【IF】シエテルート2nd 3-c-1
▷追いかける
▷b追いかけない
▶c玄関の扉に八つ当たりする
シエテは、二人を追うことも出来ず、しかしただ見送ることも出来ず、イラつく気持ちを玄関の扉にぶつけていた。
足で思いっきり扉を蹴ると、「ドガッ!!」と大きな音が出たが、それを気にする余裕はなかった。
しかし、まだそこまで離れていなかったシーナとクリストフには、大きな音が聞こえたようで、心配した二人が引き返してきたのだ。
二人は、鍵のかかっていなかった玄関の扉を開けて心配そうに玄関にいたシエテに声を掛けた。
「お兄ちゃん?!大丈夫!」
「おい、シエテ大丈夫か?!」
まさか二人が引き返してくるとは思っていなかったシエテは、苦笑いを浮かべながらとっさに言い訳をしていた。
「心配をかけてしまったな。すまない。ちょっと、疲れていたのかよろけてしまった」
自分でも苦しい言い訳だと思ったが、二人は納得してくれた。
「悪い、疲れてるところに押し掛けて……。ゆっくり休めよ?」
「お兄ちゃん、ごめんね。いつでもいいから帰ってきてね?ちーちもはーはも心配してたよ?」
二人からかけられた、シエテを心から心配する言葉に心苦しくなった。
(二人に心配をかけて、俺は何をしているんだ……。クリフはいいやつだ……。きっとシーナを幸せにしてくれるさ。俺なんかよりもずっと……)
そう考えたシエテは、クリストフの背を叩き、まだ心は苦しかったが、応援するように言った。
「クリフ、シーナを頼んだぞ……」
まさか、シエテから応援されるとは思っていなかったクリストフは、力強く頷いた。
「ああ!勿論だ!」
二人のやり取りを見ていたシーナは、眉をひそめながらも呆れたように言った。
「お兄ちゃん?大げさだよ?家まで送ってもらうだけだよ?」
そんなシーナを見た二人は、お互いに苦笑いを浮かべていた。
シエテは、シーナとクリストフに心配をかけたことを詫びてから、改めて二人を見送った。
玄関先で、二人が見えなくなるまで見送ってから、家に入ったシエテの表情は、先程よりも多少は、ましなものになっていた。
翌日、シーナがシエテの家に訪ねてきた。
シエテは、もしかしたらシーナが訪ねてくるかもしれないと思っていたが、予想通りやって来たことでどんな事があっても受け入れようと腹をくくった。
「お兄ちゃん……。私、お兄ちゃんに相談があるの」
「ん?どうした?言ってごらん?」
シエテには、相談ごとがクリストフのとこだと予想は出来ていたが、敢えてシーナの口から聞くために何も知らないフリをした。
「あっ、あのね……。昨日、クリストフに……、好きって……」
「そうか……。それで、シーナはどうしたいんだ?」
「えっと、少し……、ううん。凄く困ってる……」
「どうして?クリフのこと嫌いか?」
「ううん。クリストフのことは、友達として好きだよ……」
「そっか……。男としては?」
「えっと…………」
シエテが、敢えてそう聞くと、シーナは口籠って何か言いづらそうにもじもじしていた。
シエテは、シーナがなんと答えるかなんとなく予想がついていた。
きっと、「今まで、そんな風に考えたことなかった……。でも、好きって言われて、ドキドキしてる」とか言って、クリストフとのお付き合いについて相談されるのだろうと。
しかし、シーナの次の言葉にシエテは完全に不意を衝かれていた。
「わ、私!!好きな人がいるの!!だからクリストフには、きちんと好きな人がいるって伝えたの……。だけど、クリストフが、好きな人は誰なんだって……。相手次第では、諦めないって……。だから困ってるの…………」
シーナの言葉に、シエテの脳は活動を停止する寸前だった。
まさか、シーナに好きな人がいるとは思っていなかったのだ。
シエテは、震える声でなんとか言葉を振り絞った。
「シーナ……。その好きな人って……?」
「言えない……。だって、言ったら迷惑になっちゃうから……。言わない」
「迷惑になるって……、まさか相手は恋人でもいるのか?」
「いないと思う……。でも、私の気持ちを知ったら迷惑になるから言えない」
シーナの言葉に、シエテは否定的な言葉を返した。
「まさか、シーナに好きって言われて迷惑になるやつなんていないよ」
「ううん。きっと迷惑がられるし、嫌われちゃう」
「そんな事無い!可愛いシーナに好意を持たれて嫌がるやつなんてこの世に存在しない!!」
「いるもん!!」
「いない!!」
いつの間にか、気がつくと二人は言い合いになっていた。そんな中、シーナがシエテに言ったのだ。
「じゃぁ、もし私がその人に告白して、断られたら責任とってくれるの?!」
「ああ、いいぞ!その前に、シーナに告白されて断るやつなんていない。賭けてもいいぞ?もし、シーナが相手に告白して、相手がシーナのこと振ったら、シーナの勝ち。俺は、シーナの言うこと何でも聞いてやる。ただし、シーナが告白して、相手がそれを受け入れたら俺の勝ちだ。そしたら、シーナは俺のいう事何でも聞くんだぞ?」
「いいよ!!絶対だからね!!なんでもだからね?絶対だよ!!」
「ああ、男に二言はない」
そう言って、二人は言い合いから一転、よくわからない賭けをすることとなっていた。
シエテは、賭けに勝つ自信があった。可愛いシーナを振るやつなんてこの世に存在しないと本気で思っていたからだ。




