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クラウディア。

 空がすっかりと冬の訪れを感じさせる灰色に変わり、山から吹きおろす風が手が悴むほど冷たくなった。

 本当だったらこんなところを一人で歩いていたら怒られるんだけどな。

 そんなふうにわたくし、クラウディア・ファウンバーレンは呟いた。

 ふうふうと息をかけ少しでも悴んだ手を温めようと揉んで。

 冷たくなったその手でほっぺたを挟むと少しは暖かいような気もする。


 ふふ。まあいいよね? こんな日くらい。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 全寮制の王立学院アカメディウス。

 国内のすべての貴族はほぼこの学院の卒業生だ。

 というか基本、この学院を卒業することで貴族はそのくらいを得るのだそう。

 爵位は昔ながらの世襲だったりするけど公爵だろうが男爵だろうが基本的に家の格くらいの意味合いしかない。

 だから。

 わたくしの家が公爵家だからって、そんなものはここではなんの意味もなさないのだ。


 ああ別に自分の家が偉いのよとかそんなふうに自慢したいわけでもないし周りの子にそう思ってもらいたいわけでもない。だって、そもそもうちが公爵家なのとわたくし自身には何にも関係はないのだもの。

 うちが公爵家でお父様がお国の要職についていらっしゃるからといってわたくしはちっともえらくはないのだから。

 気弱で、言いたいことも言えずにこうして一人校庭の隅っこを歩いている、そんなちっぽけな存在なのだもの。


 寮と教室の行き来にいつもついてくる侍女のアンと護衛のレンは多分まだ教室の控え室にいるのだろう。わたくしが教室にいるものと信じて。


 時間はまだお昼を少しすぎたばかり。

 昼食は今日は教室でお弁当を食べる予定だったしそのまま本当なら午後の授業を受けているはず、で。

 こんなところでサボっているなんて、ほんと自分でもびっくりだ。


 でも。


 ちょっとあのままあの部屋にいるのは耐えられなかった。




 そもそも、クラスの皆と馴染めなかった自分が悪いのだ。

 そう言い聞かせてみる。


 あんなふうに言われるのも自分が悪いのだ。

 そんなふうにも考える。


 学院に入学してもう三年が過ぎた。

 ジーク様だってもういい加減わたくしのこのうじうじした性格に嫌気がさしてしまわれたのかな。

 入学した当時はいつも手を引いてあちらにこちらにとつれていってくれていたけど、最近はそういう事も無くなって。

 今年になってクラスも別になってからはもうすっかりと声もかけてくれなくなった。

 難しい政治のお勉強も始まったジーク様の選抜クラスは優秀な貴族の集まりで、わたくしのクラスのようにそのほとんどが女性で占められた教養クラスとはレベルが違うし忙しさも違うのだと少し寂しく思いこそすれかまってくれない事に対して恨言を言ったりはできなかったけど、それでなくとも話題が合わずなかなかこちらからお声をかけることもできずにいた。

 入学を機に正式に婚約者という立場になったとはいえ、わたくしには過ぎた男性だとそう、考えてしまうし。


 ああ。

 こんな性格だからクラスの御令嬢方にも嫌われてしまうのかな。


「貴女なんか殿下の婚約者に相応しいとは思えませんわ!」

 そうはっきりとおっしゃられたルミーナ・バッケンバウワー侯爵令嬢の声が、わたくしの耳の奥に残って、何度も繰り返し聞こえてきていた。

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