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4−28  戦争の火種

 このハザン帝国の飛行船建造事実が明白となった時点から、ハザン帝国とトライトロン王国を中心とする諸国との戦争の火種(ひだね)は既に(まか)かれていると考えなければならなかった。

 少なくともトライトロン王国がハザン帝国の飛行船に蹂躙(じゅうりん)されたとなると、近隣諸国も次は自分達の番だと戦々恐々(せんせんきょうきょう)となる可能性は間違いなかった。


 そうなると、新しい攻撃兵器を持つハザン帝国に着くか、王国側に着きハザン帝国撃退に協力するかの究極の選択を迫られることになる。


 そのような厳しい選択が迫られた時、これまでの平和ボケした近隣諸国が果たして政治的に対応可能かについてはこの時点では全く読めなかった。


 また、フラウ王女の考えているハザン帝国の飛行船破壊計画が、もし本当に実行された場合、ハザン帝国との戦争が逆に加速激化されるのではないかとも考えられた。

 また、あるいは戦争が更に長期に泥沼化する危険性も十分に考慮しなければならなくなる。


 総合的に考えると、ハザン帝国飛行船の破壊作戦は、その方法を少し考え直す必要があるかもしれないと、フラウ王女が考えた矢先、すかさず卑弥呼(ひみこ)から思念が入ってきた。


「もし、その計画を実行する場合には完璧に成功させなければならないな。中途半端だとハザン帝国の侵略計画は逆に一気に加速する可能性が高くなるはずだ。トライトロン王国では飛行船が未だ完全には完成していないことを自分から宣伝するようなものだからな、、、」


「お義姉様。私は私の考える正義を貫きます 」


 卑弥呼は、日々頼もしくなっていくフラウ王女を頭に描きながら、これでわしもフラウに色々教えた甲斐があったと考えていた。途方もなく長生きしていると、ちょっとやそっとぐらいの刺激では物足りなくなってしまうが、フラウやジェシカがいると退屈しないと思えるようになっていた。


「うーん!そろそろ眠くなってきた。わしは、今から寝る 」


 すっ〜と、卑弥呼の思念がフラウの頭の中から去り、途端にフラウの瞼も徐々に重たくなってきた。

 昨晩は夢を見ることも無く、ぐっすりと眠れたような気がする。窓を開けるとひんやりとした晩秋の朝の空気がカーテンを揺らしながら部屋の中に入ってフラウの頬を掠めていく。


 小さく欠伸をすると、心の中に気力が(みなぎ)って来るのを感じた。身支度を済ませ、ジェシカ王女の部屋をノックする。が返事はない。

 

 ドアを開けて、中に入ると蔵書と捨てられたメモ書きの散乱する部屋のソファで、二人は眠りこけていた。フラウは、ドアを静かに閉じると食堂へと向かった。


「ジェシカ王女様達を起こして参りましょうか 」 

 ジェシカ王女の侍女のアンジェリーナが、そう聞いてきたが、フラウは二人が昨晩も遅くまで蔵書と格闘していたようだからもうしばらく寝かしてやってくれるようにと伝え、自分に紅茶を入れてくれるようにと頼んだ。

 

 侍女のアンジェリーナも最近のジェシカとニーナの書類との格闘の激しさになす術がなさそうで、このまま(こん)を詰めた状態が続くと、ジェシカ王女達が病気になるのではないかととても悲しそうな顔をした。

 

「ジェシカ王女も王国の一大事に何か役に立ちたいと真剣に悩んだ末の蔵書との格闘だ。ジェシカ王女にとっては蔵書との格闘こそが、私の剣と同じ意味を持っているのだから、もう少しそっとしてやろう 」


 確かにこの二週間、ジェシカとニーナの二人と顔を合わせる機会は殆どなく、気にはなっていたものの、二人に頼らざるを得ないのも事実で、二人に顔を合わせると、つい提案書の完成の先延ばしを許してしまいそうな自分が怖くて、少し意図的に避けていたのかもしれなかった。


 フラウ王女は、

  ” ジェシカ!ニーナ!申し訳ない。手伝えない姉を許してくれ ”

と独りつぶやいた。

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