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5−16 ハザン帝国潜入計画(2)

 今回フラウリーデ王女が考えたハザン帝国の飛行船情報に関する諜報活動は、研究施設が稼働していない時間を選ぶ必要があった。また場合によっては一晩だけでは終わらない可能性もあり、ハザン帝国の首都付近に2〜3日自分達の身が隠せるような場所を探す必要があった。


 エーリッヒ将軍は、ハザン帝国の首都にはエーリッヒ将軍やラングスタイン大佐とその家族の住んでいた家があった。数ヶ月前まで彼らの家族が亡命するまでは、常時ハザン帝国の影と呼ばれている『 忍びの者 』の管理下にあった。その家は現在ではおそらくそのままの状態で放置されている可能性が高かった。

 もし、その家が予測通りにハザン帝国の管理下から外れてしまっていた場合、むしろ最も安全な隠れ家になり得ると考えられた。

 そこでフラウ王女はエーリッヒ将軍の住んでいた家を隠れ家の第一候補として真っ先にその家をあたってみることにした。


 エーリッヒ将軍はしばらく思案していたが、唐突にハザン帝国の『 忍びの者 』の間では、隠密行動をする場合覆面越しにでも仲間が判別できるように、お互いに合言葉を掛け合うとことになっていたのを思い出した。


「変わっていなければ、確か『 砂 』と 『 太陽 』だったと記憶しているのだが!」

 

「お父様!もしその合言葉が変わっていたらどうします?」


「まあ、その時はその時。派手に騒ぎまくって逃げ出すさ!」

 相変わらずのフラウ王女の楽天的な言葉に、皆が笑ってしまった。


「考えても、答えが出ないならば、考えないのと一緒だろう 」

「それはそうなのですが、姫様と話していると、やれやれ、肩の緊張がほぐれてきますな 」

 

 フラウ王女とグレブリー将軍のやり取りを聞いていたニーナ蔵書館長は、

 ” 確かに緊張が・・・少し、、、"

と吹き出してしまった。


 ニーナ蔵書館長は、

 ” ハザン帝国から驚くような情報が得られなければ良いのですが ”

とポツリとつぶやいた。

 それは彼女の本音の部分であり、そうあってくれれば、トライトロン王国にとって都合が良いのだがという気持ちがそう言わせていた。


 もし、自分がハザン帝国から自分達の理解不能な研究情報を大量に持ち出さなければならない羽目となった場合、それはハザン帝国の飛行船の開発が理想的な形で完成に近づいていることを示していると予測される。

 その場合、トライトロン王国が今から追いかけても、もう間に合わない可能性が高い。本格的な開発競争になる前にお手上げ状態となる。


 万が一そのような事態になった場合、むしろ飛来してきた飛行船を確実に迎え撃つための新しい迎撃手段をジェシカ王女と早急に立案し、実行に移す必要が生じると考えていた。


 ハザン帝国の飛行船がほぼ完成状態であった場合の対抗手段についてはジェシカ王女達も未だそこまでは考えてはいなかった。

 それでも、兵器としてのあの飛行船の欠点はある程度把握できているため、割り切ってハザン帝国の飛行船を無効化する方法にのみ絞って研究すれば、道は開けるような気もしていた。


 そうはいえ実際には許された時間は無限ではなかった。ジェシカ王女もそう遠くない時期には他国へ嫁ぐことになる可能性も考慮しなければならなかった。


 ニーナ蔵書館長が今回の諜報活動に参加すると聞いた時、ジェシカ王女も同様なことを心配しており、その場合には少なくとも二年以内にはハザン帝国の飛行船を完全無効化する方法を完成させる必要があるかもしれないと話したことがあった。

 ニーナ蔵書館長は、ジェシカ王女と話し合っていたその不安とその対応方法につてフラウ王女に話した。


「そうでないことを祈ろう。何れにしても、ニーナ達が当初に予測したように、直ちには兵器として使用できない飛行船であることを祈ろう。それにしてもニーナ達はどんどんたくましくなっていくな 」

・・・・・・・!

「ハザン帝国から王国へ連れてきた時には、まさかニーナと一緒に潜入工作するなど全く考えていなかったが、エーリッヒ将軍の娘さんだと考えると、何故か理解できる気もするのだが、、、」


「フラウ王女様、私は決して喜んで今回の潜入工作に参加しているのではないんですよ!」

「それはいくら私でも分かっている!それでも、ニーナの顔がとても生き生きして見えるのは私の錯覚かな?」


 ニーナ・バンドロンは、フラウ王女や父エーリッヒ・バンドロンの役に立てることが、今の自分にとって最も嬉しいことだと胸を張った。


 翌早朝早く、6人は用意してきたハザン帝国の一般人の服に着替えて馬に飛び乗った。ニーナ蔵書館長もさすがに将軍の娘、馬の扱いについては十分に熟知しており、足手まといになるようなことはなかった。


 しばらくして一行は今ハザン帝国の国境で検問の順番を待っていた。ニーナ・バンドロンは父エーリッヒ将軍と親子として一緒に検問を受けることにした。


 フラウ王女はグレーブリー将軍とその妹として、トライト中佐とリモデール中佐は友人同士として3組に別れ、少しづつ離れながら検問所へと向かった。


 3組の内の1組でも検問を通れなかった場合、残り2組で今回の目的を達成するための計画は準備していなかった。もし、そのような事態に遭遇した場合には検問で足止めされた1組を助け出し、直ちにシンシュン国に保護を求めるしか方法はなかった。


 しかし万が一そのような事態が発生した場合は、当分の間はハザン帝国への潜入はあきらめざるを得ない状況になってしまうであろうし、その間にハザン帝国での飛行船開発は更に加速されることになるであろう。

 その意味で今回の潜入捜査は、決して失敗が許されない状況だともいえた。

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