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4−3 新しい攻撃兵器

 フラウリーデ王女はエーリッヒ将軍の話を聞いた時以来、ハザン帝国からの大いなる脅威(きょうい)がもうそこまで迫ってきていることに強い焦りを感じ始めた。そして父親の摂政であるスチュワート・ハナビー・フォン・ローザスに会いに行った。


 もちろんその目的は、ハザン帝国における飛行船の詳細や実態、さらにはその真の使用目的などをさらに具体的に調査するためである。


「お父様、ご相談が、、、」


 フラウ王女の父、スチュワート摂政はいつになく真剣な顔で迫ってくる娘に、一瞬たじろいたように、今から娘の話す内容が王国にとって好ましいものではないことを覚悟した。

 そのフラウ王女からの話は、ハザン帝国の新型の大型破壊兵器『 飛行船 』開発に関するものである。しかもその兵器の矛先(ほこさき)がトライトロン王国に向けられているという内容も付け加えられていた。


 その兵器としての飛行船がハザン帝国において実用化に至った場合、1〜2日で千名以上の兵隊をトライトロン王城のすぐ側まで送り込むことが可能となる。その場合、飛行船から兵士を降ろすまでなく、その飛行船上から火のついた黒い水を落とすだけで、王城と王都街は火の海となるであろう。


 もしフラウ王女の想定が事実だと仮定すると、戦争の在り方そのものが全く変化してしまい、また、その攻撃による犠牲者は兵隊だけに止まらず王国の民までをも多数巻き込んでしまうことになる。

 特に王都街のように数多くの市民が狭い地区に密集して生活している場合は、そこではまさに地獄絵が展開されるのは確実である。


 また、上空からの攻撃となるため、地上からの飛び道具も強力な対抗武器とはなり得ない可能性が高くなる、、、とフラウ王女が最も危惧(きぐ)している不安をかいつまんでスチュワート摂政に話した。


「確かにそれは聞き捨てならない情報だな。それはエーリッヒ将軍やラングスタインからの情報かな?」


 フラウ王女は、先般ハザン帝国での人質奪還作戦のときに実際に自分の目で飛行船を見てきており、その時の状況をつぶさに報告した。

 実際、その時以来自分の喉に突き刺さった魚の小骨のようにチリチリと痛みを与え、常に心のどこかに引っかかっていたわけである。

 エーリッヒ将軍達との話で、はっきりとその不安の正体をフラウは確認していた。


 フラウ王女はスチュワート摂政に、先般エーリッヒ将軍達とハザン帝国の飛行船に関し聞いた内容をそのまま報告した。

 ハザン帝国における飛行船開発は最高軍事機密として極秘裏に進められており、陸軍の彼らには詳細な情報はほとんど知らされていなかったことなども併せて、、、

 

 もし彼らが何らかの理由で『 黒い水 』を入手していたと仮定すれば、今彼らが開発中の飛行船により、恐らく王城と王都街は1日もせずに全て焼け落ちてしまう可能性がかなり真実味を帯びてくる。

 というより、飛行船で大量の兵士を王国に差し向けるのは、前回のハザン帝国侵略時に3万の騎馬、歩兵部隊を投入したことから考えると、どのような大きな飛行船を使用したとしても、飛行船に乗れる兵士の数はたかが知れている。

 そこから考えられる結論は、ハザン帝国が開発している飛行船は兵士を運ぶのが目的ではないという結論になる。

 そう考えるとハザン帝国は他国から『 黒い水 』を大量に入手し、火をつけたそれを王城や王都街に撒き散らす作戦であろうことは容易に想定できた。


 フラウ王女は、父スチュワート摂政が持っている情報網で彼らの詳細な動向を調べてくれるように依頼した。

 実際にはエーリッヒ将軍等の情報から飛行船開発は可成り極秘裏に進めているはずなので、今回の情報収集には大きな危険が付きまとうことについても併せて付け加えた。


 今回の情報収集が極めて重要で深刻なものであることを考えると、多少の犠牲はやむを得ないとも考えられた。しかも今回の諜報活動はハザン帝国に気づかれないように秘密裏に遂行する必要があり、難易度はさらに高くなってしまうであろう。


 スチュワート摂政は先の侵略戦争以来ハザン帝国への諜報員を増員し、常時五名ほど放っている。王国が派遣している諜報員の存在がハザン帝国に知られている可能性は今のところはそう高くはないと想定される。それでも念には念を押しておくに越したことはなかった。

 また加えて今回の情報収集に当たっては、諜報員の中に多少なりとも技術的な内容が分かりそうな者を追加しておく必要もあった。


 実際には飛行船の研究開発現場における警備は相当厳重だと考えられ、現段階でトライトロン王国がハザン帝国の飛行船に関し、色々と嗅ぎ回っている事実を感づかせないためにも、隠密行動能力に優れた者の選択が必要であった。


 スチュワート摂政は、一人心当たりがあるようで、早速連絡をとってくれた。

 そして、

 ” 空から敵国の軍隊が侵入するなど、荒唐無稽(こうとうむけい)としか考えられないが、、、”

ともつぶやいた。

 娘から話を聞かされても、今一つ実感が伴っていなかった。


 フラウ王女は、これから自分達の住むこの世界が大きく変化していく様子を想像し、これを機に戦争の在り方それ事態も確実に変わってしまうだろうことを確信し始めていた。


 父がハザン帝国の随所に諜報員を用意周到に配置していたことに今更ながら感謝するフラウ王女だった。

 これまでの彼女であれば、諜報員を敵国に配置するなどという考えは及んでいなかったであろう。

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