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5−31 若い二人の恋バナ

 リーベント・プリエモール男爵との出逢いにより、フラウリーデ王女は今回の飛行船の開発研究はこれからのこの世界の単なる進化の一過程に過ぎないのではないかと考えるまでになっていた。それ位、彼女はプリエモール男爵家で見た見知らぬ技術に感激していた。

 正にプリエモール男爵とニーナ蔵書館長がこれから創り出してくれるであろう推進機関こそが、これからの世界の産業を大きく変えることになるではないだろうかと、なぜかそう確信できていた。

 『 東の日出る国(ひがしのひいずるくに) 』の蔵書に記載されている内容からしても、それは確実に根拠のある想像と思われた。

 

 ここはジェシカ王女の部屋。

 ニーナ・バンドロン蔵書館長は、プリエモ王国のホッテンボロー王子がジェシカ王女をとても大事にしてくれていたことを思い出していた。


「ジェシカ王女様のことが本当に大好きなのですね!ホッテンボロー王子様は、、、」

 ニーナは、そう言いながらも、何か別のことを思い出しているような素振りを見せた。ちょっと引っ掛かりを覚えたジェシカ王女は、プリエモール男爵家で何かあったのかとニーナに尋ねた。


 ニーナは少しの間逡巡(しゅんじゅん)していたが、やがて意を結したように男爵家訪問の際、推進機関の研究については祖父のプリエモール男爵ですら一目置いていた二十歳くらいのドルトスキー・プリエモールの白皙(はくせき)で端正な横顔を思い出していた。そして思い切ってジェシカ王女に男爵家での出来事を話し始めた。


 その彼が、ニーナの書いた推進機関の模型図を見るや否や、トライトロン王国へ男爵と共について来ることを即座に決心し、握手を求めて来たことを思い出すと少しその頬を赤らめた。

 

「ふーん!そんなことがあったんだ。それで、ニーナの胸がときめいたとか?」


「最初は急なことだったのでびっくりとても驚いたのですが、しばらく経っても、何か胸の当たりのドキドキが止まらなかったのです 」


 ニーナ・バンドロンはそう言いながら彼の端正な顔と握手を求められてきた時の手の温もりを思い出していた。すると再び彼女の胸の辺りが何故かボーッと熱くなってくるのを感じていた。

 これまで座学一筋に打ち込んできたニーナ・バンドロンにとって全く初めての経験であった。


「ニーナ!それって、間違いなくドルトスキー様に一目惚れしてしまったのじゃないの?これまでに若い男性を見てそんな経験は無かったの?」


 事実、ニーナ・バンドロンはハザン帝国においては、男性といえば父かラングスタイン大将ぐらいしか接したことが無かった。

 学校も男女別々の学校だった。

 そういう環境に恵まれなかったということもその理由かも知れないが、それより彼女自身男性と知り合うことより座学への興味の方が圧倒的に楽しく感じていたのも事実あった。

 

「ジェシカ様もボロー王子様にお会いになった時、胸の中が熱くなりましたか?」


 そういえばと言いながらジェシカ王女は、姉の婚約披露の時に久しぶりにホッテンボロー王子に会った時の胸のワクワク感を思い出していた。フラウ王女が自分に気をつかってホッテンボロー王子と散歩をするように勧められたとき、とても嬉しく感じたことも、、、。

 そして今回、プリエモ王国で改めて王子と会い、その気持ちが何であったかを確信し、今では将来の結婚を意識するようにまでなっていた。


「ボロー王子様とのご結婚を考えられているのですか?」


「もちろん今直ぐというわけではないけど、そうなったら良いなと思っている。これからはボロー様もトライトロン王国に時々来てくれると約束をして下さいましたし、、、 」


 この時、ニーナはジェシカ王女とホッテンボロー王子が両想いであることを少しうらやましく感じていた。それに比べると、ドルトスキーが自分のことをどう思っているのかわからないことに、いくらかの失望を感じないわけにはいかなかった。

 ニーナのその少し不安げな表情を見ながらジェシカ王女は、その心配はいらないと笑い飛ばした。


「その心配はいらないんじゃない!科学技術に詳しくて、美人のニーナを好きにならない男性はいないと思うわ。彼も科学者でしょう。ニーナのメモを見てこの王国に来るのを決意したぐらいだから、絶対に大丈夫。私が保証するわ!」


 恋する若い二人の女性の『 恋バナ 』は際限なく広がっていく。夜が更けても、二人の夢は大きくどこまでも拡大していくばかりであった。


 それでも、一夜開ければハザン帝国の飛行船に対抗するための王国科学技術省の設立、それに飛行船建造の第一歩がいやでも始動することになるだろう。

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