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友達はそこにいる

作者: 三瀬ヒタ

「醜い豚」

これが僕のあだ名だった。


豚と言われるくらいに僕は太っていた。

多分、他人の目にはこの体型は醜い豚に見えるんだろう。


「おい! ジュース買ってこいよ!」


僕は毎日のようにパシリにされる。僕が何かしただろうか? 迷惑をかけただろうか?


ーー嫌だ!


僕には言い返すことはできない。


ーー助けて!


助けを求めることもできない。

助けてくれたことによっていじめの矛先が向いてしまうのは僕は耐えられない。


放課後

僕は声をかけられた。


「あの……ちょっといいですか?」


腰まで伸びた黒い髪は目を奪われる程綺麗だった。顔立ちもいい彼女は一体誰なのか僕は分からなかった。


「私、道に迷ってしまい……道案内を頼みたんですがいいですか?」


どうやら彼女は道に迷っているようだった。

僕は断る理由もなく二つ返事で返した。


「僕で良ければ」


彼女の曇っていた顔は満面の笑みを浮かべていた。

僕は思わず頬赤くしてしまった。


ーー醜い豚


僕の頭にその言葉がよぎった。僕は醜い豚なんだ。頬を赤くしていたなんて気づかれたら幻滅されるに決まってる。

僕は赤くなっていた頬がすっと消えた感覚があった。


「ここの場所に行きたいんですが分かりますか?」


「はい、分かると思います」


彼女は最近出来たカフェに行きたいようだった。

僕は場所を知っていたので道案内することにした。僕を先頭に歩き始めた。

歩き始めてから数分後彼女は口を開いた。


「あの……あなたの名前はなんて言うんですか?」


「あっ僕ですか! 僕の名前は橋場かずまと言います」


「橋場かずま……覚えたわ! じゃあ私の番ね……私の名前は彩那(さやな)りん」


僕は彼女の名前を聞いただけでも胸が高なった。でも、彼女がもし僕と友達にでもなったら次は彼女が狙われてしまう。

道案内が終われば僕たちは名前も知らなかった男女に戻るだけなんだ。

僕が重い空気を出しているのも悟ったのか彼女は話しかけてきた。


「橋場くんには趣味とかあるんですか?」


なぜそんなことを聞いてきたのか僕にはわからない。

ただ分かることと言えば彼女は優しいと言うことだ。


「僕には趣味はありません。友達もいませんから……」


情けない。彼女は僕と違って充実した生活を送っているのだろう。流行りのものを友達と一緒に楽しんでいるのだろう。


「そうなんですか…………実は私も友達がいないんですよ」


僕は思わず驚いてしまった。こんなにも容姿が整っている人が友達がいないのは不思議で仕方がなかった。

彼女はその後友達がいないの理由を話した。


「私は昔からモテていました。でも、その事が気に入らないのか女子からは陰でいじめられてきました。教科書を破られ、弁当は捨てられ…………もう散々です」


「ぼ……僕も同じです。この豚みたいな容姿が気にいらない人達からいじめられてきました。醜い豚と言われ、教師もわかっていながら助けを貰うことはありません」


二人して自分たちの境遇を話し合った。

それで何かが変わるかけじゃないでも、僕は知って欲しかった。


「…………………………………………………………」


「…………………………………………………………」


僕らの間には沈黙が生まれていた。

次に何を伝えればいいのか僕には分からなかった。


「……あの……私と友達になってくれませんか?」


思いも寄らない言葉だった。これまでの人生で一人もいなかった友達。多分、これからも出来ないと思っていた。

きっと孤独に死ぬのだろうと。

だから、彼女の言葉が信じられなかった。


「……ダメでしょうか?」


「…………ダメじゃないです……でも、本当に僕なんかの友達になってくれるんですか?」


情けない。彼女の言葉が嘘じゃないことはわかっている。でも、彼女の言葉が怖かった。


「もちろん! 友達がいない同士でも、一人だけ友達がいても罰なんか当たりませんよ!」


「………………確かにそうですね」


僕は何をそんなに考えていたのだろうか。人生で初めての友達が彼女で良かったと思った。


「もうそろそろ着きますかね!」


「多分もう少しです」


何気ない会話が僕にとっては大事なものになっていくのを感じた。


「…………着きました」


「うわぁぁぁぁぁ」


彼女は感激の声をあげていた。ここでお別れかと少し寂しい気持ちがあるが僕は胸を押し込んだ。


「じゃあ……僕はこれで失礼しますね…………えっ!!」


咄嗟(とっさ)のことだった。彼女は僕の腕を掴んできたのだ。


「何言ってるんですか……一緒に行きましょうよ。もう友達の中なんですから!」


「…………………………………………」


僕は思わず涙が出てきた。友達として受け入れられたことが嬉しくて涙が止まらなかった。

数分間泣いたあと彼女から話してきた。


「大丈夫ですか……私も泣きそうですよ」


「…………ごめんなさい」


「謝らなくてもいいですよ………………じゃあ入りましょう!!」


僕たちは新作のカフェオレを(たしな)みながら友達が出来たら何がしたいかを日が暮れるまで話し合った。

面白いと感じた嬉しい限りです。

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