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1−15 卑弥呼(ひみこ)

 この前の洞窟で発見された時、覚えていたのは何処(どこ)までもどこまでものぼりながら、最終的に行き着いた所は天国ではなくこの洞窟だった。

 今回は薄れ行く思考の中で、フラウ王女は自分の意識が深い深い地の底まで落ちて行く様な気分を感じていた。それでも決して不快な感覚ではなかった。


 行き着く先が今度は地獄かな?と()にもつかない冗談を思いながら、その感覚はフラウが先きに誤って魔法陣を踏んでしまった時に感じたものと一緒であるという記憶が戻ってきた。


 やがて卑弥呼(ひみこ)の意識とフラウの意識が合体し始めたのを頭の深い部分で感じながら、そしてフラウ王女はいつもの朝の目覚めの樣に床に敷かれた布団から起き上がった。そして、枕元に置いてあった自分の顔を写すことが出来る銅製の鏡に目をやった。


 そこに映し出されていたのはフラウが望んでやまなかった女王卑弥呼の顔が映っていた。そのことは卑弥呼の脳を借りてそう理解できていた。

 漆黒の黒髪に透き通る様な白い肌、切れ長で大きな黒い瞳、鼻筋が通っていて意志の強そうな、それでいて蠱惑的(こわくてき)とも言える唇。


 かつて偶然にフラウがここに迷い込んで来た時、卑弥呼(ひみこ)と出逢合ったその記憶は残ってはいたものの、王国に帰り日が経つにつれて、それが夢の中の出来事なのか、現実のものだったのかの区別が段々とつきにくくなってきていた。

 しかしたった今それが夢では無かったことを明確に認識できた。


「私の思い描いていた通りのとても素敵な方です。卑弥呼女王様。私は、恐らく女王様の住んでいる国からは遥か遠く離れた国のフラウリーデと申します 」


「大丈夫じゃ!大方のことは、わしも理解出来ていると思うぞ 」


 それにしても、とんでもない危険を冒して邪馬台国(やまたいこく)にやってきたフラウ王女に卑弥呼は呆れ顔で溜息(ためいき)をつきながら、

 ” どうやら遊びに来た訳じゃなさそうだな。相当な覚悟があってのことじゃろうな。それにしても良く血液のことに気が付いたのう?そなたは。多分わしと会うべき定めがあったのやも知れぬな ”

それでいて嬉しそうにそう話した。

  

 女王卑弥呼はフラウに今度自分を呼ぶ時には女王様ではなく、卑弥呼と呼んでくれる様にと言った。その代わりに自分もフラウと呼ぶことにする交換条件であった為、フラウとしては拒否することはできなかった。


「前回突然現れた時から、未だそれ程時間は経っていないようだが、、、フラウの住む王国で何か困ったことでも起きたのかのう?」


 フラウリーデ王女は、現在トライトロン王国が隣国のとある軍事大国から理不尽な侵略を受けようとしている事実を話した。

「そうか、三倍以上の兵力で(おびや)かされているとな。それでわしの所に来たわけじゃな。フラウの頼みとあらば、何とかしてやりたいものじゃが、、、!」

と、少し言い淀む様な沈黙があった。

 

「今直ぐにでもかけつけたいところじゃが、、、」

と卑弥呼は言いながら、今邪馬台国も他部族からの侵攻が激しくなってきていることを話し始めた。

 ちょうど今、卑弥呼はその攻防戦の陣頭指揮を取る必要に迫られていた。


「とても似た様な状況なんですね。そのことが私を呼び寄せたのではないかという予感もするのですが、、、」

「そういうことも考えられなくはないが、もしそうだとすると、今回の肥後国(ひごのくに)との戦はささっと済ませてフラウに良い所を見せないとな!」


九郎兵衛(くろべえ)、九郎兵衛!」

「はい、ここに!」

  九郎兵衛と呼ばれた男を見て、フラウ王女はどこかで見知っている顔のようだがと感じていた。そうか近衛騎士隊長のクロード・トリトロンとどこか似ている。


「肥後の国の動きはどの様じゃ?」

「はっ!、肥後国の軍船は、あと三日程でこの有明の海(ありあけのうみ)に着くと見ておりますが、、、」

「あと三日か!」


 と卑弥呼はつぶやきながら、壁に貼られた紙をじっと見ている。フラウはそれが王国の蔵書館で読んだ東の日出る国(ひがしのひいずるくに)の文字で書かれたものであることが理解できた。

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