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4−10 飛行船建造に関する調査

 蔵書館から帰ったジェシカ王女の飛行船建造計画の第一歩、『 錬金術師 』やその指導者の選別に、食事の時間や眠る時間を()いての調査が始まった。何故か、その日の内に、ジェシカ王女の部屋にはニーナ・バンドロン専用のベットまで運び込まれていた。


 エーリッヒ将軍の娘ニーナは、この城に来て以来、年が同じということもあってか、ジェシカ王女とすぐに仲良くなっていた。二人の共通点は座学が得意という部分で、二人共常識はずれの能力を持っていた。


 ジェシカ王女が歴史や言語に特に詳しいのに比べ、ニーナ・バンドロンは科学や化学的な分野を特に好んでいた。その為、二人の組み合わせは砂漠の砂が水を瞬く間に吸い取っていくように、あらゆる知識を幅広く次々と吸収していった。


 ニーナ・バンドロンは自分の読みたかった内容の蔵書がこの王国内には幾らも存在していて、それが自由に見れる状態に歓喜し、二人の作業は瞬く間に進んでいった。ジェシカとニーナは蔵書の中から、『 錬金術 』に関するあらゆることや飛行船開発に関係がありそうなものについて、次々と紙に写し書いていく。


 1日で二人合わせて100枚程が出来上がっていた。フラウ王女であれば、とっくの昔にあきらめて(さじ)を投げていたことだろう。


 そのことに(いささか)か引け目があるためか、侍女のシノラインとアンジェリーナからテイーセットのワゴンをひったくると、ジェシカ王女の部屋のドアを叩きワゴン車を押していった。


 ドアを開けると部屋の中は蔵書と下書きの紙が所狭しと転がっている。それを避けながらワゴン車を推していく。テーブルの上の蔵書や捨てられた紙を避けながらテイーセットを置き、紅茶を()れる。


 その時になって、初めて気がついた様で、

 ” お姉様が自分でお紅茶なんか?侍女に頼めば良いのに、、、”

と目を丸くしてジェシカ王女はフラウ王女に問いかけた。


「いや、その〜ジェシー達にばっかり押し付けてしまって何か悪いと思って、せめてお茶とお菓子ぐらい運んで来ようと、、、。何か手伝えることは無いか?」


「お姉様大丈夫です。ニーナがいるから調べ物はどんどん進んでいます。あと2〜3日で調べ上げて、取りまとめますのでのお姉様は出来上がるのを待っていてくだされば良いのです。そうだよね、ニーナ!」


 確かにフラウ王女から見た二人はとても楽しみながらその調査を進めていることが、はためにもそう伺えた。


「そうか、悪いな。苦労をかける 」


 実際、ニーナは、長い事蔵書を読むことを禁じられた学者がやっと目的の蔵書に巡り会えたみたいに大喜びでそれらの蔵書を読み(あさ)っていた。まさに水を得た魚みたいである。

「お姉様とは大違いですね 」


 フラウ王女は、『 良く言ってくれるよな!』と言いたかったが、核心をついているだけに返答のしようも無く軽く咳払いをしながら紅茶を(すす)った。


「お姉様は、今までのように剣で私達を守って下さるだけで十分に有り難く思っています。だから、あまり気を遣わないでください!これらの蔵書は、私達にとってお宝なのです 」


 スポーツ女子と勉学少女の違いがここに出てしまっているが、やはり餅は餅屋。得意な分野のこととなると、この姉妹とニーナを含めとても一途であり、しかも楽しみながら進めているのだった。


 フラウ王女は、二人の邪魔にならないようにテイーセットを静かに片付けてワゴン車を引いてジェシカ王女の部屋を後にした。


 それにしても、まさかエーリッヒ将軍の娘ニーナ・バンドロンが、妹ジェシカ王女の相談相手になるほどの座学の知識があるとは全く想像していなかったフラウ王女は、心の片隅で、自分では能力が及ばない分ほっとしていた。

 フラウ王女が強行した、『 人質救出事件 』に関して本質的ではないと分かりながらも、ニーナという優れた人材が得られたことに少しは救われた気がしていた。


 この後、ジェシカ王女とニーナ・バンドロンはこの世界において、おそらくまだ誰も知らないと思われる知識を詰め込み、王国の技術を全面的に支え導いていくことになる。

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