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第二章 幕間 1

 シエテは一つだけシーナに嘘を言っていた。

 シーナには、カーシュが死んだ後のことを知らないと言ったが、本当はある程度のことは調べていた。

 もちろん、領主がカインだということも知っていた。

 だが、カインは領地を回ったり、王都にいることがほとんどだったため、シーナとカインが出会うことなど想定していなかったための油断だったといえる。

 

 カインが久しぶりに屋敷に帰ってきたと聞いたシエテは、その時はいつものように直ぐに出かけると思っていた。

 しかし、おかしな事に数日間屋敷からどこかに出かけているが遅くても夕暮れ前には戻ってきたのだ。

 

 何かがおかしいと思ったが、既に手遅れだったことを知ったときシエテは頭が痛くなった。

 知らないうちに、シーナとカインが出会っていたのだ。

 ただ、カインのことをおっさんと呼び少し鬱陶しそうにしていたことを見て、少しだけ溜飲が下がったのを感じた。

 

(この感じだと、心配することはなさそうだな。というか、俺がそんなことにはさせないがな。今や30過ぎのおっさんだ。シーたんが相手にする訳がない。だがしかし、もしも、もしもだ。そう、万が一にでも領主様がシーたんのことそういう目で見ようものなら……。いや、止めておこう)

 

 そう、シエテもカーシュの記憶はあると言っても、まだ14歳の子供だということだ。

 

 

 シエテは、早い段階から前世のことを自覚し、可愛くて可愛くて仕方ないシーナのためになるならと、6歳頃から徐々に体を鍛え始めた。

 10歳頃から、前世ほどではないが、年齢以上の力を備えたところで本格的に調査を始めた。

 

 過去の関係を引きずるわけではないが、ある程度の情報はないと心配だった。

 大切な、とても大切で愛おしいシーナを悲しませるようなことになる訳にはいかないのだ。

 そのための情報収集は必要だと考えての行動だった。

 

 鍛錬と同時に、現在の状況は調べていたが誰でも知りえるくらいの情報だったので、更に詳しいことを調べるべく、前世で使っていた方法を使うことにした。

 それは情報屋に調べさせるということだったが、それ相応の金が必要となった。

 しかしそれは問題ではなかった。

 資金を手に入れるために、早い段階から鍛錬を始めたのだから。

 

 家族には内緒で、狩りをする傍ら森の奥にある封鎖区域で魔物の討伐をした。

 

 アメジシスト王国では、年々魔道具の開発が進み人々は快適な生活を送っていた。

 魔道具は、魔核と呼ばれる中枢部分にあるエネルギーを使って使用する便利な道具だった。

 以前は、魔核に力を送れる魔法使いが沢山いたため、あまり必要とはされていなかったが、今は力のある魔法使いが少なくなってきたことで魔物の心臓が魔核の材料として高値で取引されるようになっていたのだ。

 

 シエテは魔物の心臓や他にも売れる部位を、街の素材屋に卸していた。

 ある程度の資金が貯まったシエテは、前世で何度か使ったことのある情報屋に依頼をすることにした。

 その情報屋は、魔導通信の特定の周波を知っていれば誰でも利用することが出来た。

 ただし、その特定の周波を知ること自体が難関だとされてはいたが。

 

 まずは、あの事件がどの様に伝わっているのかを調べた。

 民衆には、妹が姉を妬み殺そうとしたが未遂に終わって幽閉されていると伝わっていたが、噂は直ぐに別の話題に移っていってそれほど大きく広がらなかったという。

 

 シエテはこの情報を知ったとき、イシュタルの異常さを思い出して身震いした。

 そして、イシュミールと入れ代わっていた事実に殺意が湧いた。

 それと同時に疑問も湧いた。

 いくらイシュミールとイシュタルが瓜二つの双子の姉妹だったとは言え、イシュミールを溺愛していたカインやタウンハウスの使用人たちが気が付かないはずはないと。

 姿は似ていても、騙し通せるものだはなかった。

 そこで、イシュタルが騎士たちに言うことを聞かせていたことと合わせて仮説を立てた。

 

 「まさか……、魅了眼……。ふっ、ありえない……。ありえ……な、い、のか?イシュミール様は希少な瞳を持っていた。それなら、イシュタルも希少な目を持っていてもおかしくは……ない、のかもしれない……」

 

 魅了眼とは、その名の通り人々を魅了し意のままにすることができる希少な瞳のことだった。

 ただし、魅了眼を持っていたとしてもカインとタウンハウスの使用人たちを操ることは出来ないと断言できた。

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