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4−17 鍛治職人探し(2)

 クロード近衛騎士隊長の馬が、ある建物の前で止まった。

 そこは、色々な種類の商業の代表者が取りまとめの仕事を行っている王都商業組合であった。


 その建物の中では、食料品、衣料品、食器類、医療品、その他色々な生活必需品等、更には戦争時に使用される武器まで、それぞれの分野の代表者を選出して、この組合でその執務を行っていた。


 また人材を求めている商業者へふさわしい人材を紹介する仕事なども併せて行われ、通称『 王都商業ギルド 』と呼ばれ、市民の生活には欠かせない存在となっていた。


「ニーナ・バンドロンの作ってくれた書類の中にも確か、この建物内に鍛治職人関連の事務所の存在が書かれているようだが、、、」


 フラウ王女はクロード近衛騎士隊長が、何故この商業組合のことについてそんなにも詳しく知っているのかを不思議に思っていた。

 クロード・トリトロンは元々平民の出で、小さい頃にはこういう場所でよく遊んでいた。勿論、その頃商業組合がどういうものかは全く知らなかったようだが、、、。


 フラウ王女は、

 ” ほう、この付近がクロードの子供の頃の遊び場だったのか?”

と感心したように周囲を見回した。

「はい!ここで皆んなと遊んでいると、果物やお菓子などをもらえたりすることもあったりして、、、」


 クロードのこの話はフラウ王女であっても初めて聞いた内容であった。そしてクロードが昔を思い出し、楽しそうに話すのが羨ましかった。そして自分も一度で良いから、そういう経験がしてみたかったとつぶやいた。

 

 ラングスタイン大佐は、クロード近衛騎士隊長の幼い頃の話を聞いて驚いていた。

 フラウ王女の婚約者であることから、少なくとも王族関連の子息か軍の重責者を近親者に持っているものと勝手に思い込んでいた。

 これも、彼がある意味ハザン帝国の習性を抜けきれていない最たる理由なのかもしれなかった。

 事実、ラングスタイン大佐から見るクロード近衛騎士隊長の人物像は、とても一般庶民のそれではなく十分に幼い時の情操教育を受けてきている人間のように思えていた。ある意味その大佐の想像は外れていたわけではない。


 彼が背負わされた過酷な運命でさえも、クロードが本来持っていた人間性に変化を与えることはできなかったようだ。

 むしろその過酷な経験が元々のクロードの人間性に更に深みと優しさと慎重さを与えているようであった。


 三人は馬を降りると、建物の前に置かれている愛馬を休ませる場所に連れて行き、水を飲ませるために杭に繋いだ。

 そして鍛治職人組合の部屋の前に着くと、そのドアを叩いた。

 中から

  ” どうぞ ”

との低い返事に三人は部屋に入っていった。


 そこには60歳位の頭頂部が少し薄くなった会長らしき男が頭を深く下げて挨拶をした。そして顔を上げてフラウ王女の顔をじーっと見ていたが、突然その場に座り込んで、

 ” 申し訳ありません。王女様とは知らずご無礼申し上げました 、、、”

と額を床に擦り付けんばかりだ。


 フラウはかがみ込むと、組合長の手を握って立たせた。

「こちらこそ、突然の来訪申し訳なかった。急ぎ頼みたいことができたので連絡すらよこさずにやってきてしまった 」


「それにしても第一王女様が鍛治組合に一体どういうご用件で?、、、」

 

「実は、特殊な技術を有する鍛治職人を探している 」

「特殊なと言いますと?」


 フラウは、刀(katana) を取り出すと組合長に差し出した。

 組合長は、刀の外見をしばらく眺めていた。そして剣を鞘から抜いて刀の刃をじっと見てうなづいた。そして静かに鞘に戻してフラウに返した。

 どうやら、心当たりがあるようである。組合長は少し遠い目をして、何かを思い出している素振りを見せた。


「この刀と関連のありそうな鍛治職人には一人だけ心当たりがあります。もう10年程前になりますか、ふらりと私の前の上司の時にこのギルドに来やってきました 」


 その鍛治職人は素性を明かせない事情があった模様だったので詳しいことは聞かずに、前会長はその職人が鍛冶屋としての知識は十分だと判断し、確か北の外れにある鍛冶屋を紹介した。


 1年後に後任の組合長となった彼は、素性の不明確な職人を紹介したという手前、少し気になってその鍛冶屋を訪ねたらしい。


 彼は、鍛治職人としてとても優秀な人物であったらしく、王国の鍛治全般についてその二年間で全て習熟してしまっていた。その為、その鍛冶屋から更に数キロ北の方に行った所に、その親方の好意で暖簾(のれん)分けをしてもらい、独自に小さな鍛冶屋を開いていた。


 その彼が仕事の合間に趣味で鍛造したという刀(katana) というものが、その鍛冶屋の入り口の一番目立つところに飾られており、その刀がフラウ王女が見せた剣と類似していると組合長は考えていた。


「間違いないだろう!その鍛治職人だ。組合長!感謝する。その鍛治職人がいまだに健在で、刀の鍛造に興味を持ってくれたら、原材料の調達や設備の設置などについて改めて王国として仕事を頼むことになる 」

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