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第三章 ちょっと待て、どこがゴリラだ!ゴリラ成分ZEROだろうが!! 1

 おっさんが実は領主で、その上あのカインだとシーナが知ってから何かが変わったかというと、何も変わらなかった。

 

 カインは、以前と比べると領主屋敷に居るようになってはいたが、相変わらず領地を回り、王都と領地を行き来していた。

 シーナも相変わらず庭園で作業をして、暇を見つけて森で狩りをする日々だった。

 

 いや、一つだけ変化があった。

 

 シエテのシスコンが酷くなった。

 以前から、「シーたん、シーたん。好き好き」だったが、現在は、「シーたん、シーたん。好き好き大好き。ハグして良い?もちろん良いよね?」と、進化していた。

 

 なにかあると、ぎゅっと抱きしめるように進化していたのだ!!

 シーナも最初は、思わずビンタを見舞ったりもしていたがあるとき気がついたのだ。

 シエテがぎゅっとする時は、シーナが必ず不安に揺れているときだと。

 しかし、八割ほど何もないときにもぎゅっとしてくるので、やはり錯覚だと直ぐに考え直した。

 

 月日が経ち、シーナとシエテは15歳となった。

 二人は相変わらず、家の手伝いをしていたがシーナはそろそろ領地の外を見てみたいと言う思いが抑えられなくなってきていた。

 身を守る方法も、狩りの仕方も覚えた。お金を使って買い物をしたことはなかったが、読み書きと計算もできるので大丈夫なはずだと。

 そうすると次に必要なものは、旅をするための資金だった。

 今まで必要なものはすべて与えられていたため、無一文だった。

 お金を稼ぐ方法を考えて一人悩んでいるとシエテがニコニコしなら近寄り、抱きついてきた。

 

「シーたん、シーたん。可愛いシーたん。ぎゅ~~~」


「にーに……。ちょっと、苦しいよ」


「あっ、ごめんね。でも、シーたんが可愛すぎるのも悪いんだぞ」


「……」


 頭がお花畑と化しているシエテを少し冷めた目で見ていたが、シエテはそれに構わず、少し力を緩めたもののハグすることはやめなかった。

 

 少し面倒に思いつつも、シーナは何気なさを装ってシエテに聞いた。

 

「えっと、これは友だちのことなんだけど」


「えっ?トモダチ?だっ、誰!それは俺も知っている人かな?それとも、俺の知らない人かな?」


 シーナは、本題に入る前に切り出し方を誤ったことを二重の意味で後悔した。

 生まれてから今まで、シーナの行動範囲はとても狭かったのだ。だから、友達と言えるような年の近い遊び相手などいなかった。

 さらに、必然的に行動範囲の狭いシーナの知っている人=シエテの知っている人という図式が出来上がっていた。

 なので、ここで架空の人物など出そうものなら、その架空の人物にシエテは食いつくに決まっていたのだ。


 これ以上、架空の友達のことでシエテの尋問を受けたくないシーナは、シエテや両親、周囲の大人たちに大切にされてはいたが、年の近い友達のいない事実に少し悲しくなり、涙目になりながら自白した。

 

「にーに……。トモダチ……じゃない。私のこと……。にーにに聞きたいことがあって……」


 少し涙目になっているシーナを見たシエテは心のなかで、(シーたんは、涙目も可愛い)と思ったが、口に出すと怒らせると思い、他のことを口走った。

 

「大丈夫だよ?俺も友達と呼べる奴は数えるほどしかいないから安心して?」


「えっ?にーに……、お友達がいるの?」


 うっかり、友人がいると喋ってしまったシエテは、視線を泳がせた。

 

「う~、あ~。知り合い?そう、ちょっとした顔見知りだよ?」


「そっか、にーににはお友達がいたんだ……。お友達がいないのは私だけ……」


 落ち込みだしたシーナを励ますべく、シエテは必死になった。


「シーたん、シーたん!!ほら、俺って街に降りて買い出しに行ってるだろ?その時だよ?だから、遊んだりとかじゃなくて、ちょっとした話をする程度だよ!!」


「……たい」


「えっ?」


「会ってみたい!!にーにのお友達って人に!!私もお友達が欲しい!!だから、今度買い物にに行くときは一緒に行く!!」


 当初のお金をどうやって稼ぐかという問題から、友人が全くいない事実に改めて気がついたシーナは、いつの間にか友だちを作っていたシエテが羨ましくなって、シエテの友達に会ってみたいと思った。

 そして、自分も友達と呼べる存在が欲しいと。

 

 シーナの必死な様子に、駄目だとは言えないシエテは深く悩んだが、可愛い妹のお願いを断ることが出来ずにただ弱々しく頷いたのだった。

 

 翌日、両親から一日休みをもらったシエテとシーナは初めて二人揃って街に降りたのだった。

 シーナは、初めて降りる街を想像して、薄っすらと頬を染めながらシエテに嬉しそうに言った。

 

「にーに、今日はありがとう。街に行けるの楽しみ。それに、にーにのお友達と会えるのも!!ねぇ、その人はどんな人?」


 頬を薄っすらとピンク色に染めてはしゃぐシーナの姿があまりにも可愛くて、無意識に顔を蕩けさせていたシエテは、蕩けきった表情のまま言った。

 

「う~ん。普通にウザい?」


「えっ?ウザい人なの?でも、にーにのお友達なんでしょ?」


「あぁ~。それなりに親しくはしているけど……。シーたんに紹介する程でもない……。それよりも、シーたん、そいつに会っても優しくしなくていいからね?今から会うのは、アホでバカでアホだから」


「ええぇ?っていうか、今アホって2回言ったよね?」


「控えめに言って、あいつは、アホでバカでアホでアホだから、気にしないでいいからね?」


「待って、アホが増えてるよ!!」


 シエテの言い方から、これから会うという人物に不安を感じ始めたシーナだった。

 しかし、その不安は会った瞬間に吹き飛ぶこととなるのだった。

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