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【IF】ざまぁ、滅亡END 4

 それは、以前イシュミールを飲み込んだあの黒い影だった。

 そんな事を知らないイシュタルは、その黒い影に言ったのだ。

 

「ねぇ、そこのあなた。わたくしを助けなさい!血が止まらないの。止血して、お願いよ。とても痛いの、お願い助けて」


 黒い影は、そんなイシュタルを面白がるように観察するだけだった。

 そして、黒い影は言った。それはそれは面白そうに。

 

【ねぇ、知ってる?悪いことをした子にはお仕置きが必要なんだよ?】


「えっ?何を言っているの?いいから、早くわたくしを助けなさい!」


【あはは!全然立場わかってないね、君~】


「あなたこそなんなの!!さっさとしなさい、グズ!!」


【ふっふ~ん。こんなやつのせいで、イシュミールは死んじゃったんだ……。可哀相に……。最後まで抗って、本当にいい子だった。だから、味もとっても美味しかった。心が少し黒くなってしまっていたけど、あんなの表面だけで、内側は真っ白で綺麗だったなぁ~。表面の苦い部分をなくせば、とっても甘くて蕩けてしまうような美味しさだったよ~。また食べたいけど、もう食べきっちゃったしなぁ。生まれ変わったら、また見つけ出して食べたいくらいだよ~。とっても綺麗な魂は、甘露のように甘くて美味しかった】


 そう言って、黒い影はにっと、口元を裂けたような三日月にして笑った。

 

「あっ、あなた……、今なんて?姉様を食べた?嘘よ!!嘘よ!!この悪魔!!そんな嘘信じないわ!!」


 イシュタルがそう言って喚き出すと、黒い影は面白そうな声音で言ったのだ。

 

【何だ、分かっているじゃん。僕は、悪魔だよ?と言っても、本物じゃないけどね~。あの塔に閉じこめられた怨念たちの集合体?っていうのかな~。最後に閉じこめられた、イシュミールの綺麗な魂と、稀有な精霊眼のお陰で、あの忌々しい結界を破って外に出られたんだよね~。そういう意味では、君に感謝だね!!でも、イシュミールがあまりにも可哀相だったから、彼女に代わって僕が君たちに復讐することにしたんだ。美味しい魂のお礼にね!!】


「嫌よ!姉様の魂を食べたって……、嘘よね?嘘だと言って!!」


【嘘じゃないよ~。あぁ~、本当に美味しかった。美しい魂に刻まれた苦しみがアクセントとなって、旨味が増してたなぁ~】


 イシュタルは、黒い影の言うことに何度も「嘘よ!」と言って否定を繰り返した。

 しかし、黒い影はそんなイシュタルのことが面倒になったのか、うるさそうにしながら冷たく言い放った。

 

【うるさいよ君。はぁ、うるさくて適わないや。よし、喋れないように舌を抜こう】


 名案だと言わんばかりに黒い影は、悲鳴を上げるイシュタルの事をまったく気にせずに、【それ~】と、楽しそうに叫び声を上げるイシュタルの舌を引き抜いたのだ。

 

「いや~~~~~!!!!!※※※※※※※※※※※※※!!!!!」


 舌を抜かれたイシュタルは、叫び声すら上げられずに、うめき声さえも封じられていた。

 そんなイシュタルに向かって、黒い影は実に楽しそうに言った。

 

【ようやく静かになった~。よし、これからが本題だよ。君には、その惨めな姿で地獄を味わってもらうね?】


 そう言ったあと、黒い影は楽しそうな笑い声を上げて風のように消えていった。

 

 それからは、イシュタルにとっての地獄の日々が始まったのだ。

 歩くことも出来ず、しゃべることも出来ない。

 辛うじて、身を捩ることで芋虫のように這いずることは出来た。

 しかし、イシュタルの周りには誰もいなかった。

 ただ、孤独だけがあった。

 

 身動きの出来ないイシュタルは、知り得なかったが既にアメジシスト王国は滅んでいた。

 国中の人々が、謎の黒い血を吐き次々に息絶えていったのだ。

 その知らせを聞いた隣国は、巻き込まれては適わないと、街道を封鎖したのだ。

 

 そして、雨の降り続ける中、黒い血に塗れたアメジシスト王国は、静かに滅亡したのだった。

 ただ、そんな中ただ一人生存し続けるものがいた。

 死ぬことも出来ず、ただ雨に打たれ、虫のように這いつくばる存在が。

 彼女がその後どうなったのかは、誰一人として知る者はいなかった。

 

 

【IF】ざまぁ、滅亡END 完

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