4−30 ジェシカとニーナからの提案(2)
ジェシカ王女とニーナ蔵書館長の作成した飛行船建造計画案を見ながら、フラウ王女は、今回の飛行船建造計画案の錬金術師の選別において、プリエモ王国で活動している錬金術師の情報が入っていないことを指摘した。
「それは、プリエモ王国と同盟を結ぶということも含んでいるのでしょうか?」
「そうだ!何故か私の頭の中で仕切りにそう呼びかけるものがある。何としてもその分を追加して欲しいのだが、、、」
先に、フラウ王女がプリエモ王国の錬金術師の調査についても依頼した際、ジェシカ王女から何故プリエモ王国を特定したのかを問い詰められたことがあった。その際、フラウリーデがジェシカ王女とホッテンボローとの婚約の話を持ち出したせいで、少し気恥ずかしい思いがあったのかもしれない。ジェシカから提出された報告書の中には、プリエモ王国の錬金術師に関する資料は入っていなかった。
現時点では、飛行船建造計画のことを他の王国にまでは知られるのは好ましくないし、まして王国内の貴族の連中には特に知られたくないとフラウ王女は考えていた。
その点、プリエモ王国であれば、両王国が対等の立場で強力し合えるという確信がフラウ王女には確信が持て、かつその情報がむやみに流出することは絶対にないだろうと判断していた。
「最も信頼できるプリエモ王国だけは、開発当初から今回の研究事業の仲間入りして欲しいと考えている 」
「お姉様のご意志は良く分かりました。その分だけの追加であれば、既に調べ上げていますので、2〜3枚入れ込むだけで十分ですから詮議のスジュールの変更は必要ありません 」
「明日の午後に詮議を開くということで構わないよな!それではジェシカ、ニーナ、宜しく頼む 」
フラウ王女は、二人が予定よりも早くしかも自分の欲しているものが網羅された資料が既に完成していることに驚きと、改めて二人のその方面での突出した能力に感心していた。
最近、卑弥呼が仕切りに 、
” もっと二人の能力を信じてやるが良い ”
と言っていたことの意味を今はっきりとフラウ王女は確信できていた。
やはり、ニーナ・バンドロンのことは別にしても、少なくともジェシカ王女に関しては相当に卑弥呼の思念による導きが行われていることを感じさせた。
卑弥呼が、ジェシカ王女に施した術は、自分とは違う種類のもの。自分が、戦略や戦術、更には呪術面、戦いに特化した能力の開花とは異なって、ジェシカ王女は、読解・記憶能力の向上、錬金術に関する能力が飛躍的に開花しているようである。
フラウ王女が基本戦いにおける能力向上であるのに対し、ジェシカ王女は、これからの王国の科学、化学や錬金術などの学術面の向上のようである。
そう思い至ると、ジェシカ王女がプリエモ王国に嫁ぐことになった場合、フラウの片翼がもがれるような気がしてならなかった。
それでも、邪馬台国の卑弥呼女王は抜けがない。彼女はニーナのことに関しては多くのことを語らないが、少なくともジェシカ王女がフリエモ王国に嫁いだ後の、知的分野を埋めるのはニーナであり、ニーナがその資質を十分に持っていると既に確信しているようであった。
最近、フラウ王女は、ニーナ・バンドロンを見る度に思ってしまう。エーリッヒ将軍が捕虜となったこと、人質となっていたニーナ・バンドロンが将軍の娘で、無類の座学好きであったこと。これらは本当に偶然なのだろうかと、、、。
フラウ王女自身、今ではそれは決して偶然ではなく、誰かが描いたシナリオではないだろうかと考えるようになっていた。
もし、この世界に本当に神様が存在しているとしたら、いや存在していなくても、卑弥呼がいうように神の残留思念が残っており、自分は神の残留思念が描いた物語を実現していくのが使命なのかもしれないと、思うことさえある。
今、フラウ王女が考えている神の残留思念こそが邪馬台国の卑弥呼との思念のやり取りであり、自分はその実行役としての使命を与えられているのではないだろろうかと思うその一方で、そう考えている自分を思い上がった小娘だったとも感じてもいた。
いずれにしても、フラウ王女の今抱えているこの悩みは卑弥呼に相談したとしても適当に誤魔化されてしまうのは間違いなかった。




