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4−34 科学者よ化学者の共同研究

 飛行船を完成させるためには、いわゆる化学と科学その二つの学問を組み合わせることが最低条件となる。

 その二つの学問の融合が前提となって、はじめて本格的に遠くまで安定して飛行する飛型船が完成できるできるのであると、ジェシカ王女とニーナ蔵書館長は力強く説いた。


「聞くところでは、ハザン帝国の当初の試作品の動力は人力によると聞いていますが、人力では大量の物を運ぶことは絶対に不可能です。絶対に、、、」


「ニーナ蔵書館長!今までに王国で得られている情報では、人が(こぐ)ぐといった話ではなかったか?」


 スチュワート摂政の問いに、ニーナ蔵書館長は、

 ” 恐らくハザン帝国では、人力では長時間飛行が困難と判断し、今では人力に頼ることなく、遠くまで飛行可能な方法を発明し、最後の仕上げに入っていると私達はそう見ています ”

と答えた。


 ジェシカ王女並びにニーナ蔵書館長からの提案は一応この時点で一旦終了した。


 そして本来この飛行船の建造は、戦争用ではなくて、王国や近隣国との産業物資の運搬や観光用に利用されるべきであって、決して人殺しの道具として使用するべきではないことをジェシカ王女は最後に付け加えた。


 スチュワート摂政も、ジェシカ王女やニーナ蔵書館長の言う通りだと思っていた。飛行船建造の最終的な目的は隣国同士の交易や人材交流のためにこそ使用されるべきである。

 もしそれが他国に脅威を与える目的で使用されるのであれば、本末転倒と考えていた。


「我々はそうあるように最大限の努力をすると約束しよう。皆も異論無いな!」

 スチュワート摂政はそう話しながら全員を見回した。


 フラウ王女は手を上げながら、錬金術師の選別と研究所の建設をジェシカ王女とニーナ蔵書館長を中心に進めることの許可を摂政に願い出た。


 そして、フラウ王女自身もこの飛行船の建造が、戦争用の武器としてではなく、隣国同士の交流のために使用すべきであるという提案を優先することを約束した。


 その一方で、フラウ王女はハザン帝国の飛行船の開発内容と完成度を知る必要があると提案を行った。

 そして、その調査計画に関しては後日フラウリーデ自身がその計画書を提出することとなった。


 実際、(いくさ)となれば大勢の人が死んだり負傷したりすることは確実である。王国の民は国の宝であり、民が存在していて初めて自分達王族や貴族は生活が成り立っている。

 民が苦しむことは女王の本意ではなかった。


 スチュワート摂政は女王が王国の民の平和を常に望んでおり、それが侵されるような事態が発生すると、その理不尽な行為は、あらゆる手段を使ってでも打ち砕くのに女王はなんの躊躇(ためらい)も示されないだろうと付け加えた。


 スチュワート摂政は、可能な限り民を巻き込むことなくハザン帝国の野望を打ち砕く良策を考えくれるようにと命じた。

「王女達の理解を期待している。これを以って、本日の詮議は終了する 」


 そしてスチュワート摂政はジェシカ王女とニーナ蔵書館長に(ねぎら)いの言葉をかけた。

「二人とも大変ご苦労だった 」

 加えてフラウ王女とジェシカ王女並びにニーナ蔵書館長にその全権限を委任した。


 もちろん、研究所の建設や研究者の専任に関する全ての費用は、王国の国庫から支払うことも約束した。

 そしてその新たに建設される『 科学技術省 』に関しては、今回の飛行船建造プロジェクトのみではなく、王国の未来技術を託せるような人材を専任するようにと摂政は付け加えて詮議は終了となった。


 一方、先の会議でジェシカ王女とニーナ蔵書館長の提案はトライトロン王国内において、関連する錬金(技術) 関連研究者の王国勤めを認めることとなった。

 にも関わらず、その詮議以降、王国内では『 錬金術師 』という名称は公式の文書からは削除され、新たに『 化学者や 科学者或いは 自然科学者 』という名称で呼ばれるようになった。


 またトライトロン王国においても良く耳にする星占いや、天候の占いなどの占星術については、自然科学の分野で統一されることとなった。


 後の歴史評論家は、この時トライトロン王国は多くの過去の(しがらみ)を全て捨て去ることにより、近代王国への樹立が始まったと記録している。

 また、それがトライトロン王国のフラウリーデ王女を中心とする王族がその基礎を作ったとも付け加えられていた。


 確かに、トライトロン王国は飛行船開発案に(たん)を発した莫大な人件費を含めた研究開発費が、これからの世界を大きく変えていくことになろうとは未だこの時点では誰も予想できてはいなかった。

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