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5−1 シュトクハウゼン・ゼークスト公爵家

 これから物語の中盤が始まります。

 トライトロン王国には八つの貴族家がありり、そのうち将来王国側につく侯爵家、また他の貴族達と合従連衡(がっしょうれんこう)を組み王国に反乱を引き起こす公爵家が二大筆頭貴族である。この王国内の貴族家のそれぞれの動きがやがては王国の未来を左右していく。

 また、飛行船開発を前提とした人選は紆余曲折を経て、トライトロン王国から化学者の代表を、プリエモ王国から科学者の代表をそれぞれ選出した。そしていよいよ飛行船開発プロジェクトが始動し始める。

 トライトロン王国は王族と公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五つの貴族家から構成されている。


 公爵家から男爵家までは領地持ちの貴族である。騎士爵も一応は貴族ではあるが、王国騎士などのうち、特に功績が顕著であった者に一代限りで与えられる名誉職で領地は持たないのが一般的だった。

 現在はその称号を持つ貴族は王国内には存在していない。


 王国内の貴族構成はシュトクハウゼン・ゼークスト公爵家(私兵数1,5000名)、ラウマイヤーハウト・リンネ侯爵家(私兵数 10,000名)リンナカインド・ハーバント伯爵家(私兵数 10,000名)、サンガリンネ・ダーレイ伯爵家(私兵数 10,000名)、シンギームス・ランダル子爵家(私兵数 8,000名)、ハウゼンストク・ナーデル子爵家(私兵数8,000名)、リーカルゼンナ・ライトン男爵家(私兵数 5,000名)及びウルバンストーク・ダリート男爵家(私兵数 5,000名)の八つの貴族家があり、いずれも世襲制度をとっている。

 

 騎士爵の爵位を与えられてた騎士は、かつてフラウリーデ王女が生まれる前に、エリザベート女王専属の騎士が戦において女王の救出に一人かけつけ、自分の片腕を失いながらも、女王には少しも傷を与えることなく命を賭して守り切ったという経緯がある。エリザベート女王はその果敢な功に報いるため、彼に騎士爵(ナイト)の称号を授けた。

 しかし彼はもう今では既に鬼畜(きちく)に入ってしまっている。


 ゼークスト公爵家及びリンネ候爵家については、トライトロン王国と遠い縁戚に当たるらしいが、エリザベート女王の代になるとその詳細を知る者もほとんどいない。


 王国は彼らに領地及び自治権を与えることで、彼らが領地の領民から得る租税の内、その三割を王国に拠出させることになっている。


 トライトロン王国は、歴代女王を始め摂政達も(ぜい)を尽くすことはなかったためか、十分過ぎる余裕を以って多額の保有財があった。王国の保有財は、王国内で飢饉が発生した場合などに、王族の民と貴族家に属さない一般市民に分け与えていた。


 それでもここ数年飢饉らしいものは発生しておらず、王国保有財は年々増加していく一方であった。先般、第二王位継承者ジェシカ王女が提案した王国科学技術省及び研究所の設立にあたって、フラウ王女はその費用の捻出を貴族達に頼ることをしないで、全て王国のみで達成すると決め、情報が漏洩することを避けた。

 これはスチュワート摂政の発案でエリザベート女王も了承していた。


 女王も摂政も今回のプロジェクトに貴族達が介入することにより、飛行船の使い道などについて王国の考えに水を差される可能性があると判断したからであった。例えば、軍事利用などの王国の真に目指しているのとは違った方向に、、、。

 また、現在の王国貴族の動きを見る限り、その武器が反乱という形で王国に直接向かってくる可能性すらも否定できなかったため、それを避ける目的もあって、秘密裏に研究開発を行う方が好ましいと判断したようである。


 

 ここは、王国で最筆頭貴族であるシュトクハウゼン・ゼークスト公爵家の館、その館はトライトロン王国の王城にも劣らぬほど大きく、館というよりもむしろ城と呼ぶ方が相応しい作りの建物であった。


 しかもその内装はありとあらゆる(ぜい)の限りが尽くされていた。

 その執務室の革張りの豪奢(ごうしゃ)な椅子に座り、足をだらしなくテーブルに投げ出し、ゼークスト公爵はトライトロン王国の王都に放っている諜報員の一人からある報告を聞いていた。

 

「何!王国の小娘が飛行船の建造に関する調査を行っているのだと、、、?

 ところでどっちの小娘なんだ?」

 

「何かの間違いじゃ無いのか? 第二王女は確か15歳の小娘じゃなかったのか?」

「それが、剣術はからっきしらしいのですが、座学に関しては王国内でも3本の指に入る位の知識を有しているとのもっぱらの噂です 」


 この時点ではゼークスト公爵はまだ余裕があった。王国がどのような計画を持っているにしろ、成果が出て来ればそれを横取すればいいと簡単に考えていた。

 もし設計図さえ入手できれば、公爵家の財と次男が取り仕切っている研究施設において完成させることができはずだと鷹を括(たかをくく)っていたからである。。


「そうですね、家宝は寝て待てともいいますから、引き続きしっかりと偵察を継続いたします 」

「そうだな。その調査結果をわしに逐一報告するように!お前は早速王都に戻り、調査を継続しろ、、、 」


 その諜報員は差し出がましい話ですがと前置きし、今後公爵家の第二王子と、王国の第二王女の婚姻を画策したら、公爵家に有利になるのではと話した。

 そうなった場合、確かに公爵家が欲しい王国に関する多くの情報が入手可能となり、公爵様が王族に返り咲くチャンスが大きく近づくのではないかと耳打ちした。


「確かにその線もあり得るな!しかし、次男は気むずかしいからな!まあ、考えておこう 」

「判りました。それでは私は直ちに王都に戻り、引き続き王族の偵察を続けます 」

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