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5−26 二つの王国

 キングスタット夫妻は、かっては王子や王女を連れてトライトロン王国をよく訪問していたこともあり、ジェシカ王女に関しては、小さい頃からその性格などある程度は分かっていた。そして二人が一緒になってくれたら嬉しいと考えるようになっていた。


 もちろんトライトロン王国の女王夫妻もプリエモ王国のホッテンボロー王子であれば、願ってもない良縁だと考えていた。二人が婚姻を結ぶことによって、両王国の関係は益々盤石なものとなり、両王国にとって政治的な意味も含めて理想的な婚姻相手ということができた。


 結局、今度のフラウリーデ王女の結婚式の折に、プリエモ王国の方からトライトロン王国のエリザベート女王夫妻に息子とジェシカ王女二人の婚約を申し入れようと考えていた。


「やはり、この結婚は王子側から申し入れすべきことでしょうから、、、その前にボロー王子には話しておく必要がありますが、まあ、彼が反対する理由はないでしょう 」


 フラウ王女は、今後の飛行船開発を手始めとして多くの技術的な成果が得られるようになった場合、両国の間に縁戚関係が成立していれば、それぞれの王国内での考えもまとめやすくなり、両国間は技術の成果を巡って無用なトラブルを抱えることも少なくなるはずと考えていた。


 そうなると、両国の政治・経済面に大きく寄与できることになる。確かに、この2大王国が正式に縁戚関係を結ぶこととなると、もう他の国々ではおいそれとはちょっかいを出せなくなるのは確かである。


 トライトロン王国の飛行船開発は単にハザン帝国への牽制であり、その研究過程で得られる色々な成果を産業発展や観光業の促進に向ける方がむしろ重要な課題だとフラウ王女は最近考えるようになっていた。


 とはいえ、その後の調査でハザン帝国の飛行船が戦争用の兵器として開発されていることが歴然となった今、取りあえずの第一目的はハザン帝国の飛行船への対抗手段となってしまうのは仕方のないことであった。


 それでもトライトロン王国の第一王女フラウの本当に目指すところは、この世界の産業の発展であった。もしプリエモ王国とトライトロン王国が産業発展に関する同盟を結ぶようなことになれば、その関係はより強固となり、近隣諸国をも巻き込んで世界の更なる産業の発展を期待することが可能となるのは確実と思われた。


 フラウ王女はキングスタット国王夫妻に、妹のジェシカ王女が化学技術者としての(たぐい)まれなる資質を有していることについて話し始めた。

 本来ジェシカ王女の性格から考えると、王国の大きな危機でなければ彼女のその能力を自分から発揮することはなかったのだろうが、ハザン帝国の飛行船によるトライトロン王国への侵略計画を知ると、友人のニーナ蔵書館長と技術的側面から王国を守ることを決意したようである。


 そして今ではこの二人がトライトロン王国が飛行船を開発する上において絶対に欠かせない存在となっていることも併せてフラウ王女はキングスタット国王夫妻に話した。

 フラウ王女はジェシカ王女が科学や化学の(たぐい)まれなる能力について、キングスタット国王夫妻が必ずしも快く思わないのではという危惧(きぐ)を持っていた。そこで少し言い訳じみた話内容になってしまったのだろう。


 ジェシカ王女は本来、普通に本を読んだり、刺繍をすることが好きな王女で、今回のハザン帝国からの脅威がなかったら表に出てこなかった才能だったのかもしれない。フラウ王女は当初邪馬台国(やまたいこく)卑弥呼(ひみこ)がジェシカ王女をそういう風に仕向けたのかとも考えていた。

 しかしよく考えてみると実際にはジェシカ王女の本来持っていた能力であって、卑弥呼はその助力をしただけのようである。


 確かジェシカ王女が『 錬金術(れんきんじゅつ) 』に興味を持ったのは、邪馬台国の卑弥呼がジェシカ王女の脳に介入するよりずっと以前の話である。


 フラウ王女がプリエモ王国国王夫妻と話している間に結構な時間が経過したようである。応接室のドアの前で、執事が王子達3人の帰りを告げた。恐らく、四時間位話し込んでいたようである。


 帰ってきたホッテンボロー王子とジェシカ王女の顔は少し上気しているようにも見えた。用心棒付きのデートではあったが可成り充実した時間を過ごせた様子が伺えた。

 恐らく、ラングスタイン大将のことだから、二人から見えない場所で確実に暴漢に対する監視は怠らなかったはずである。


 フラウリーデ王女とフレデリカ王妃はお互いに顔を見遣(みや)り、意味ありげに微笑んだ。


 その日の夕食の席で、フラウ王女とニーナ蔵書館長はキングスタット国王の実弟であるナイトール・シューイ・リンカ・オルマンの紹介を受けた。ナイトール内務大臣は兄のキングスタット王が偉丈夫(いじょうぶ)であるのとは異なり、一見学者を思わせるような色白の顔に、綺麗(きれい)に切り揃えられた口髭(くちひげ)を生やしていた。


 リーベント・プリエモール男爵に会いたいと申し出てきたフラウ王女とニーナ蔵書館長を一目見て、可成り驚いた顔を見せた。まさか男爵に会おうとする人物がうら若い女性二人だったのが不思議に思えたのだろう。

 それでも少しの間二人と話をしているうちに十分に納得できていた。

 

「それにしても、ニーナ殿は、科学に関し可成り極めておられるようですな 」


 プリエモール男爵は、王国内には自分の話を理解してくれる人物が居ないと常々嘆いていた。ナイトール内務大臣も科学に関しは一通りは理解しているつもりなのだが、男爵の場合、常に遥かに先を見据えた言動や研究内容が多かった。

 そのこともあってか、周りの科学者とは()りが合わないのかもしれなかった。


「トライトロン王国ではとても変わったお方だと聞こえてきておりますが?、、、」


 確かに、プリエモール男爵はプリエモ王国内でも王国一の変人として有名であった。しかしニーナ蔵書館長であれば、男爵との話も弾むのではないかとナイトール内務大臣は内心考えていた。


 フラウ王女は精一杯プリエモール男爵を誠意を以って説得するつもりであることをのべ、ナイトール大臣にその後押しを依頼した。

 

「いやー!ニーナ殿は失礼ながら15歳の娘さんと話している感じではないですな。私の娘も15歳になるのですが、未だ未だ子供子供しておりますよ 」

 

 確かに、技術面に関しては大の大人も顔負けの知識を以っているものの、精神年齢は年相応で、プリエモ王国に来る途中で出店のガラス細工の飾り物を手にとりながら、ジェシカ王女とキャッキャと喜んでたことをフラウ王女は笑いながらナイトール大臣に話した。

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