【IF】シエテルート2nd 3-a-2
シーナが目を覚ました時、シエテの家には誰もいなかった。
リビングの机に、一通の手紙が残っていた。
宛名はなかったが、きっと自分宛てだと確信していたシーナは封を切って中の手紙を見た。
手紙にはこうあった。
『身勝手な兄ですまない。お前に合わせる顔がない。もう二度とお前の前には現れないと誓う。本当にすまなかった』
そう書かれていたのだ。
その手紙を読んだシーナは、その場で泣き崩れていた。
シエテが、いなくなって3ヶ月が経っていた。
シーナは、あることに怯えていた。
あの日以降、月のものがきていないのだ。
まさかと思いながらも、もし子供が宿っていたらと考えると怖くてたまらなかったが、実の兄との間で子供を身籠ってしまったなどと誰に言えるというのだ。
日々、不安と恐怖に押しつぶされそうになっていたシーナは決意した。
シエテを追うことを。
シエテが街からいなくなってから、塞ぎがちのシーナを心配した両親には手紙を残しただけで、何も言わずに家を出た。
家を出てから、2ヶ月。道行く先々でシエテのことを聞いて回った結果、とうとう居場所を掴んだシーナは、ある町の食堂に足を運んでいた。
寂れた食堂の端の席に、シエテの姿を見つけたシーナは急ぎ足で駆け寄った。
「みっ、見つけた!!」
下を向いていたシエテは、突然の声に驚いた表情で顔を上げた。
そして、目の前にいるシーナを見て顔を歪めた。
シエテは、泣きそうな表情になりながらもその場から逃げようとしたが、シーナがそれを阻んだ。
「待って!!お願い、行かないで!!私を一人にしないで!!」
シーナの怯えを含んだ、必死な声にシエテは逃げることをやめた。
シエテは、悩んだ結果、シーナを自分の住処に案内することに決めた。
現在シエテは、町外れにある小さな小屋に住んでいた。
普段は、町のなんでも屋といったような仕事をしていて、時には町の外に出た魔物や凶暴な野生動物を駆除して生計を立てていた。
シエテが案内した小屋に着いた途端、シーナは泣き崩れた。
「にーに!!どうしよう!!わっ、私、あの日から生理がこないの……。兄妹なのに、にーにの赤ちゃん……。どうしよう……、どうしよう」
シーナは、壊れた人形のようにそれだけを繰り返して泣き崩れた。
シエテは、まさかあのときの行為で子供が出来てしまうなんて、思ってもいなかったのだ。しかし、今思うと、避妊もせずに何度も欲望を吐き出したのだから、子供が出来てもおかしくはなかった。
それからシエテは、シーナとこの小さな小屋で暮らし始めた。
初めは、シーナを家に帰そうとしたが、次第にシーナの様子がおかしくなって行くことに気が付き、一緒に暮らすことに決めたのだ。
シーナは、シエテに再会した日から少しずつ幼児退行していったのだ。
今は、10歳くらいにまで後退していた。
シーナのお腹が少し大きくなってきた時、シーナの悪阻が始まった。
悪阻で苦しむシーナに、気が少しでも楽になるようにと妊婦が飲んでも問題ない薬湯を買いに少しだけ家を離れた。
シエテが、薬湯を購入して小屋に戻ると、シーナがお腹を抱えるようにして倒れていた。
慌てて、シーナに駆け寄ると、シーナのスカートが血だらけになってたのだ。それに気が付いたシエテは、シーナを抱えて町医者のところまで駆け出していた。
診断の結果、シーナは流産していた。
町医者の話では、体そのものは健康そのものだったため、精神的なものが原因だろうと言っていた。
シーナは、流産してから眠っている時間が増えた。
起きていても、ぼうってして、景色を見るだけで時折、「赤ちゃん……」と呟くだけで、他には何も言葉を話さなくなった。
シエテも、仕事を減らしてできるだけシーナと一緒にいるようにした。
シーナが、悪夢で魘されないようにと、特製の薬を毎日飲ませた。
シエテも、同じ薬をシーナよりも少し多めに飲んだ。
いつしか、二人は幸せな夢の世界に旅立ち、覚めることのない幸せに包まれていたのだった。
【IF】シエテルート2nd BADEND 完




