スパイ
昔フルムル王国という国にディーンという人がいた。
彼はとても紳士的でまたとても多才な人物であり人々からはディーン氏と呼ばれていた。彼はある日フルムル王国の国王に呼ばれた。
「ディーン氏、あなたは紳士的な人物で才能もある。また私もとても信用しています。報酬はいくらでも出すので他国のスパイをしてくれませんか?」
「あまり気は進みませんが、王様の頼みでしたら断るわけにはいきませんね。しかしなぜスパイを送り込むのか理由を教えてくださいませんか?」
「隣のツノイ王国の王が変わってからツノイ王国がめざましい発展を遂げている。何か秘密があるに違いないと思いスパイを送ろうと思ったのです。」
「なるほど、分かりました。出来るだけのことはやりましょう。」
こうしてディーン氏はツノイ王国にスパイをしに行った。
ツノイ王国は審査を通過しないと入国ができなかったがディーン氏の紳士的な性格が幸いし、簡単に入国ができた。入国したディーン氏はまずは情報を集めようと思い、近くの喫茶店のマスターに話を聞いてみた。
「私は様々な国を旅しているのですが、この国はそのなかでも特に素晴らしい国ですね。」
マスターはそれに気を良くした。
「そうでしょう。今の代の王様になったときからとても景気がよくなっていったのです。」
「それには何か理由があるのでしょうね。」
「ええ、前の代の王様は人間でしたから、景気が悪かったのです。」
それを聞き、ディーン氏は、首をかしげた。
「まるで、今の王様が人間ではないという意味に聞こえるのですが。」
マスターは当然のように言った。
「ええ、その通りですよ。」
「では、今の王様は一体…?」
「今の王様は我が国の科学者たちが長い年月をかけてつくりあげた精巧なロボットなのです。」
ディーン氏は内心で驚いた。まさか人間じゃないなんて。
その間もマスターは話し続けている。
「ロボットが王様になることで前まではあったミスなどがすべてなくなりました。そのお陰で我が国はここまで発展することができました。」
ディーン氏は、平静を装い聞いた。
「それは素晴らしいですね。しかし、そんな重要なことを言ってしまってよろしいのですか?」
「もちろんロボットは合理的な思考をしていますので戦争などをするという野蛮な判断をしないのです。つまり、他の国も全てロボットを国王とすれば戦争などが確実に起こらないのです。なのでむしろ広まったほうがいいのです。」
「なるほど、そういうことですか。」
「そうだ、旅人さんもぜひ他国にこの事を広めて下さい。」
「ええ、分かりました。」
ディーン氏は、お金を払い喫茶店を出た。そして呟いた。
「やれやれまさか国王がロボットだとは、しかしこの事を王様に伝えればロボットになれと言っているようなものだ。もしかすれば口封じのために殺されてしまうかもしれない。」
ディーン氏がこの事を報告しなかったのはいうまでもない。




