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5-レオン様

正月には間に合いませんでしたが、書き溜めたものを連続投稿します。たぶん、一日十話ほど(願望)。←二日目にして書き直しの作業に追われるorz

 アレクシアは笑って、下敷きになったカガンを指さした。「この悪人をとっちめてただけですよ!」


「違います、レオン様!」

 カガンは、このレオンとかいう奴は利用できそうだと心の内でほくそ笑むと、必死に訴えた。

「いきなり襲い掛かって来たのはこいつなんです! 俺はただ欠伸しただけなのに、ぶん殴って来た! 病人の俺をですよ! それで、押さえつけて服を脱がせようとするんです!」


 白髪(はくはつ)の少年は細い眉を顰めて、咎めるように彼女を見た。


「……違います!」彼女は眉を尖らせた。「あなた、よくそんな嘘を平気で……」


「嘘なの?」白髪の少年は言った。


「はい! もちろ……」

「本当です!」カガンは被せるように、媚びるような大声で言った。


 彼女は不愉快そうに目を回して、押さえつけたカガンの腕に力を加えた。彼は唇を噛み締めて、目に涙を浮かべながらも堪えた。


「私は、ただ欠伸をしただけなのに、突然殴りかかられたのです! この女に犯されそうなのです!レオン様! どうぞお裁きを! きっと、あなた様でしかこの悪人を罰することはできないでしょう!」


「彼女はそんなことをする人じゃありませんよ」レオンは落ち着かせるように微笑して見せた。

 そして、彼女の方をまだあどけない目元で睨んだ。

「それで、アレクシア、君は突然、彼に殴りかかったの?」


「違います!」彼女は言った。「だって、このカガンがシアン様を侮辱するようなことを言ったから!」


「いきなり襲い掛かったのは本当です」カガンはすかさず言った。「私はただ、本当に、欠伸をしていただけなのです! それを言いがかりにこの女が!」


「違う!」

「違う! じゃありません!」彼は、声を荒げた。そして、上に座る女の顔を見上げてニヤついていた。


 彼女の真っ白な肌は上気しきって、ピンクに染まった。

「そうじゃなければ、今の状況は何ですか! あなたが後ろから私を殴りかからない限り、男で、カガンである私が負けるはずありません! そうでしょう?」


「なるほど、そうなのかもしれませんね」少年は彼の勢いに押されて、しきりに頷いた。

「アレクシア、私は、君が悪いと思う」


「違います!」


「でも、この状況の説明がつかないよ」


 彼女は唇を噛み締めて、黙り込んだ。


「この人は、きっと謝れば許してくれるよ。そうですよね。カガンさん」

 彼は申し訳なさそうに言った。


「ええ、もちろんですとも」

 カガンは言って、悔しそうに力いっぱい押し付ける女に、舌を出して見せた。


 アレクシアはカガンの上から勢い良く跳ね上がった。カガンはあまりの勢いに思わず悲鳴を上げた。

「わかりました! 私が悪かったんですね! 何も見てなかったくせに! でも、私は絶対に謝らないですよ!」彼女は少年に迫った。


「でも、謝るべきだよ。だって、相手は病人だ」


「いいや、謝りません! どうしてもって言うんなら、決闘ですよ! 決闘!」

 彼女は言って、ベッドに起き上がったカガンを指さした。「決闘! 受けますね?」


「それは違うよ」レオンは小さく言った。

「受けて立ちましょう」少年の小さな声を遮って、カガンはすぐさま答えた。「それで、私が負けた場合、謝ればいいのですね? バカ女、お前が負けた場合は? レオン様。正直、私は、今回の件は謝罪を受けるまでもなく許していますが」


「ほら、カガンさんだって言ってるじゃないか」

 少年は言ったが、今度は彼女に遮られた。

「それなら、一つだけあなたの願いを叶えてあげる。これで心置きなく戦えるでしょ?」


 カガンは鼻の下を伸ばしてニヤニヤと笑みを浮かべるのを止められなかった。

「いいでしょうとも」


 彼女は人差し指を彼に突き立てた。「言いましたよ。絶対に忘れないでください」

 彼女は部屋を出て行こうとしたが、少年は呼び止めた。

「私はアレクシアにも、彼にも傷ついて欲しくないよ。だから、今のうちに謝って、決闘なんてやめて」


 すると、彼女は堰を切ったかのように捲し立てた。「だって、私は一ッッつも悪くないんですもん! 悪いのはあっちなのに、私のせいにしたのはレオン様じゃない! そっちこそ謝ってくださいよ! バカレオン!」

 彼女は言い切ると、どすどすと足を踏み鳴らして去った。


「酷い従者ですね」カガンは言った。


 少年は、彼の体液の滲んだ包帯姿に初めて気づいたかのように、怯えた様子で言った。

「ええ、見苦しいですよね。あの、もし私が謝ったら、彼女の主人として謝ったら、彼女との決闘は取りやめにしていただけませんか? お願いします」

 彼は、謝るよりも深く頭を下げた。


 カガンはただ、この子供は本当に利用しやすそうだ、と思った。

「ええ、もちろんですが、あなたが謝る必要すらもはやないでしょう。彼女は私を公に打ち負かさないと気が済まないでしょうから」

 そして、決闘に勝利して彼女を好きにするより、この少年に恩を売った方がいいと考えた。

「ですから、あえて負けましょう。彼女には内緒で」


 少年は目を輝かせて、彼に微笑した。「本当ですか? もしそうしていただけるなら、これ以上嬉しいことはないです」彼はばつが悪そうに唇を尖らせて話した。

「実は、あなたのことを人殺しで、恐ろしい人だと思っていました。ごめんなさい。でも、凄くいい人なんですね!」


 カガンが笑い出したくて堪えた微笑を見せると、彼の顔は些か赤くなった。


「あ、そうだ。朝食を持ってこさせますね!」

紅白の後半戦よかった!


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