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第七章 二度目の恋と最後の愛 3

 どさくさに紛れて、とんでもないことを知ってしまったとカインは、冷や汗をかいていたが、本来の目的を遂げるべく、改めて国王と王妃に向かい合った。

 技術特区で受け取ってきたものを取り出し、二人に見せてから説明を始めた。

 

「これを見てください。これは、俺から技術特区に依頼して用意したものです」


 カインが見せたものは、戸籍の登録に使う魔道具だった。

 それを見た二人は首を傾げて、魔道具を手にとって眺めた。

 カインは、二人にその魔道具について説明を始めた。

 

「その魔道具は、人の持つ特殊な能力を判別することが出来ます。例えば、魅了眼と言った特殊な力をです」


 カインの言葉に、国王と王妃は息を呑んだ。

 さらに続けてカインはもう一つの魔道具の説明をした。

 

「そして、これは人の精神に影響を及ぼすような特殊な力を封印するための魔道具です。俺からの要件は、今後戸籍の登録の際は必ずこの魔道具を使うことと、人の精神に影響を及ぼすような力があると分かった場合は、必ずこの魔道具で力を封印するという事です。俺は、これを完成させるためにイシュタルを今まで生かしていました。本来は、法の下に裁かれるべきでしたが、ミュルエナが裁いてしまっているので、それは叶いませんが」


 そう言ってから、カインは改めてイシュタルの魅了眼から始まったイシュミールとの入れ代わりについて語った。

 そして、イシュタルを捕らえていたことも全て話したのだった。

 

 ある程度ミュルエナから報告されていたのか、国王と王妃はただ静かに話を聞くだけだった。

 カインが全て話し終えた時に、国王は魔道具の量産を改めて特区に依頼し、出来上がり次第各領地に送るように手配すると言った。

 それを聞いたカインは安堵の息を吐いた。

 しかし、カインにはまだしなければならないことがあった。

 民衆に伝わっている、イシュミールの汚名を雪ぐことが終わっていなかった。

 カインは、自分の名で事のあらましを公表することを国王に言ったが、それは拒否されてしまった。

 

「何故です!?俺の名前で全てを公表することのどこがいけないんですか!!」


 カインが、国王に食って掛かったが、それはあっさりとかわされてしまった。

 

「カインよ。これはとても重大な問題だ。たとえ当事者だとしても、お前の名前で公表すべきものではない。これは、儂の名で広く国民に知らせる。あの時、お前の様子は明らかに可怪しかったが、儂は何もせずに刑を決めてしまった。王妃には、後で叱られてしまったが、そのときにはもう遅かった。随分と時間が経ってしまったが、本当にすまなかった。イシュミール嬢にも悪いことをしてしまった……」


 そう言って、国王は最後は眉を寄せて謝罪の言葉を語った。

 しかし、国王の行動は早かった。カインにそう言ったあと、予め用意でもしていたかのような迅速さで国中に知らせを出したのだった。

 

 その知らせには、18年前に起こった、アックァーノ公爵令嬢のイシュミールの身に起きた悲劇とその結末について知らせる内容だった。

 そして、悲劇の元凶たるイシュタルは既に、カインの手によって断罪され葬られている事が知らされたのだった。

 その知らせと共に、人々には魅了眼の恐ろしさが伝えられたのだった。

 そのことから、新しい戸籍登録にも民衆は納得する者が大多数だった。

 中には、特殊な力を使って悪事を働こうとする考えを持つ者もいたが、それについては、裏社会のボスとなったミュルエナが許さなかったため、表と裏、どちら側も新しい戸籍登録に従順に従ったのだった。

 

 その知らせとは別に、昨日の騒ぎについてはカインの名で知らせが出された。

 その内容は、「雇っていたメイドが手元を狂わせて屋敷が燃えて、運悪く爆発した」というものと、「年の離れた女性と両思いになったため婚約を考えているが、その女性の兄に反対されて口論になった」という、事実ではあるが、真実でもない当たり障りのない内容が伝えられたのだった。

 しかし、昨日の騒ぎを聞いていた者たちは、その内容に多少の不満はあったが、「あまりお貴族様の内情をああだこうだ言うのも面倒事に巻き込まれそうで面倒だ」という、心情から深く追求されることはなかったが、あの日飛び交ったカインの、変態疑惑や童貞疑惑は実しやかに囁かれていたのは仕方ないと言えよう。

 ただし、ロリコン疑惑については疑惑ではなく真実として広く知られることになるのだった。

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