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5−25 王子と王女

 キングスタット国王の紹介してくれたリーベント・プリエモール男爵と懇意(こんい)にしているという大臣というのは、国王の実弟であった。そのことを知ったフラウ王女は、今回のプリエモ王国訪問の主な目的がほぼ達成されたのを予感した。


 王族が貴族に依頼の仲介をするということになると、余程敵対でもしていない限り早々断るのは難しいだろうと考えられたからだ。

 しかしそれでも、プリエモール男爵が極度の変人だといううわさの人物であるため、状況によっては断られないとも限らないが、それでも可成の後押しになることだけは確信が持てた。


 事実、その男爵は可成りの変人というか学者特有の気難しさであちこちで問題を起こしている人物であるとの情報をフラウ王女は、この時未だ知り得ていなかった。


 一方、ニーナ蔵書館長は男爵が本物の学者か技術者である限りトライトロン王国の申し入れを断る訳がないと自信満々であった。恐らく、それは真の武人同士が武術に関して相手の力量が分かり合えるように、技術者同士だと分かり合える何かがあるはずと信じていたからであろう。


 フラウ王女はニーナ蔵書館長のこれまでの行動を見たり言動を聞いたりして、十分に信頼に値すると感じていたので、今回男爵へのアプローチは全てニーナに任せて見ようと考えていた。

 

 プリエモール男爵に関する話が一通り終わると、キングスタット国王夫妻は何かを話したがっていることがフラ王女ウにも伝わってきた。しかし中々最初の取っ掛かりがつかめないのか、世間話があっちにに飛んだり、こっちに戻ってきたりしていた。


 フラウ王女は、 ニーナもジェシカと一緒にプリエモ王国の首都見学に着いて行かせたかったのだが、ホッテンボロー王子とジェシカ王女との二人だけにしてやりたかったとキングスタット夫妻に誘い水をかけてみた。


 実はその王子のことなのですがとフレデリカ王妃は話の切っ掛けをやっと見つけたようである。


「ホッテンボロー王子様が如何(どう)かなされたのですか?」


 国王夫妻は顔を見合わせながら、最近王子がジェシカ王女と手紙のやりとりをしており、その手紙を見ながらニヤニヤしたり、急に黙り込んだりすることが多くなり、少し気になっている様子であった。それでも息子も19歳、あれこれ聞き出すのも(はば)られていたので、フラウ王女の意見を聞きたかったようである。


 二人が手紙のやり取りをしているのは当然姉のフラウ王女は知っていた。ホッテンボロー王子からの手紙が来ると、ジェシカ王女はそれを何度も何度もそれを繰り返し読みながら、頬を上気させてぼーっとしていることが多かったのを思い出していた。


「結婚でも申し込むか?」


 フラウ王女が揶揄(からか)うとジェシカ王女は怒り始めたが、その割には満更でも無さそうにうっとりとして、ボロー王子の小さい頃の話をあれやこれやとしつこく聞いてきた。

 確か、当時ジェシカ王女は未だ5歳の頃だったので、恐らくその時分の記憶が余り残っていなかったのだろう。


 今は飛行船の調査に専念することで、その想いを無理に忘れようとしている風にも見えた。

 フラウ王女にしてみれば、自分自身が恋愛の経験がないため、ジェシカ王女の本当の気持ちを明確に計り知ることはできないでいた。


「私達の結婚式に国王様ご夫妻が王国にお見えの際にボロー王子様とジェシカとの将来のことについての話し合いの機会を作ってみてはどうかと話しておりましたところです 」


 フラウ王女が今回、プリエモ王国訪問にジェシカ王女を同行させたのにはそういう理由もあった。プリエモ王国までの道中を心配した両親も王国屈指の剣の使い手が3人も同行するのに思い至り許可を出した。

 ジェシカ王女の思いを両親もある程度把握していたからであろう。


 ジェシカ王女にもそろそろ結婚話が出始める年齢である。

 両親は常々ジェシカ王女を政略結婚の道具にだけはしたくないと思っていた。実際、フラウ王女がクロードとの婚約を発表したため、王国内での貴族の一部がジェシカ王女との政略結婚を画策しているとの噂話が両親の耳にも聞こえて来たりしていた。


 女王夫妻もジェシカ王女の結婚に関する無責任な噂話(うわさばなし)には頭を痛めていたが、フラウ王女の婚約披露パーテイにプリエモ王国のホッテンボロー王子が同行してきたことにより、その時以来ジェシカ王女の様子にも徐々に変化が生じてきていた。その意味では女王夫妻にとってもむしろ歓迎すべきことだと喜んでいたようである。


 事実、プリエモ王国のホッテンボロー第一王子であれば両王国の関係と王国同士のバランスから考えても相応の相手だとフラウ王女もそう考えていた。


 さすがに、父スチュワート摂政はジェシカ王女を手放すことそれ事態に多くの戸惑いがあったものの、大事な娘を生涯王城に閉じ込めて置くつもりですかとのエリザベート女王の一言で我にかえり、今では、同格で最友好国のプリエモ王国の第一王子であれば、願ってもない縁談だという考えでまとまっていた。

 

 フラウリーデ王女の話を聞いているうちに、キングスタット夫妻は最近のホッテンボローの不可解な行動が理解できたのか、王子がジェシカ王女に恋をしてしまったのではないかという予測は確信に変わった。

 そして二人がそうなってくれれば願ってもないことだとも考えていた。

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