【後日談】初夜での出来事
結婚式が終わり、その後に開かれた祝いの食事会も終えた俺とシーナは、夫婦の寝室にいた。
夫婦の寝室を挟んで、それぞれの部屋に備え付けられているバスルームで体を清めてから寝室に向かうと既にシーナが夜着姿でベッドに所在無さそうに座っていたのが目に入った。
俺は、緊張を押し殺してゆっくりとベッドに向かった。
緊張しているシーナの髪はまだ濡れていた。
それに気が付いた俺は、ベッドに座ってからそんなシーナの茶色の髪を手に取り、タオルで水気を取った。
俺にされるままに、髪を乾かされているシーナはまさに借りてきた猫のようだった。
粗方水気の取れた髪を、魔道具を使って乾かしていく。
普段三つ編みに結っている髪を下ろしている姿に、無性にドキドキした。
無言でシーナの髪を乾かしていると、恐る恐ると言った感じでシーナが声を発した。
「あの……、カイン様。ありがとうございます」
「いっ、いや……」
緊張から、会話がまったく続かなかった。
しかし、そんな俺に目の前のシーナの夜着姿は目の毒過ぎた。
薄布で作られた夜着は、体の線がよく分かった。
想像通りの華奢な体の線に、自然と喉を鳴らしてしまった。
そんな俺にまったく気が付いていないシーナは、ベッドの上にちょこんと腰掛けてから、俺の目を真剣に見つめて言った。
「カイン様……、えっと……。不束者ですが、末永く可愛がってください」
そう言って、シーナは可愛らしく微笑んだのだ。
俺は、シーナをデロデロに甘やかす自信があった。
しかし、シーナの口から「末永く可愛がってください」などという言葉が聞けるとは思っていなかった俺は、心臓が爆発してしまいそうだった。
堪らず俺は、シーナの細い体を抱きしめていた。
「ああ、ああ。一生大切にする」
抱きしめているからシーナの表情は見えなかったが、微かに微笑んだような気配が伝わってきた。
俺は、結婚もしたしもう良いよな?という思いから、あの日以来していなかった深い口付けをするため、シーナの小さな唇に口付けた。
初めは触れるだけの、次第に口を割り舌を差し入れて深く侵入していった。
シーナは、二度目の深い口付けに苦しそうにしていた。
俺は、一旦唇を離して、激しく呼吸を繰り返すシーナに優しく言った。
「シーナ、呼吸は鼻でするんだ」
俺の言葉を聞いたシーナは、荒い息をしながらも頷いていた。
シーナの呼吸が落ち着いたのを確認した俺は、再び深い口付けを交わしていた。
シーナの唇の甘さに俺は夢中になっていた。
夢中でシーナの唇を貪っていると、次第にシーナも俺の動きに応えてくれるようになってきたことに俺はさらに夢中になっていった。
いい雰囲気の中、俺は抱きしめていた片方の腕を外して、そっとシーナの胸に触れようとした。
後もう少しで、シーナの胸に触れそうになった時にシーナがとんでもないことを言ったことで、俺はシーナの胸に触れそこねてしまった。
「はぁ、はぁ……。カイン様……。まって、このままじゃ、赤ちゃん出来ちゃう……、キャベツ畑の準備がまだなのに……」
えっ、シーナ……。まさか、そんな!!
シーナの言葉に俺は、まさかの展開に頭をかち割られたような気がした。
俺は、恐る恐るシーナに聞いた。仕方ないだろう?だって、シーナが子供向けの赤ちゃんの出来る方法をここで口にするとは思ってもいなかったんだから。
「えっと、シーナさん?赤ちゃんはどうしたら出来るのなか?」
俺がそう言うと、シーナは恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。
「いっ、言わせないでください……。カイン様のエッチ……。赤ちゃんは、夫婦が愛し合うことで、コウノトリがキャベツ畑に赤ちゃんを運んできてくれるんです……」
まさかの答えに俺は、焦った。相当焦ったよ。
「えっと、シーナさん。それで、そのキャベツ畑に届いた赤ん坊は、どうやって母親の腹から生まれるんだ?」
俺の問いを聞いたシーナは、目を丸くしていた。そんな表情も可愛いな。
「えっ?そう言えば、どうやってお母さんは、赤ちゃんを産むんでしょう?」
そう言って悩みだしてしまったシーナに、俺は真実を告げるべく顔を近づけた。
「そっか、不思議だな。でも、俺はどうやったら出来るか知ってるから大丈夫だ」
「本当ですか?!良かった。私、カイン様に似た男の子が良いです!どうしたら、カイン様似の男の子を産めますか?」
っ!!!なんだその可愛い返しは!!俺は、シーナ似の女の子が良い!!だが、嫁に出す気はない!!
俺がそんな事を考えている間にも、シーナは俺に抱きつきながら幸せそうな笑顔で言っていた。
「ふふ!早く赤ちゃんに会いたいですね。男の子でも女の子でも、カイン様との赤ちゃんなら嬉しいです」
「そうだな。俺もどちらでも嬉しい」
そう言って、シーナを抱きしめてからそっとシーナの夜着を脱がせていった。
シーナは、驚きの声を上げて抵抗したが俺はそれを唇で封じた。
激しい口づけを交わしている間にシーナの抵抗は弱々しいものとなっていった。
そして、とろんとした表情になっていたシーナの耳に口を寄せて俺は真実を告げた。
交情についてをだ。
俺の説明に首を傾げていたシーナだったが、口付けを交わしながら裸になっていた俺の体を見て顔を赤くしながらも、自分にはない男の象徴を目の当たりにしたシーナは、それを不思議そうに眺めていた。
そう、まるで生まれて初めて見るかのような反応だっだ。
まぁ、その状態のモノを見るのが初めてだということは分かるが、それにしても……。そこまで考えた俺は一つの仮説が頭をよぎったのだ。
まさかと思ったが、今ここで聞くのは憚られたので、明日シエテに確認することにした俺は、未だに俺のあそこに不思議そうな表情をしていたシーナに視線を向けた。
「シーナ……、いいか?」
俺の言葉に、ビクッと体を震わせたシーナだったが、覚悟を決めたと言った表情で俺の言葉に首を縦に振って答えてくれた。
「はい……。怖いけど、カイン様だから大丈夫です」
そう言ったシーナのことが愛おしくて堪らない俺は、再び口付けを再開させていた。
そして、シーナの可愛い胸と、誰にも触らせたことのない最奥を愛撫した。
翌日、昨日の交情の所為で疲れ果てているシーナの寝顔を見ながら俺は胸に広がる幸せに浸ったのだった。
余談だが、翌日シエテにシーナと一緒に風呂に入ったことは?と問いただすと、彼は真っ赤な顔で言ったのだ。
「ばっ、バカ野郎が!!シーたんにそんな汚らしいものを見せてたまるか!!領主様もそんな汚いもん絶対にシーたんに見せないでくださいね!!」
と全力で言われてしまったが、すまない。もう手遅れだと俺は心のなかで義兄に侘びたのだった。
【後日談】初夜での出来事 おわり




