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第二章 ~『合格後のイリアス家』~

サーシャ視点です


 内庭の四阿で多彩な花々を眺めながら、サーシャは紅茶を楽しんでいた。その口元には笑みも浮かんでいる。


 彼女が上機嫌なのは、姉のマリアが大聖女候補に選ばれたからだ。ようやく、この家から追い出せたと満足感に浸っていたのである。


「随分と嬉しそうだな」

「お父様の方は機嫌が悪そうですね」

「マリアのせいだ……あいつに反抗された心の傷がまだ癒えぬのだ」


 冷遇の仕返しに、マリアはグランドを殴った。外傷はすぐに癒えたが、見下していた娘に牙を向けられた怒りが、彼を不機嫌にしていた。


「ふん、まぁいい。どうせマリアはすぐに戻ってくるだろうからな」

「あの別れ方ですよ。二度と戻ってこないのでは?」

「ククク、あいつは候補に選ばれただけ。そこから大聖女に至るまで、大きなハードルがあるのだ……教会でライバルたちと競い合い、能力を発揮できなければ脱落者として追い出される。そうなれば、私に頭を下げるしかなくなるからな」

「ですがお姉様は満点合格とのことですよ」


 サーシャは秘密にマリアに関する情報を収集していた。おかげで彼女の成績が優れていることも知っている。


「大聖女は成績だけでは決まらない。積極性や協調性、人の上に立つ資質が求められる。それに周囲の者たちも善人ばかりではない。ライバルを蹴落とすために、汚い手を使う者もいる。マリアが闘い抜けるほど、甘い世界ではないのだ」


 心根が優しいマリアだ。罠に嵌められる可能性は十分にある。彼の言葉には説得力があった。


「それに駄目押しもしてある。大聖女候補に選ばれた娘の中に知り合いがいたのでな、マリアを大聖女レースから脱落させるように頼んでおいたのだ。成功すれば報酬を支払うと約束してある。私をコケにしたことを後悔させてやるのだ」


 サーシャはゴクリと息を呑む。グランドの執念深さに、恐ろしさを改めて実感した。


「お父様、王子との縁談の件ですが――」

「心配するな。必ずマリアを連れ戻し、あいつを結婚させてやる。そして醜男と結ばれ、絶望するマリアを盛大に笑ってやるのだ」


 グランドの笑い声が木霊する。反響する声は彼の醜悪な人間性を象徴するかのように、不協和音を響かせるのだった。



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