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【IF】クリストフルート 6-a

 ▶a強引に荷物を奪う

 ▷b無理強いは良くないのでここは引こう

 

 その時の俺は、美少女と少しでも一緒に居たいという思いから、少し……、いや、かなり強引になっていたところがあったと思う。

 遠慮している美少女を逃さないようにと、強引に荷物を奪うようにしたのだ。

 

 美少女は、俺が強引な行動に出るとは思っていなかったようで、荷物を奪われる瞬間にとっさに反応していたのだ。

 そして、俺と美少女の間で荷物の奪い合いのような展開に発展していた。

 

「遠慮しなくていいから」


「いえいえ、本当に結構ですから」


 そんなやり取りをしていると、周囲の人間たちは俺たちを避けるようにしながらも成り行きを見守っていた。

 

 そんな俺と美少女との攻防は、一人の男の介入で終止符が打たれたのだった。

 

「おい……。クリフ……、お前」


 その声は、地を這うようなオドロオドロシイ声に俺には聞こえた。

 俺は、その声のした方を恐る恐る振り返った。

 そこに居たのは、鬼の形相をしたシエテだった。

 

 シエテは、呆気にとられている俺に構わずに、渾身の回し蹴りを俺に食らわせたのだ。

 俺はと言うと、もろに食らった回し蹴りによって、後方に吹き飛んでいた。

 地面を転がった俺を、ゴミでも見るような目で見たシエテは言い放った。

 

「お前のこと親友だと一瞬でも思ったのは気の迷いだったようだ。お前が、か弱い女の子から荷物を強引に奪う様な男だったとはな」


「ちっ!違う!!」


「何が違う?現に、お前はさっきまで、シーたんの荷物を強引に奪おうとしていたじゃないか?何が違うというんだ?」


 シエテの言葉に、俺は二重の意味で驚愕した。

 確かに、傍から見れば俺は女の子から強引に荷物を奪おうとした悪党に見えることだろう。

 というか、今シエテはシーたんと言ったか?まさかと思い、恐る恐る美少女の方に視線を向けながらシエテに言った。

 

「シエテ……、まさか、あの子がお前の妹なのか?」


 俺の言葉に、シエテは光の消え失せた目で俺を見た後に言った。

 

「ああ、そうだが?だが、強盗がそれを知ってどうするんだ?」


「強盗?えっ、違うから!!俺は、荷物を抱える女の子助けようと思って、荷物持ちをしようと」


「は?俺には、嫌がるシーたんの荷物を強引に奪おうとしていたように見えたが?」


「そっ、それは……」


 シエテの言葉に、俺は反論できずにいた。

 だって、遠慮する妹ちゃんの荷物を強引に奪おうとしたのは事実なんだから。

 黙った俺に、シエテは冷たく言い放った。

 

「認めるんだな。それじゃ、強盗未遂ってことでお前を詰め所に連れて行くから」


「!!」


 まさかの展開に俺は言葉が出なかった。

 

 そんな俺に、妹ちゃんは言ってくれたのだ。

 

「待って!にーに!!その人は強盗なんかじゃないから!私がオレンジを落として、それを見かねて荷物を家まで持ってくれるって言ってくれたんだよ。でも、大丈夫だって私が断っただけなの」


 妹ちゃんが、俺は無罪なのだと言って庇ってくれたことに俺は胸が熱くなった。

 まさか、この展開で庇ってくれるだなんて、俺は思っていなかったから。

 しかし、妹ラブなシエテにはそんな思いは届かなかった。

 

「そっか、シーたんは優しいね。でも、罪は罪だよ」


 そう言って、イライラした様子のシエテは有無を言わさずに俺を騎士団の詰め所に突き出したのだ。

 

 俺はと言うと、詰め所で騎士の人に事情を説明した。妹ちゃんも一緒になって俺の無罪を訴えてくれたのだ。

 俺は、罪には問われなかったが、周囲に迷惑をかけたということを反省するようにと詰め所にある謹慎部屋で一日過ごすことになった。

 

 一日明けて、俺が詰め所を出て家に帰ると、呆れた様子の姉ちゃんが出迎えてくれた。

 そして、一通の手紙を渡された。

 それを見た俺は、無言で手の中の手紙をクシャクシャに握りつぶしていた。

 その手紙にはこうあったのだ。

 

【クリフへ


昨日はすまなかった。少しいらつくことがって、お前に当たっていた。お前に合わせる顔がないといいたいところだが、仕事の都合でディアロ領から出ることになった。本当にすまなかった。お前に会うことは恐らくもう無いだろう。今までありがとう】


 そう書いてあった。

 それから、すぐにシエテの家に向かったが、シエテの両親からすでにシエテと妹ちゃんの二人はディアロ領から出た後だと聞かされた。

 更に、居場所を聞いたがシエテの両親は聞かされていなかったようで、のほほんとした口調で言ったのだ。

 

「う~ん。シエテからはシーナと二人で旅に出るとだけしか……。シエテからは、定期的に手紙を書くと聞いたから、そのうち分かると思うから、その時教えるよ」


 という、返答にクリストフは肩を落としてシエテの家を後にした。

 

 以後、本当にシエテと会うことはなくクリストフは突然の別れにもやもやとした思いを抱えて暮らしたのだった。

 そして、ふとした瞬間に思ったのだ。

 もしあの時、店から出なければ……、もしあの時、強引に荷物を奪おうとしなければ、何かが変わっていたのかも知れないと。




【IF】クリストフルート 別れEND 完

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