まっすぐで。
「貴女なんか殿下の婚約者に相応しいとは思えませんわ!」
目の前でそう声を張り上げるルミーナ様。
はうあう。
もうやめてあげて。そう思わず言いたくなるくらい泣きそうになっているクラウディア。
周囲に集まってきている令嬢方は皆ルミーナ様の味方なのかな?
まあね。この子、本当不器用だから。
言いたいことも言えずただただ黙り込んで俯いてしまったクラウディア。
ああもうあたしが表に出てたらこの子達みんなはっ倒してるところだよ。
それもまずいだろうなあってわかるから、無理に表に出ようとはしないでこうして奥に引っ込んでいるわけだけどさ。
それに。
クラウディア自身も昔に比べたらタフになってきたのかな?
泣きそうにはなってるけどそれでも奥に引っ込んでしまおうとはならない。
今いる状態から逃れようとは思うけど、だからといって意識がなくなったりとかはする様子がない。
(まあそうしたらあたしが出張るわけだけどね?)
もっと小さい頃はちょっとでもダメなことがあるとすぐに引っ込んでしまうくらいな大人しすぎな性格だったけど、それでもちょっとは精神的に強くなったって思ってもいいんだろう。
こうして教室を抜け出して裏山まで駆けてきちゃうくらいには強くなった、かな。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
最後に聞こえたルミーナ様のその声。
怒ってはいるけれどあのこはあれはあれで真っ直ぐだ。
うん。
あたしは嫌いじゃない、かな。
ぐちぐち裏でヒソヒソ陰険なことばっかり話してる子達に比べたら、まだ可愛げがあるってものだよ。
一度でいいからぶつかってみたらいい。
そうしたらきっと仲良くなれそうな気がする。
だからね?
ディア?
貴女はもう少しだけ勇気を出して。
あたしがこんなことを思っているだなんて伝わってないかもしれないけどさ。
でも。
あたしは囁くよ。
もう少しだけ。ほんの少しだけ。勇気を出してみようよ。
そうしたらきっと、楽しくなるからさ。
⭐︎⭐︎⭐︎
ほっぺたに手を当てて。
周囲を見渡すとそこには裏山の管理小屋が見えた。
はあはあと息を切らしながら歩いていたらなんだか少しだけ心の中が暖かくなったような気がして。
午後の授業をサボってしまったのだなぁと今更ながら考える。
もう帰った方がいい?
ううん、でも。
どんな顔してあそこに戻ったらいいのか、もう一つ分からなくて。
ハラハラと小雪も舞ってきた。
ぶるぶると震える身体をなんとかしようと、わたくしは管理小屋に向かってみた。
あそこなら、少しは暖かいかも?
寒さを凌いで少し休もう。
そう思って。
ギイイと扉の音がする。
ゆっくりと開けると、「誰?」と人の声がした。
中は薄暗くよくわからなかったけど管理人さん? かなぁ?
「すみません。少しここで休ませてもらえませんか?」
わたくしはそう声をかけ、扉の中に一歩踏みいった。
降り出した雪はいつの間にかふぶきだしていた。