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第一章 そうだ、王都へ行こう!! 2

 三人は、早速シーナの家に向かった。両親はあっさり王都行きを許してくれた。

 そして、シエテは案の定盛大に渋った。

 それはもう、口を開けば「ダメダメ」「駄目ったら駄目」「ダメ、絶対ダメ」と、駄目駄目駄目と猛反対した。

 

 猛反対を受けたシーナは、頬を膨らませてそんなシエテに反対される度に言った。

 

「行くよ!!ちーちとはーはは、行ってもいいって言ったよ!にーにに反対されても行くったら行くの!」


 こうして、産まれて初めてシーナとシエテは兄妹喧嘩をした。

 

 初めての兄妹喧嘩でどう仲直りして良いのか分からなかった二人の喧嘩は思いの外長引いた。

 シーナは次第に元気を無くしていき、シエテはシーナ禁断症状が出たのか日に日に窶れていった。

 

 そんな二人を助けたのは、初恋を見事に散らしたクリストフだった。

 仲直りがしたくても意地を張ったシーナと、王都行きは絶対反対で折れるわけにはいかず八方塞がりになっているシエテを見かねての行動だった。

 

 クリストフが、シーナとシエテに言ったのだ。

 

「なぁ、こんなことで喧嘩してもったいないよ。シエテがそんなに王都行きを反対するのかは分からないけど、シーナちゃんだっていつまでも子供じゃないんだ。いつかはお前の元を離れる時が来る。それに、シーナちゃんも。シエテがいつまでも側にいると思って意地を張っているみたいだけど、シエテもいつか誰かと結婚して、シーナちゃんの直ぐ側に居られなくなる時が来るかもしれないよ?だから、喧嘩はもうお終いにして、仲直りしたら?」


 真剣な様子でそう言ったクリストフの言葉を聞いたシーナとシエテはこれからのことを改めて考えた。

 しかし、お互いにお互いが離れていく未来は想像できなかった。

 

 そこで二人はほぼ同時に、お互いの顔を見やって、同時に言った。

 

「そうだね。にーにと喧嘩するのは寂しいし疲れるからもうしたくないよ」


「シーたんと喧嘩するのは物凄く寂しいし、死にたくなるからもうしたくないな」


 若干シエテの物言いが重くもあったが、それを合図に初めての兄妹喧嘩は幕を閉じた。

 しかし、シエテが王都行きを許したわけではなかった。

 そこで、シーナは改めて王都行きに反対する理由を尋ねた。

 

「にーに?どうしてそんなに反対するの?お姉ちゃんは、何度も王都に行っているみたいだし、大丈夫だと思うよ?」


 シーナの質問に、シエテは苦虫を噛み潰したような表情になりながらもボソボソと言った。

 

「王都は忌まわしい場所だから……」


 そこまで聞いたシーナは、全てを察した。シエテが前世のことで王都行きを心配してくれていたことに。

 しかし、シーナはあっけらかんとした様子で言った。

 

「にーには、心配性だね。()()だから大丈夫だよ」


 その言葉を聞いたシエテは、最初は驚いた表情をしてから、次に困った表情をして言った。

 

「そうだな。もう、俺達(・・)は、俺達(・・)なんだよな。分かった。だが、俺もついていくのが条件だ」


「にーに、ありがとう」


「ごめん。ちょっと神経質すぎた」


 クリストフは、よく分からないが双子の中で決着がついたのを見てうんうんと一人頷いていた。

 

 こうして、王都行きはシエテが同行するということを条件に許しが出たのだった。

 

 

 王都には、レイゼイ家が所有する馬車で向かうことになった。

 レイゼイ家の馬車は、技術特区の技術の粋が詰まった特殊な馬車で、一見普通の馬車に見えたが、不思議なことに中は、見た目よりも広い作りになっていた。

 乗り心地も良い馬車に揺られて、四人は王都に向かった。

 

 初めての馬車の旅にシーナは、楽しそうにしていた。

 それを見てシエテは、一瞬前世の記憶が蘇ったが、今は今だと頭を振ってそれを追い出した。

 

 レイゼイ家の馬車は、不思議なことに他の馬車よりもスピードが出たため、数日で王都に到着した。

 王都に到着して直ぐに、技術特区へと向かった。

 

 技術特区。

 

 それは、百年以上前に異世界から召喚された人達が多く住み、さらには異世界の知恵で様々な魔道具が作られ、魔道具技師たちが多く住む区画でもあった。

 

 フェルエルタとクリストフの免許の更新は、旅の疲れを癒やしてから行うということで、王都に到着した二日後に行われることになった。

 四人は、技術特区に設けられた宿泊施設に滞在することになった。

 

 シーナとシエテは、二人が免許の更新を終えるまでは技術特区を見て回ることにした。

 そこは、不思議な道具がたくさん置かれていて、見て回るだけでも楽しいものだった。

 王都の観光は、二人の用事が終わってから四人で回ろうということになっていた。

 

 二人の用事が終わった日の翌日、王都観光をするため四人は商業区画に出かけていった。

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