美人生徒会長が権力に噛みつくオレを密室に連れて行こうとするんだけど、ポケットに何か忍ばせてるし目が血走ってるし、え? 何? 殺される?
リハビリ作品十一作目。
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品の為、1000文字以内の超短編です。
「下柳、体育倉庫に体育祭の道具を確認しに行きたいんだが付いてきてくれ」
「オレじゃなくてもあんたが言えばついてくるだろ、女王サマ」
と、周りを見るが、他の生徒会役員は『不満か!?』と睨んでくる。
これだ。
この学校はこの女王サマに支配されている。
上川摩利。
170を超える長身。艶やかな黒髪ロング。意志の強そうな凛とした目。
頭脳明晰スポーツ万能、そして、圧倒的カリスマ性。
生徒会長候補は上川一択だった。
オレはそれが気にくわなかった。
オレは生徒会選挙に立候補した。
上川と壮絶な舌戦を繰り広げ……惨敗した。
しかし、流石女王サマ。屈服させたいが為かオレを副会長に指名してきた。
ことある毎にオレは噛みついた。
隙があればもれなく噛みついてやった。
そのうち、上川は、オレを睨みつけてくるようになった。
しかも、160しかないオレに対し、腰を折って下から睨みつけてくるのだ。
この前から、オレに近づき、ポケットから何かを尖ってそうなものを取り出そうとしてるし、とうとう最近では、やたら人気のない密室へと連れて行こうとするのだ。
殺される。
最近の上川のオレを見る気迫は半端なかった。
そしてずっと「今日こそ今日こそ……」とつぶやいている。目がヤバい。
流石に精神的疲労が半端ない。
「ひ、一人で行く!」
オレは慌てて体育倉庫へ向かった。
背後でガチャリという音を聞き、自分の愚かさを呪った。
「二人きりだなぁ」
上川が笑っていた。
そりゃそうだ。追いかけてくる可能性だってあるだろ。
「な、なんのつもりだ」
上川は息を荒くしながらポケットに手を突っ込み、
「受け取れ!」
手紙を出してきた。
……読むと、ラブレターだった。
聞くと、上川は今迄イエスマンしか周りにいなかった中で、噛みついてくるオレが気になっていたらしい。屈んで睨んでのは上目遣いのつもりだったらしい。
「キミは常に私が間違った方向に行きそうになると、すぐに正してくれた。それが、うれしかったんだ」
今、上川は隣に座り、オレの手を嬉しそうにべたべた触っている。
上川の手は柔らかいし、上川はいい匂いがする。くらくらしてきた。
「あの……それ、やめない……?」
「キミが、そのほうが良いと本当に思っているのならば改善しよう」
……そんなこと言われたら、何も言えないじゃないか。かわいい。
「な、なんで密室に連れて行こうとした?」
「若い男女が密室に長時間。既成事実として十分だろう?」
密室にオレの逃げ場はなかった。
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