猫の一夜
ある家のある一日の始まり
その猫は窓から入ろうとしていた
尾が短くまるまると太った茶シロ
茶シロはもう一匹の猫と言い争っていた
尾が長く細身のサバ白
その両者に挟まれたニンゲンのメスが目を覚ました
その名はタマ
テッテレー!タマは混乱していた
起きると2匹の猫が言い争っている
そして、何故か…茶シロは窓から入ってきている?
家にいた猫はサバ白・茶シロ・黒ネコ…この三匹
何故?何故茶シロは窓から入ってきている?
もしや!これは夢!?…ではなかった
もしや!ちがう猫!?…ではなかった
尾が短く、可愛らしいような賢いようなおちゃめなような…そんな顔をしている
唸っているから声は分からないが恐らくこの猫は私の家の子である
では…何故窓は空いているのか?
何故茶シロは窓から入ってきているのか?
何故サバ白と言い合っているのか?
とりあえず報告!報・連・相!
二階で寝ているあの方たちにお知らせを!
タマは争い合っている二匹を引き離し、茶シロを抱き、窓を締め、走った
ドタドタドタと階段を駆け上がる音で起きたのか、はたまた起きていてずっとスマホをいじっていたのか
タマは知る由もなく茶シロとサバ白について報告し、相談した
この際連絡などなんのイミもない
悠長な方たちは
「茶シロの足を綺麗にしてあげなさい」
「窓開けたのは私よ…あなたが暑いかと思って…網戸はどうしたのかしらね」
と言っていた
網戸はこの間布団を干したとき開けて戻していないのではないでしょうか
つまり…?
茶シロは一晩外に出ていた可能性があるのでは…?
サバ白も一緒に出ていたのでは…?
黒ネコは警戒心が強いから外に出ていないとか…?
言いつけどおりに茶シロの足を綺麗にするため脱衣所に連れていき濡れたタオルで足をふこうとすると…
黒ネコが洗濯機の中で丸まり寝ていた
この子は絶対外に出てないわ!
そう確信したタマは茶シロの足を拭きながら茶シロの過ごした一晩を想像してみた
〜イェイ!
オレっち猫だぜ。自由な猫だぜ。
今日は優しい。母さんのおかげで。
外の世界に。飛び出す日だぜ!
楽しみだから。ちょっくら行って…
おいおい兄弟!おいていくなよ?
俺も一緒に行ってやる。一緒に仲良く遊ぼうぜ。
ちょいとちょいと。兄者たち。
タマさん。ミャーさん。あの方たちに。
申し訳が立ちませぬ。
家を出てった。キュウさんさえも。
あんなに優しくしてくれたでしょう?
クロちゃんちがうぜ?
それはそれ。
ちょっくら行って来るだけさ。
皆にバレなきゃいいんだよ。
そうだぜ!
茶シロの言う通り。
すこーし見てくるだけなのさ。
わたしは反対しましたよ?
外の世界は危険なの。
皆さん守ってくれてたの。
絶対帰ってくださいね。
無事に帰ってくださいね。
そこから俺たちふらついて。
ときには茶シロと喧嘩して。
意見が違うからしょうがない。
最後は言い合いしながらも。
クロちゃんとの約束どおり帰ってきたわけよ。
そしたらタマさん起きちゃって。
茶シロが入るの見ちゃったよ。
それでもやっぱり喧嘩して。
タマさん混乱、大混乱!
どうにか喧嘩を止めさせようと。
茶シロを連れて。
あの方たちの元へ一目散。
タマさん見たのは茶シロだけ。
俺は見てないと思ったら。
あの方たちのお一人が。
「外で二匹が喧嘩していた。もしやサバ白も出てたんじゃ?」
そこから俺もバレちゃって。
クロちゃん激おこぷんぷん丸。
匂いを嗅いで一言「臭い」。
俺も茶シロも気分だだ下がり。
夜出てたときの疲れもたまり。
これからずっと寝てようか…ムニャムニャムニャ〜
いやぁ…びっくりしました!ほんとに。
なんで窓を開けたんですか?
無事に帰ってきてくれたからいいものを…
もし…死んでたら?
もし…怪我してたら?
もし…帰ってこなかったら?
もし…もし…
Prrrrrrrr……はい、もしもし〜
……じゃなくてですね…
ちゃんと網戸を確認してくれないと困りますよ。
え?
「茶シロ…一晩楽しく過ごしたでしょうね…いい体験だったんじゃない」?
何言ってるんですか?
もう二度とこんな怖いことにならないようにしてくださいよ!
え?
「サバ白も出てたんじゃないか?」ですって?
そうだと思いますわ。
この方たちは…私の思いも知らずに呑気な。
このことキュウに知らせなければ!
そしてミャーはいつまで寝てるんですか!