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22-皇帝

 扉が勢いよく叩かれ、衛兵たちは跳ね返された。最後に残った衛兵も、もはや扉を押さえることを諦め、迎え撃つために半身を隠せるほどの大きな盾と長い槍を構え、陣形を作った。


「備えろ!」一人の男が叫んだ。


『オウ!』横に並んだ衛兵たちが一斉に雄叫びを上げた。


 最後に、鉄の軋む不愉快で大きな音が響いた。片方の扉が勢いよく床に投げ出された。

 一瞬と言うには長すぎる一瞬の後、扉の向こうから、それがかき消されるほどの雄叫びが上がった。敵の兵たちが我先にと、まるで狂ったかのように広間に押し入った。投げ出されていたマグナスの死体は敵の雑兵に踏み荒らされ、血の海を広げた。


「止まれ!」カガンは叫んだ。だが、兵士たちは衛兵の盾の壁に取り付いた。


 もう片方の歪んだ扉が無理に開かれ、兵が殺到し、早くも盾の壁は崩れ落ちそうだった。


「止まりなさい!」レオンは叫んだ。


「止まるな、女王を仕留めろ! 仕留めた奴は好きにしていい! 行け、行け!」

 眼帯をつけた男が兵たちの後ろから叫んだ。


 カガンは深々とため息を吐くと、眼帯の男めがけて矢を放った。矢は見事に男のもう片方の目に命中した。男は即死だった。


 扉の向こうに控えていた兵たちは一斉に足を止め、示し合わせたように狙撃手を見た。


「おい! 止まれ、クズども!」カガンは叫んだ。


「止まるな! 何を躊躇っておる!」他の貴族が叫んだ。


 彼はその男の頭を射抜いた。その瞬間に、最前列で交戦している兵を除いた、すべての敵兵たちは足を止めて彼を見上げた。


「よろしい」彼は咳払いして声を張り上げた。

「では、西側の諸貴族よ。俺のことは知っているかね?」


「貴様か、カガンと言うのは」一人の男が言った。禿げ頭で体格がよく、クジンに似た赤ら顔の男だった。「アーカス様の傭兵が、なぜレバン様を殺した」


「契約違反だ。この女は、俺の奴隷になるとアーカスは約束していたはずだ」


「そのようなことは聞いていない!」


「しかし、俺はそう約束した。いいか、この女は俺の物だ。それに、俺は戦時中のあらゆる犯罪への恩赦をもらった。だから、レバンという男を殺したとして、誰も咎めることはできないはずだ。わかるな? 俺は裏切り者ではなく、俺とこの女に危害を加えるのなら貴様らが裏切り者ということになる。異論は?」


「ハッ! 裏切り者が何を言う!」カガンは、叫んだ貴族を素早く射殺した。


「無いな?」


 貴族たちは兵たちの陰に隠れ、弓兵に矢を番わせた。


「もうやめなさい!」レオンは目を赤くして、頬を紅潮させ、眦を決して気迫十分に怒声を発した。少年は前に立っていたアレクシアを押しのけて玉座の前に立ち、恐れとは無縁の、確信に満ちた怒りの形相で彼らの間に立った。

「もうたくさんだ! 双方弓を下ろせ!」


 カガンは素早く弓を収めると、跪いた。


「一体何の大義があって、君たちは同胞(コルキア人)を襲う! アーカスを王位に就けるためか! 女王への恨みか! それすらも分からぬのだろう兵士たちよ!」


「より良い王を就けるためです。レオン様」あの禿げ頭の貴族がまた顔を出して言った。

「女王様が今までに成したことを数え上げてごらんなさい。何も成してはいないのです。しかし、アーカス様を御覧なさい。最近では、短期間の内に『王の道』を完成させたではありませんか。あれのおかげで、コルキア中を恐れさせた遊牧民の襲撃に素早く派兵できるようになったではありませんか」


「あれは、このカガンが成したことだ」

 レオンは厳しく、きっぱりと言った。


「はい。女王様の命によって、私が作り上げました」カガンは態度を一変させて恭しく言った。

「駅の数は八つ。ムツケタ(ここ)からクタシまで一日の行程の場所に一つずつ。全て丘の上に、小さな砦のように建設しました」


「そうですか、それは私の勘違いだったようですね。ですが、他に、さしあたり無いようですが……。ああ、強いて挙げるとすれば奴隷を解放したことでしょうか。あれには手を焼きました」

 男は肩を竦めた。


「確かにそうかもしれない。だが、アーカスの成したことといえば帝国領バルバリアの砦を捨て去り、今城下を燃やしているように、ラジカや帝国に手引きをして自らの国を襲わせることなのか。先代に助けられたのに随分と薄情なものだ」


 弓兵たちからは動揺を感じ取れた。引いた弓の弦が緩んでいた。

 隣国同士仲が悪いのはどこの国にとってもそうで、コルキア人はラジカ人を憎み、ラジカ人はコルキア人を憎んでいた。西の諸貴族に率いられたこのコルキア人兵は、コルキアのために無王な女王を廃し、アーカスを戴冠させるための戦いだと言い聞かされていたため狼狽し、不安を隠しきれずにいた。


「あの厚顔無恥なアーカスは、今頃クタシの砦に向かって進軍の準備をしている頃合いだろう! さあ、兵たちよ! 貴様たちは誰のために戦うのだ!」


 禿げ頭の貴族は拳を握って、怒鳴り散らした。「もういい! 放て! レオンも殺していい!」


 兵たちのぶつかり合う喧騒の中、再び弓の鳴る音が張り詰めた空気の中でよく響いた。


 レオンは、息を吸い込んだ。

「兵士たちよ! 大義をやろう! 帝国の正統な継承者こそが私だったのだ!」

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