、飛行船建造自体については、正直もうどうでも良いとさえ思い始めていた。


 もちろんハザン帝国からの飛行船の脅威(きょうい)が消えてしまったわけではないので、当然表向きは対ハザン帝国に対抗するための飛行船開発が優先されるのは仕方のないことである。


 それでも、もうフラウ王女の頭の中には、あの科学と化学の専門家三人とジェシカ王女とニーナ蔵書館長の二人が中心となって技術革新を始めたら、飛行船の開発に端を発し、王国のあらゆる産業に新たな風を吹き込んでくれるという強い確信が持てていた。


「今からのこの世界は、産業の発展こそが国同士の雌雄を決定付けると私は信じている。経済産業大臣!どうだろう。信頼できる部下を2〜3人程連れて、一度プリエモール男爵領を訪ねてみないか?手筈(てはず)は全部私が整える 」


「私がプリエモ王国を訪問ても構わないのでしょうか?」


「百聞は一見にしかず!だ(けい)にとっても損な話ではないと思うが。必要なら、エリザベート女王から命令を出してもらうが、、、?」


 ゴーマント産業大臣は額に浮かんだ汗を拭き取りながら、フラウリーデ王女の言で十分だと答えた。そして、自分も長いことよその新しい文化に触れたことがないので、周囲から取り残されてしまっているようで心配だったと付け加えた。


「判った、私の不安を理解してくれて有難う。早速段取りをつけるから2〜3日待ってくれ! 」


 フラウ王女は、今度はシンレイダ・ハウゼン内務大臣の方に向きなおると、プリエモ王国に行く前に彼に依頼していた王国科学技術省設立建設等の費用に関する検討結果について質問した。


 フラウ王女のハウゼン内務大臣への問いに、スチュワート摂政は王国全般の資産管理の責任者である内務大臣に研究施設設立費用とその後の維持費に関する費用概算を皆の前で報告するように命じた。


 ハウゼン内務大臣の報告はまだ概算の状況ではあったが、現代界ではそれで十分と思われた。

 研究所の建設費用におおよそ五千億ビル、研究者の雇用費用として年間千億ビルと程度で、5年間で合計すると、大まかに一万億ビル程が予測されていた。またその費用の捻出は王国現保有財産で十分に可能な範囲と判断していることも併せて付け加えた。


「有難う。ハウゼン内務大臣!卿もゴーマンと経済産業大臣と一緒にプリエモ王国に同行してみればどうかな?」

「判りました、私も有り難く同行させて頂きとうございます」


「スチュワート摂政殿!いかがでしょうか?私は可能な限り急ぎで研究所の建設準備に当たりたいと思っていますが、ご裁可願えますか?」


 フラウ王女の王国科学技術省設立の催促に、スチュワート摂政はエリザベート女王と顔を見合わせた。ジェシカ王女とニーナ蔵書館長が作成した報告書から、スチュワート摂政はフラウ王女の考えについては予めエリザベート女王とも相談し、皆の大きな反対がなければ、進めるのを許可しようと決めていた。


 スチュワート摂政は、再びエリザベート女王の顔を見ながら、飛行船開発に関する技術的な面についてはジェシカ王女とニーナ蔵書館長に、研究所の建設と必要人材の雇用については、フラウリーデ王女に一任すると明言して詮議を打ち切った。

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